
スズキがトヨタを抜く日 インド製「フロンクス」「ノマド」が予言するクルマの大逆転
スズキがトヨタ自動車を抜き去る日が訪れるかもしれません。予兆はあります。日本に次ぐ生産拠点を持つインドで生まれたSUV「フロンクス」「ジムニーノマド」の快走です。輸入車販売を2025年10月までの10ヶ月間でみると、インド製スズキ車はメルセデスベンツに次ぐ第2位に大躍進。価格、品質に厳しい日本の消費者の期待を上回る評価を集めている証左です。スズキが高い市場シェアを握るインドなど新興国の経済成長、EVの主力車種となる中小型SUVの普及加速を考慮すれば、世界市場でインド製スズキ車はもっと拡大します。成熟期を迎えたトヨタ、VWの背中はもうはっきり見えてきたはずです。
トヨタ、VWは成熟期に
スズキの近未来を日本の輸入車販売で予測するのは無理筋?と考えますか。2025年1ー10月期のランキングを見てください。第1位はメルセデスベンツ、第2位はスズキ、第3位はホンダ、以下はBMW、VW、アウディと続きます。失礼ながらスズキを除けば、品質、ブランドいずれも世界最高峰の評価を得る自動車メーカーが名を連ねます。欧州車は自動車100年超の歴史で培ったブランドの賜物。ホンダはスズキ同様、インド製SUV「WR-V」、タイ製「アコード」、中国製「オデッセイ」が奮闘しています。
スズキが突出しているのはインド製SUVの爆発力。フロンクスは2024年10月、ジムニーノマドは2025年4月と発売からまだ日が浅く、輸入車としては評価が定まらない新人クラス。
ところが、スズキの輸入車販売は、1ー10月期で3万7490台。輸入車シェアは11・83%。10台に1台はスズキです。しかも、1年前の1ー10月期は2688台ですから、増加率は14倍。ベンツが前年同期比3・8%減、ホンダが10・9%減ですから、伸び率は際立っています。10月だけをみると、スズキは6267台とメルセデスベンツの3338台を倍近く引き離し、勢いの差ははっきり出ています。
スズキの勢いの源はインド
日本市場での突出した勢いは、スズキの潜在力の高まりを反映しています。スズキはインド市場で40%を超えるシェアを握っており、世界販売も日本の36%に次ぐ33%を占めています。インドは2025年中にも日本を抜き、世界第4位の経済力となる見通しです。人口は14億人を超える世界1位。インドの成長がそのままスズキを押し上げ、インドの成功体験がそのまま新興国市場の販売拡大で発揮されます。
それだけではありません。EVの本格普及が始まれば、スズキが得意とする中小型SUVが走り回る舞台が広がります。EVの世界販売は足踏み状態ですが、バッテリーや駆動系の技術進化は加速しており、再び右肩上がりに転じます。
ただ、市場の様相はかなり変わります。エンジン車がそのままEVに代替するわけではありません。エンジン車にはないバッテリーの航続距離、充電インフラなどの制約があるうえ、車重が大きく価格も高くなるため、多用途に使える中小型SUVが主体になるはずです。米テスラ、中国BYDなど世界のEV開発をみても、そのベクトルは明快です。
中小型SUVで価格競争力をどう維持するのか。どう考えても、その市場で快走するスズキのインド製「フロンクス」「ジムニーノマド」が真っ先に思い浮かび、その経験がEVに続く道筋を切り開くはずです。
スズキはすでに中小型SUVのEV「eビターラ」を欧州やインドで公開しており、日本は2026年1月から発売します。もちろん、インド製です。「eビターラ」はEV市場に向けた試金石となってスズキの存在感を築くと期待しています。
「eビターラ」がEV市場の先陣を切る
もちろん、トヨタもEV開発に注力しています。しかし、世界一の自動車メーカーとなった弊害ともいえますが、車種構成が広すぎてEV市場に適したモデルの整理整頓に苦労するはずです。高収益の源であるハイブリッド車を簡単に手放すこともできません。大成功を収めた事業に見切りをつけるのは、トヨタじゃなくても難問なんです。
まもなくスズキがトヨタに次ぐ第2位に浮上する日は迫っています。2025年後半、半導体不足で自動車生産が滞っており、ホンダが大きく落ち込み、日本車メーカーの販売ランキングでホンダは2位から4位に転落する見通しです。代わってスズキが2位に浮上します。ここでトヨタに続く順位を固め、EV時代の到来に合わせてスズキが世界販売を伸ばせば、もうトヨタと肩を並べる寸前。そう無茶な予言ではないと考えています。

