
焼き鳥食べて地球温暖化を防止しよう!鳥貴族、トリドールなどが再生航空燃料SAFの原料供給
焼き鳥で一杯飲むことに人生の喜びを覚えている酔っ払いに朗報です。焼き鳥チェーンの居酒屋「鳥貴族」が石油最大手のENEOSに店舗で発生する廃食油を回収してエネオスに供給。廃食油は再生航空燃料「SAF」を生まれ変わります。
航空機は自動車と並んで大量のCO2を排出する地球温暖化を招く元凶と批判されており、世界の航空会社でカーボンニュートラルを実現する燃料「SAF」を採用する動きが広がっています。焼き鳥店など居酒屋で大いに飲んで食べて、それが地球温暖化の抑制に貢献できる。ほんのちょっとですが、なんか良いことをしている気分に。素面でもうれしいです。
「鳥貴族」の全国半数がエネオスに供給
「鳥貴族」をチェーン展開するエターナルホスピタリティグループがエネオスと結んだ協定によると、全国660店のうち半数に当たる341店で使用した廃食油をENEOSへ提供します。同社が建設する廃食油をSAFに転換する燃料プラントが和歌山県有田市にあるため、納入できる関西と東海で展開するチェーン店が対象になりました。燃料プラントは2028年以降に稼働する見通しです。
SAF製造に向けた外食産業との取り組みは日揮とコスモ石油が先行しています。サファイア・スカイ・エナジーをバイオ燃料製造のレボインターナショナルなど共に設立して日本で初めてSAFの製造プラントを建設、2025年4月に稼働させました。
原料となる廃食油などは回転寿司「スシロー」、居酒屋「鮨 酒 肴 杉玉」などを展開するフード&ライフカンパニーズから調達します。天ぷらやフライドポテトなどを調理した廃食油は年間90万リットルあるそうです。
廃食油を提供する外食大手はまだまだあります。「丸亀製麺」などを展開するトリドール、「かっぱ寿司」「大戸屋」などを傘下に収めるコロワイドもコスモ石油と日揮のSAF製造に参加しています。今後もどんどんSAFの輪は広がるはずです。
SAFは化石燃料に比べ80%も削減
SAFは食材などを由来にした原料を利用して航空燃料を製造します。植物由来となるので、CO2の排出と消費は差し引きゼロ。化石燃料と比べて80%程度も削減できるといわれています。ジェット燃料を大量に消費する航空機は、欧州で飛行範囲を制限する政策も登場しており、脱炭素は急務であり、生き残りのために必須です。それがSAF製造を目的にした連携を広げる起爆剤になっています。
それにしても、20年前なら日揮が「スシロー」や「丸亀製麺」などと組む構図は想像できませんでした。世界的なプラントメーカーとして日本のみならず中東、アフリカで石油・ガスの大規模な精製工場を建設し、ビジネスの相手はサウジアラビアなど産油国、世界の資源を握る多国籍企業です。日本の外食企業はとても眼中にないと思い込んでいました。
しかし、地球温暖化は従来の常識を覆します。CO2を大量に排出する資源関連企業、航空産業、自動車産業は、事業モデルを変革せざるを得ませんでした。自動車メーカーは電気自動車(EV)の開発を急発進し、化石燃料を大前提にしたエンジン車に代わる時代に備えています。航空産業も国際民間航空機関(ICAO)は国際線の航空機が排出する二酸化炭素(CO2)を2050年までに実質ゼロにする方針を打ち出しています。日本政府も30年に国内航空会社の燃料使用量の10%をSAFに置き換える目標を掲げています。
居酒屋のテーブルに焼き鳥やカギ揚げなど好物を並べ、日本酒を飲みながら、目の前に広がる小宇宙を想像しましょう。「捨てる神あれば、拾う神あり」。私たちが利用した廃食油は回収され、新たな燃料に生まれ変わります。多くが人が出来っこないと信じるカーボンニュートラル時代に向けてわずかな一歩に過ぎません。でも、前進は前進です。いつもの酒や焼き鳥がもっとうまくなりますよ。