• ZERO management
  • カーボンニュートラルをZEROから考えます。
  • HOME
  • 記事
  • ZERO management
  • 日産、7500億円の赤字に誰も驚かない 数字の辻褄合わせより自力再生する覚悟は問われる

日産、7500億円の赤字に誰も驚かない 数字の辻褄合わせより自力再生する覚悟は問われる

「あぁ、そうだろうなあ」。納得する自分に気づきた時でした。もう30年以上、日産自動車が決算で赤字を計上するたびに「またか」。ちょっと悲しい思いを感じていましたが、今回はもう驚かない自分がいました。

驚かない自分に驚く

 年中行事とまで酷評しませんが、「ガンガン儲けていた日産って、いつだっけ」と薄れる記憶をたどる自分にも嫌気を覚えます。

 思い返せば、1990年ごろから日産の財務悪化が加速、試算したら金額は3兆円程度に膨らんでいました。勤めていた新聞社編集局に取材チームを結成し、経営破綻に備えました。それから35年。皮肉ではなく、よく存続したと感心する思いもあります。

 日産が25年3月期で最大7500億円の赤字に陥る見通しです。最終赤字の規模は、日産がルノーと資本提携に追い込まれた1999年3月期の6843億円を上回る過去最大。

 ルノーとの資本提携に至る仔細を発端から目撃してきましたが、当時は日産もルノーも経営がボロボロ。日仏政府が自国経済への打撃を回避するため、急きょ妥協した救済劇です。言い換えれば、将来の経営再建に向けてというよりは、一時凌ぎの弱者連合。妥協の産物といって良いでしょう。

ゴーン時代のV字回復は数字の辻褄合わせ

 ところが、日産はバカ真面目というか、素直というか。ルノーから派遣されたカルロス・ゴーンの言うがままに経営再建に身を任せます。「V字回復」と聞こえは良いですが、財務の数字をうまく辻褄合わせしただけ。日産の本来の実力は2000年代に入っても1990年代に比べて改善したのかどうか疑問でした。

 予想通り、辻褄合わせの綻びが広がり、日産社内の生え抜き幹部のクーデタにあってゴーンは追放。残念ながら、疲弊した日産にとって、経営者にふさわしい人材が見当たりません。後任社長として就任した西川廣人、内田誠の両氏は彼らなりに努力したと思いますが、日産社内をまとめることができません。「ひらめ社員が社長になっても、周囲を固めるのはひらめ社員だけ」。陰口だけが広がる日産にもう一度、建て直す空気が見当たりませんでした。

 2025年3月の巨額赤字は、日産の収益を支えた北米と中国の不振が主因です。北米は人気を集めたハイブリッド車の品揃えが不足したため、販売奨励金の積み増しで売り上げを無理矢理上乗せしたツケが大幅な損失に。中国は政府の自国製電気自動車(EV)を後押しする政策で、日産車のみならず日本車は全く売れません。ハイブリッド車の不足、中国政府のEV拡充策は以前からわかっていることでしたが、当時の日産経営陣は対岸の火事として眺め、対応策をとっていませんでした。

生き残るためには

 日産は2025年3月期で当初600億円の赤字を見込んでいました。その後、経営再建に向けて国内外の工場再編や人員整理などによるリストラ費用を含む5000億円超の減損処理を加えました、まず中国・武漢を閉鎖する方針ですが、この工場は22年に稼働を始めたばかり。わずか3年での撤退という事実は当時いかに先行きを読めない経営陣だったかがわかる事実です。

 「為す術もない」といった虚無感を覚えますが、なんとか生き残ってもらうしかありません。ホンダとの経営統合、あるいは台湾の鴻海精密工場との提携、トヨタの救済・・・いろんな憶測が飛び交うでしょうが、まずは日産自身に自力再生する覚悟があるのかどうか。 

関連記事一覧