
M&Aで急成長したニデックが特別注意銘柄に 自らが標的になる可能性も
ついにというか、残念というか。寂しい空気が揺れている思いです。
東芝などと同じ道を歩むかも
日本取引所グループは10月28日、ニデックを内部管理体制の改善を求める特別注意銘柄に指定すると発表しました。ニデックは不適切会計の疑いを第三者委員会で調査している最中です。9月に提出した2025年3月期の有価証券報告書は、監査法人のPwCジャパンが適正性について「意見不表明」。10月23日には26年3月期の連結業績予想(国際会計基準)を未定にすると発表。企業会計の基準から見れば、もう失格寸前。
特別注意銘柄に指定後、原則として1年後の審査までに内部管理体制などの改善見込みがないと判断される場合は、監理銘柄への指定などを経て上場廃止となる可能性もあります。ニデックの株式は機関投資家が3割程度保有しており、会計問題が発覚した後はすでにかなり売却されているそうです。優良銘柄だったニデックは個人投資家の人気も高く、その反動で10月28日は2割近く暴落しています。
M&Aで2兆円企業に
次の焦点はニデックがどう再建するのか。特別注意銘柄に指定されたからといって、上場廃止になるわけではありませんが、過去に指定された東芝やオリンパスのその後を思い出せば、ニデックも同じ道を歩む可能性があります。第三者委員会が進める調査の全容が明らかになっていませんし、今後の行方について予断を許す状況ではありません。それでも大胆な経営改革は避けられません。ひょっとしたら、永守氏も含めた経営陣の総取っ替えもあるかもしれません。
読み筋はいくつもあります。そのひとつがM&Aの標的。永守重信氏が1973年に創業した日本電産は小さなプレハブ小屋で小型モーターを開発・生産。今では情報機器、自動車など幅広い産業で利用されています。そして世界トップクラスの2兆円を超える機械メーカーにのし上がった原動力はM&Aです。創業以来、74社を買収した永守氏は百戦錬磨を経験した勝負師そのもの。傘下に収めたグループ企業は徹底的に経営合理化されており、人間に例えれば贅肉は全くなく、筋肉隆々の企業に仕上がっています。
これだけの上玉を見逃すわけがない
窮地に追い込まれたとはいえ、国内外の企業、投資ファンドが滅多に出回らない上玉のニデックと傘下に収めるグループ企業を見逃すわけがありません。たとえ株式上場が廃止されたとしても、第三者委員会で明らかになる問題を解決すれば、再上場できるでしょう。見返りは十分、お釣りが来ます。
輝かしいM&Aの歴史を重ねてのし上がったニデックが立場を変えて標的になる。残念ながら、このシナリオは十分に考えられます。

