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不正の根っこは自動車も薬も同じ「正露丸」のキョクトウが虚偽記録

 胃腸薬「正露丸」を販売する製薬会社のキョクトウ(富山市)が4月末、富山県から業務停止命令を受けました。製造した医薬品「正露丸」の試験結果が承認規格を満たしていないのに、適合したとする虚偽の試験記録を作成して出荷していました。それから2ヶ月足らずの6月、今度は自動車5社が量産に必要な型式指定制度で不正な試験結果を提出していたことが発覚しました。

不正行為は業界が違っても中身は同じ

 業界が違っても、偶然なのか国の制度に対する不正行為の中身は同じ。これまでも試験結果のごまかしはあちこちでもあったのでしょう。なんとかに効く薬はないと言いますが、あの正露丸でも止められないのです。これからも続くのでしょう。

 正露丸は、元々は日露戦争の兵士のために「征露丸」として創薬され、その後に大幸薬品が1951年に「正露丸」として商標登録しました。しかし、製品名はすでに一般に流布したとして最高裁で商標権無効が確定した結果、多くの製薬メーカーが同じ成分を使って「正露丸」の商品名で生産、販売しています。最近の表現で言えば、正露丸の後発薬、ジェネリックでしょうか。

 キョクトウはその1社です。企業規模は従業員がパートさんを含めても30人に満たない中小企業です。1950年に設立し、正露丸の他に配置薬も生産しています。売上高は5億円程度です。中小企業だからといって不正行為が見逃されるわけはありません。とりわけ、人間の生命に直結する医薬品を生産しているのですから。

逼迫する生産計画が引き金

 キョクトウは不正の原因として作業人員に比べて生産品目が過剰で、生産計画のひっ迫が常態化していたと説明します。虚偽の試験記録を作成した理由について検査責任者は既に退職しており、作成を指示した理由は分からないと話したそうです。「責任者が不在」は不正行為の際に必ずといってよいほど見る言葉ですが、不正行為の原因として「生産計画の逼迫が常態化していた」は直近の自動車の不正認証と根っこは同じです。

 後発薬、いわゆるジェネリックの杜撰な経営管理は以前から指摘されていました。日医工は2021年3月、製造や品質管理で問題を指摘され、富山県から1カ月間の業務停止命令を受けています。2020年4月以降、製品の自主回収が相次いていました。不正発覚のきっかけは富山県が2020年2月に行った富山第一工場の抜き打ち査察。本来の手順として認められていない不正な対応が2011年から10年近く続けられてきたそうです。不正の過程も自動車業界がコピーしているかのように似ています。ちなみにジェネリックの不正は、大阪市の沢井薬品、福井県の小林化成など数え始めたら、いくつも出てきます。

法遵守の意識が改めて問われる

 1980年代、医薬品メーカーや医薬品卸を取材していると、「ゾロゾロ」という言葉を耳にしました。新人記者の頃です。「ゾロゾロって何ですか」と質問したら、後発専門の医薬品メーカーのことと教えてくれました。巨額の開発投資で製品化した新薬の特許権が切れた後、ゾロゾロと同じ効能を持つ後発の医薬品が続くからです。

 だからこそ、富山県や医薬品メーカーから不正に対する批判の声が舞い上がっています。「試験記録の改ざんは絶対に許されない行為。不正の意識が低く、利益優先でそのような判断をしたのではないか」「きちんと対応しているメーカーへの信頼が不正に手を染めた第三者によって損なわれるのはあってはならない」。みなさん、全国に知られた「薬の富山」の名を汚す行為について法律を遵守する意識の薄さが明らかになったと悔しがっていました。

 富山の苦渋の声は、不正認証が相次ぐ自動車業界に届いていたのでしょうか。

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