• ZERO management
  • カーボンニュートラルをZEROから考えます。

「経営改革は外国人社長」日産とセブン&アイの劣化に目を覆う

 日産自動車とセブン&アイの後継社長として外国籍の経営者が選ばれるようです。偶然かなのか、あるいは必然なのか。両社とも経営が悪化しているにもかかわらず、社長は自力再建の道筋を示すことができません。当然、株価は低下。時価総額が下げれば、海外企業による提携・買収の危機に晒されます。そんな瀬戸際で呆然、為す術を失っているかのようです。

 このまま足踏みしているわけにはいきませんから、社長交代は当然ですが、なぜそろって外国籍なのか。後継者は日本人が望ましいという考えは毛頭ありません。トランプ米大統領と違い、多様性は大歓迎です。日産やセブン&アイはなぜ次代を担う人材を育てられないのか。この事実に日本の経営がここまで劣化したのかと目を覆いたくなる思いが噴き上がります。

西友、スシローで経験

 セブン&アイ・ホールディングス。読売新聞によると、井阪隆一社長は退任して、後継社長は社外取締役のスティーブン・ヘイズ・デイカス氏が就任する方向で調整しています。現在は取締役会議長を務めており、セブン&アイは近く取締役会を開いて初めての外国人社長の就任を決めるそうです。

 デイカス氏のキャリアは申し分ありません。2011年、米ウォールマートの傘下に入っていた西友CEO(最高経営責任者)に就任しています。ウォルマート流の「毎日安売り」を徹底する一方、ネット販売も始め、6期連続の増収増益を果たしました。経営の屋台骨が崩れそうだった西友をよく持ち堪えさせたと思います。2016年からは回転寿司のスシローチェーン「スシロー」の持ち株会社スシローグローバルホールディングス会長を経験。2022年5月にセブン&アイ社外取締役、2024年から取締役会議長を務めています。

 もっとも、セブン&アイは西友や寿司チェーンと違い、日本最大級の小売業グループです。西友も厳しい経営状況でしたが、セブンイレブンなど全国に張り巡らしたチェーン網の運営は、桁違いです。2年間、セブン&アイ社外取締役を務めているとはいえ、執行責任を負っていたわけではなく経営トップの座に相応しい経営手腕を持っているかは未知数です。カナダのコンビニ大手、アリマンタシォン・クシュタールによる買収提案に対抗するために外国人トップを据えて目先を変えたとしてもセブン&アイの時価総額が上昇するとは思えません。

 むしろ、セブン&アイの生え抜き中堅幹部から起用できる人材が居ない事実こそ企業価値を低下させてしまいそうです。セブンイレブン創業者の鈴木敏文氏の下で経営を覚えた井阪隆一社長と同様、中堅幹部で候補者が見当たらなかったのでしょうか。

 日産自動車の後継社長候補者にも違和感を覚えます。内田誠社長兼CEO(最高経営責任者)に代わって、現在のCFO(最高財務責任者)ジェレミー・パパン氏が名前が上がっているそうです。2025年1月1日付でCFOに就任したばかりで、前職は北米日産社長。日産は2024年9月中間期で事実上、利益ゼロの窮地に立ちましたが、赤字を招いた主因は北米事業での無理な拡販。販売奨励金による販売台数の上乗せです。現場で指揮した当の本人です。

 2025年1月の役員人事は内田社長が経営リストラを断行するために役員の布陣を一新したわけですが、社内から見れば本来なら大赤字の責任を取る立場の役員が北米担当からCFOへ転じる人事には多くの人が首を傾げたはず。そのパパン氏が今度は社長兼CEOになるかもしれません。しかも、暫定的な措置という憶測も流れています。2025年3月期に800億円の赤字を計上する見通しですが、中途半端な社長交代では今の日産を救えないでしょう。それとも主力銀行や経産省の操り人形になるのでしょうか。

カリスマ経営者の後継は難しい

 不思議です。なぜ日産、セブン&アイは後継者に相応しい人材が見当たらないのか。そうえいばカリスマ経営者が去った後、見渡したら人材が見当たらないという企業をよく見かけます。日産にはカルロス・ゴーン、セブン&アイには伊藤雅俊、鈴木敏文という産業史に名を残すカリスマ経営者が存在しました。カリスマならではの人智を超えた経営センスが次代を先取りする経営を実現し、成功を収めてきました。しかし、カリスマが去った後、人材不足という後遺症だけが目についてしまいます。裏返せば、カリスマ経営者の指示に従う人材だけが経営幹部として生き残ってきたのか。企業に深く根付いた病巣に効く処方箋があったとしても、日産とセブン&アイにはもう間に合わないのかもしれません。

関連記事一覧