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ラピダス、24社が新たに出資 最先端の半導体が「奉加帳」で成功するとは思えない

 世界最先端の半導体を国産化する日の丸プロジェクト「ラピダス」にメーカーや金融機関など24社が新たに出資、既存の8社を加え合計32社が参画することになりました。政府も初めて1000億円を出資して筆頭株主に。日の丸半導体を再び世界トップに押し上げる覚悟を対外的に表明した格好ですが、内実は政府主導で民間の資金を募る奉加帳のよう。生成AIなど人工知能を巡る過熱投資を見慣れてしまったせいか、むしろラピダス成功への自信の無さを感じてしまいました。

官民一体の日の丸プロジェクト

 2022年8月のラピダス設立の際、トヨタ自動車、NTT、ソフトバンク、NEC、デンソー、キオクシア、三菱UFJ銀行の8社が合計73億円を出資しています。新たに出資する24社に既存の8社も追加出資し、政府の1000億円と合わせて総額2676億円を集めました。政府は議決権11・5%を握る筆頭株主で、ラピダスの重要事項について拒否権を発動できる黄金株も保有。経済安全保障のシンボルである最先端半導体の日の丸プロジェクトとしての座組みを整えました。

 もっとも、対外的な派手なアピールとは裏腹に出資企業のメンバーをみると、ちょっと物足りなさを感じます。

 出資企業24社を50音順でみると、アルゴグラフィックス、ウシオ電機、キヤノン、京セラ、JX金属、セイコーエプソン、大日本印刷(DNP)、千葉銀行、長瀬産業、日本政策投資銀行、日本通運、日本IBM、能美防災、肥後銀行、富士通、富士フイルム、古河電気工業、北洋銀行、北陸銀行・北海道銀行(ほくほくフィナンシャルグループ)、北海道電力、ホンダ、みずほ銀行、三井住友銀行。

出資の思惑はさまざま

 出資額も各社各様。富士フイルムが50億円を出資したと発表していますが、各社の詳細は不明で数億円から数百億円と幅があるそうです。出資額のばらつきからわかる通り、思惑はばらばら。最先端の半導体技術の開発、生産に深く参画したいと考える企業もあれば、ラピダスの地元である北海道との縁を考慮して拠出した金融機関、エネルギー企業もあります。半導体工場の操業後、メンテナンスなどの業務請負も期待している企業もあります。

 ラピダスは2027年後半までに世界でも最も微細な線幅2ナノメートルの半導体を受託生産することをめざしています。すでに北海道で建設してきた千歳工場で試作に成功。今後、研究開発と量産に向けて4兆円を投資する計画で、さらに1・4ナノレベルの未踏域に挑むためには3兆円以上の資金が必要です。資金はいくらあっても足りません。

 仕方がありません。日本の半導体産業は1980年代に世界トップレベルでしたが、今や欧米、韓国、中国の後塵を拝する立場。事実上、ゼロから技術開発と生産を積み重ねていかざるをを得ず、政府と民間企業が連携して資金と技術を再結集して、世界の壁を突破するしかないのです。

AI投資の過熱ぶりと大きな差異

 ただ、あまりにも米国で過熱する投資競争と歴然とした差異を感じます。米国のエヌビディアはじめ人工知能や生成AIに携わる半導体メーカー、IT企業はブラックホールのように世界から巨額資金を飲み込んでいます。投資する企業・金融機関も莫大なリターンを期待し、湯水のように注ぎ込んでいます。世界をリードする企業の目利きを自任するソフトバンクの孫正義氏がすべての資金をAIにつぎ込むと宣言していることから、わかります。

 残念ながら、ラピダスからは米国で繰り広げられる投資競争の過熱ぶりが伺えません。日本政府が躍起となっているだけに、お付き合いと割り切って出資する企業の冷ややかさも浮き彫りになります。

 確実にいえるのは、世界最先端の技術は奉加帳に頼らなくても資金が勝ってに集まります。ラピダスは今後、自らの実力と成長力を示さない限り、政府の後ろ盾があっても世界の壁は突破できないのではないか。なんとか成功してほしいと願っていますが、一度失った最先端技術のトップの座を取り戻すことはエヌビディア、オープンAIなどが見せつけた革新力が必要です。

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