
スズキ、ホンダを抜き乗用車2位を指定席 中古ジムニーが体現する最強DNA
スズキが快進撃を続けています。2025年度の軽を含む国内乗用車販売でスズキがホンダを抜き去り、初めて2位に躍進しました。最近のホンダは寂しいニュースばかりが続いており、乗用車販売でも2012年度以来維持してきた第2位の座を奪われました。スズキは中小型車の登録車と軽を合計した新車販売ではすではホンダを抜き2位を指定席に固めています。25年度の新車販売をみてもスズキはプラス、ホンダはマイナスを記録。両社の勢いを考えれば、スズキが浮上、ホンダが沈下する構図が続くのでしょうか。
強さは柔軟な発想力
スズキがホンダを抜き去った原動力はどこにあるのでしょうか。一言で表せば「市場変化に合わせて新車開発する柔軟な発想力」。新車販売を内訳を見ると、スズキとホンダの格差は歴然、すぐにわかります。
2025年度の新車販売はスズキが72万5008台、ホンダが60万9246台。11万台の差がひらいています。
スズキの内訳をみると、軽が55万6632台と全体の76・7%も占めますが、前年比の伸び率は4・8%減とマイナス。これに対し登録車は16万8376台で、前年比26・6%増と大幅に伸びています。ダイハツ工業とともに軽市場の2強時代が続きましたが、今は軸足を中小型車に移しているのです、軽に比べ販売台数が少なくても収益率は高いですから、中小型車の伸びは売上高と利益の押し上げに貢献する好循環を生んでいます。
一方、ホンダは軽も登録車も意気消沈。主力の登録車は12・0%減の33万3137台と2桁のマイナス。軽も、長年にわたって販売台数トップを堅持する「N-BOX」を擁しながら、4・8%減の27万6109台とこちらもマイナス。スズキを上回る世界の人気ブランドでありながら、ヒットを生み出せない迷路にはまり込んだままのホンダの惨状が浮かび上がります。
軽、小型車は個性派がそろう
スズキの強さは個性的な車種を揃え、幅広い層をしっかりと捉えているからです。軽は「スペーシア」「ハスラー」など人気車種を充実。小型車でも「スイフト」「クロスビー」「イニオス」「ジムニー」など小回りなど走行性能優れ、使い勝手の良い車種が揃っています。デザインや走行性能はライバル車としっかり差別化され、安売り競争に走らなくても安定して販売できる力を兼ね備えているのです。
スズキの最強DNAを体現しているのが「ジムニー」。軽「ジムニー」と1500CC「ジムニーシエラ」はいずれも3ドアで、角張った質実剛健のデザインに荒地も苦にしない優れた走行性能が高く評価され、注文しても納期が遅いクルマとして知られています。
25年4月から「ジムニーノマド」5ドアが加わりました。根強いファンからは多人数の家族でも使い勝手の良い5ドア車を求める声が高かったのですが、インド子会社で5ドア車を生産、顧客の要望に応えました。それだけに「ジムニーノマド」の人気は凄まじく、25年1月30日から先行予約を始めましたが、わずか4日で5万台を受注。予約を停止したほどです。
中古ジムニーは新車より高い
「ジムニーノマド」は日本の輸入車市場にも衝撃を与えます。発売間もない25年4月、インドで生産した「ジムニーノマド」「フロンクス」2車種は、ベンツを追い抜き初めて輸入車販売で1位に輝いたのです。2位以下はメルセデス・ベンツ、BMW、VW、アウディなど高級車が並びますから、インド製スズキ車が割り込んで一気に1位の座を占めるニュースは大きな話題を集めました。
スズキの最強DNAを纏う「ジムニー」の強さを偶然、通りかがった中古車販売店で目撃しました。店頭の駐車場にはスズキ「ジムニーシエラ」とトヨタ自動車、日産自動車の人気スポーツカーが並んでいたのですが、その価格差に目を奪われました。ジムニーシエラの中古価格は220万円、トヨタと日産のスポーツカーはともに128万円。製造年や仕様などで違いがあり、単純比較できませんが、新車価格と見比べてみれば中古価格の設定に驚くはずです。
ジムニーシエラの新車価格は200万円前後ですが、中古車相場は250〜270万円と入手困難を理由にしたプレミアが上乗せされています。店頭に並ぶ日産「フェアレディZ」は500万円以上。ところが中古車の値札は128万円とほぼ4分の1。低迷する日産のイメージ挽回を狙って復活した「フェアレディZ」ですが、あまりにも安い中古車価格が現在の日産の低迷を反映しているようで悲しい。
「ジムニー」にとどまらずスズキの新車開発で共通しているのは、軽で鍛え上げられた独自のデザインと開発コンセプト。小型車には敵わない車内空間や走行性能をカバーするため、「顧客が求めるクルマとは何か」を自問し続け、新車開発する試行錯誤を繰り返します。失敗に懲りず、そこから得た教訓をもとに新たなコンセプトを加えて再創造する。事実上の創業者である鈴木修さんの「絶対にへこたれない魂」がDNAとして継承されているのです。
顧客が求めるクルマを開発
軽は「国民の足」として新車市場の40%を占めるほど定着しています。裏返せば「誰でも買える価格」「使い勝手の良さ」双方を体現しなければ売れません。スズキは顧客から求められるクルマの開発に失敗すれば、高級車から小型車まで幅広い車種を揃えるトヨタ、日産、ホンダに敗北するしかありませんでした。企業体力が乏しいスズキにとって軽と高級車の二兎を追うことなどとても無理。軽と小型車に専念するしか道は残っていなかったのです。
顧客本位の新車開発が花開く今、ヒット車を生み出せないホンダはスズキにとって反面教師。逆にホンダがスズキから学ぶことは多いはず。

