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ニデック、監査法人が最低評価の意見不表明 優良銘柄の座から転がり落ちる

 9月29日、ニデックの株価は市場が開けた直後に前週末に比べ4・8%安い2510円まで下げました。まもなく2600円台まで回復しましたが、上昇する気配は感じません。9月に入って株価は20%も下落しており、かつて東証で最も注目されてきた人気銘柄の輝きは完全に失われています。

株価は大幅安

 先週末の9月26日に明らかになった監査法人のPwC ジャパンの「意見不表明」が重しになっています。ニデックは同日、子会社の会計処理問題で遅れていた2025年3月期の有価証券報告書を提出しましたが、監査法人のPwC ジャパンは十分な資料に基づく監査ができなかったことを理由に監査意見を表明しませんでした。極めて異例な事態です。

 監査法人が表明する意見は、「無限定適正」「限定付き適正」「不適正」「意見不表明」の4段階ありますが、ほとんどの会社は「無限定適正」を得られます。最低評価の意見不表明は2024年度でわずか3社だけ。東証で高い人気を集め、日経平均の動向を左右するとまでいわれたニデックが最低の監査意見となる影響は計り知れません。

 なにしろ、監査法人のお墨付きが亡くなるのですから、監査対象の企業財務の信用力はガタ落ちです。融資する金融機関は新たな案件はもちろん、過去の債権の取り扱いに慎重になりますし、最悪の場合は上場廃止に追い込まれます。日本を代表する高収益企業であり、優良銘柄として評価されてきたニデックが上場廃止となってしまったら、日本の株式市場の信用にも悪影響が出ます。

企業財務の信用力はガタ落ち

「意見不表明」に至るまでの経緯を振り返ると、ニデックが抱える病巣の根深さがわかります。始まりは2025年6月。イタリアの子会社で貿易取引上の問題が明らかになり、有価証券報告書の提出を延期しました。グループ企業で会計処理で問題がないかを調査したところ、子会社のニデックテクノモーターの中国子会社でも不適切会計の事案も発見されました。取引先からの値引きに相当する購買一時金(約2億円)を適切に処理しなかった可能性がありました。

 事態はさらに悪化。ニデックが9月26日に発表した資料によると、中国子会社が申告価格を低く設定して関税申告をごまかすなど輸出取引で不正行為が行われていた疑いが複数浮上しています。これまでにニデック本体、グループ会社の経営陣が関与した、あるいは認識したうえでリスク資産の評価減の時期を恣意的に検討していると解釈できる資料も複数見つかっており、ニデックの経営を根幹から揺るがす恐れが考えられます。 

 ニデックはすでに外部の弁護士らで構成する第三者委員会を設置し、事実関係を詳しく調査しています。この結果を待たなければ不適切会計の全容は判明しませんが、これだけニデックグループ全体に病巣が広がっている事実を考えればニデックの将来はとても楽観できません。

最近は経営戦略が不発

 M&Aを繰り返しながら、成長神話を築き上げてきたニデック創業者の永守重信氏。職業訓練大学校電気科を首席で卒業した後、電機メーカーを経て1973年に社員4人でプレハブ小屋で日本電産を創業しました。「世界一になる!」を合言葉に猛烈をそのまま体現した企業戦略を実践。小型モーターで世界トップシェアの企業に育て上げました。その経営手腕は誰もが高く評価しています。

 しかし、ここ数年はやることなすことが裏目に。自らの後継者選び、得意のM&Aによる牧野フライス製作所の失敗、小型モーターに続く電気自動車(EV)の基幹部品進出・・・。創業者の永守氏が最優先する最高益と株価上昇の達成は手が届かない経営目標になっていました。名経営者が永久にその栄誉を守り続けるのは、やはり無理なのでしょうか。

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