
MLB球場観戦(中)ドジャース、大谷と山本のTシャツが舞うカリフォルニア・ドリーム
ロサンゼルス・ドジャースの球場は、ニューヨークのヤンキースタジアムやシアトルのTモバイル・パークと比べ、アクセスも雰囲気も大違い。都心のダウンタウンから車で15分か20分の距離ですが、大都市圏を開発したというよりは荒涼な大地を広大なテーマパークに仕上げた印象です。最寄りの地下鉄駅との距離は遠く、歩くとちょっとつらい。
ドジャース・スタジアムの収容人員は5万人近く。多くは球場を取り巻く広大な駐車場に車で集まります。車以外のアクセスはロサンゼルスの主要駅、ユニオン駅から無料シャトルバスが出ています。日本と比べられないほど高い米国の物価を考えれば、タクシーやUberで交通費を使うより無料バスの存在は助かります。
でも、ナイトゲームの帰りは辛い。試合終了後にどっと吐き出される観客は駐車場に向かい、かき分けかき分けて無料バス乗り場に辿り着いても乗車までの待ち時間、さらにユニオン駅で到着した後も夜間の治安が危ういロサンゼルスの現実を考えたら、結局は駅からUberを手配してホテルへ帰るしかありません。滞在費を抑えたい観光客としては、公共交通機関を安心して利用できるヤンキースタジアムやシアトルのTモバイル・パークの使い勝手に改めて感謝したい気持ちです。
「カリフォルニア州には大都市も、砂漠も、緑豊かな自然もなんでもある。ただ、広すぎて見つけて、たどり着くのが大変なんだ!」。ホテルから歩いて10分程度の地下鉄駅、リトルトーキョーで出会った地下鉄のスタッフが語ったロサンゼルスとドジャース・スタジアムが重なります。
当日はサンフランシスコ・ジャイアンツとの連戦でホーム最後のナイトゲーム。クレイトン・カーショの3000勝を祝うボブルヘッド人形を配布することもあって、早くから多くの人が並んでいました。スタジアム観光も楽しみたいので無料のシャトルバスを諦め、ホテルから利用したUberの運転手はなぜか正門?のAゲートを通り過ぎてBゲートへ。途中、「あれっ?」と気づきましたが、「まあ、いっか」とおまかせに。正門に比べて数少ないお客さんの列に混じって30分ほど並びました。
試合開始の2時間前に開門。さあ、お祭りの始まりです。初めての訪問ですから、まず球場内を一回りしましたが、不思議な感覚に襲われました。テレビも何度も見ている風景のせいか、既視感が強すぎて感動が薄いのです。選手の打撃練習が終わったと思ったら、大谷選手がキャッチボールし、投球練習を始めました。もう生の大谷選手が投球する瞬間を目にするのですから、ワクワクするはずですが、なぜか「いつも見ている風景」と感じてしまいます。せっかくロサンゼルスまで旅費を使って来たのに薄い感動しか覚えない自身に呆れてしまいました。
球場内は選手のユニフォームやTシャツを販売しているショップが至るところにあり、どのお店も「大谷翔平」と「山本由伸」のTシャツばかりが並んでいます。MBLで最も売れているのは「大谷翔平」だそうですが、陳列している製品での占有率を見たら納得します。極端な表現で言えば、「大谷翔平」しか選べない、買えない陳列です。
野球観戦の楽しみである飲食はどうか。ビールはじめ多様なフルーツサワー風のドリンクがたくさん売っています。全部飲んだわけではありませんが、うまい!名物のホットドッグを食べました。「う〜ん、ヤンキースやシアトルの方がうまいものがあった」。率直な感想です。日本選手の活躍で多くのスポンサーが増え、フッドショップもたこ焼きや日本酒などを見かけました。素通りしました。
野球観戦の空気もニューヨークやシアトルと異なります。首位を走り続け、2位のパドレスがヨタヨタしているため、ファンの多くは安心しているのでしょう。試合展開がリードしていることもあって、緊張感が見当たりません。
大好きなドジャースの選手がプレーするのを楽しみ、スタジアムの空気を味わう。ヤンキースファンは熱くて濃い群青に例えれば、ドジャースファンはカリフォルニアの空のような淡い青。空気の比重も軽い感じです。やっぱりカリフォルニアそのものなのでしょう。スタジアムでは大谷翔平、ベッツ、フリーマン、山本由伸、そしてポストシーズンで守護神となった佐々木らスター選手が自らの夢の実現に向けて大活躍しています。ドジャースファンは、きっとカリフォルニア・ドリーミングを自身と重ね、至福の時を過ごしているのです。