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日産、セブン&アイが社長交代(下)「社長」が多すぎて、再建ナビは迷路に向かう

 日産自動車は社長交代によって経営の方向が定まるのでしょうか。3月11日に開催する取締役会で内田誠社長の退任と後継社長の選任などを議論し、今後の経営体制が固まります。内田社長が責任を取るのは当然ですが、社長の名前が変わったらといって経営は好転するのでしょうか。再びホンダと経営統合を協議するのか。ルノー、三菱自動車との資本提携をどう活かすのか。舞台裏にはみずほ銀行、経済産業省なども控えます。日産の経営再生を主導する「社長」が多く、迷路を彷徨うことになりそうです。

後継社長の候補は3人

 読売新聞によると、日産の指名委員会が6日に開催され、内田社長退任を議論し、後任の社長候補をまとめたそうです。指名委員会の役割は、社長候補の選定。2025年3月期で800億円の赤字を計上するまで経営悪化させたうえ、ホンダとの経営統合協議の破棄など窮地を打開する手が打てないのですから、内田社長の退任が当然視されています。候補者は3人。ジェレミー・パパン最高財務責任者(CFO)、欧州事業などを指揮するギョーム・カルティエ氏、商品企画の最高責任者イバン・エスピノーサ氏です。

 誰もが首を傾げるでしょう。候補者3人はいずれも経営陣の1人。業績悪化の責任はないのか。CFOのパパン氏は昨年まで赤字垂れ流しの主因である北米事業のトップでした。欧州事業、商品企画も日産の業績に直結する部門です。日産が北米で販売奨励金をばら撒いて無謀な販売拡大に努めざるを得なかったのも、ハイブリッド車の不足など商品戦略が後手に回ったからです。

 経営責任の軽重を問えば、内田社長よりマシと認定する気持ちはわかりますが、日産が直面する病状はそんなに軽くありません。読売新聞の記者は「一部の取締役は外部も含めた候補者選定を求めているとされ、調整は難航も予想される。議論がまとまらない場合は、内田氏が続投する可能性も残る」と記事に書いていますが、もし続投となったら日産の経営は根底からヨロヨロになるでしょう。

実権はホンダ、みずほ、三菱UFJ・・・

 もっとも、日産を待ち受ける経営課題を考えたら、誰が社長になっても同じかもしれません。今後のシナリオを考えてみました。主力銀行のみずほ銀行が後押しするホンダとの経営協議を再開して、仮に拒否した子会社化を受け入れたとします。日産の実質的な社長は実は、ホンダの三部敏宏社長。日産の社内は面従腹背になるかも。

 これで収まればラッキー。ホンダが日産とセットで取り込みたい三菱自動車が参画したら、勝利の方程式はさらに複雑に。ホンダと日産の協議から一度距離を置いた三菱自動車の後ろ盾てである三菱UFJ銀行、三菱商事が控えています。口出ししないわけがない

 みずほ銀と三菱UFJが二人三脚で支援する構図もちょっと想像できません。ただでさえメガバンクは経営再建のノウハウと経験が不足していますから、日産の混迷は複雑怪奇に陥るでしょう。

 日産とホンダの経営統合にゴーサインを出した経済産業省も忘れるわけにはいきません。日産が経営破綻すれば、日本経済に大打撃を与えます。石破政権が大声を上げるでしょう。

 まだあります。資本提携を打診した鴻海精密工業が加わったら、日産元副社長の関潤氏がより深く関わるのは確実です。誰よりも日産を知っており、社内に信奉者を抱える人物です。ホンダの三部社長らと経営再建のあり方で衝突する公算は十分にあります。

 もちろん、最大の提携相手であるルノーが黙っているわけがありません。1999年に資本提携して以来、26年間に及ぶ関係が切れるぐらいなら、自社の利益拡大に向かってガチンコで立ち向かってきます。

 ホンダと日産の経営統合は自動車メーカーが突入せざるを得ない電気自動車(EV)の世界市場に生き残ることです。日産を次代のEVに例えれば、これから走路をナビする運転手が決まっておらず、決まったとしても車内に座る乗客はみんな自分が運転すると騒ぎ立てるはずです。

 日産ブランドのEVは山を登るのか、海を渡るのか、空を飛ぶのか。日産が会社として飛んでしまうのだけは避けて欲しいです。

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