
PwCジャパン、ニデック、プルデンシャルを監査 会計事務所の眼力が問われる
優良企業といわれたニデック、プルデンシャル生命保険で相次いで不祥事が発覚しています。偶然にも、2社とも会計監査法人は PwCジャパン。世界4大会計事務所の一角を占め、プライスウォーターハウスクーパースの一員で、百戦錬磨の会計士を抱えています。本来なら、ニデックやプルデンシャル生命が高収益の陰で働いた不正行為を発見、暴く実力は十分にあるはずでした。
世界4大監査の一員
会計事務所は監査法人として企業経営の信用力や健全性に深く関わっています。とりわけ株式上場企業は会計監査法人のお墨付きを前提に財務内容を公表。個人株主や機関投資家はその評価をもとにその将来性を買い、資金を投じます。
万が一、売上高や利益が架空計上され、儲かってもいないにもかかわらず高収益を上げたという財務諸表を捏造されていたとしても、会計事務所は架空の財務諸表のからくりを見抜き、公表するのが仕事です。
ところが、残念ながら企業の不祥事は絶えません。架空の利益を計上した財務諸表の改ざん、虚偽で固めたビジネスモデルや経営姿勢など株主らの期待を裏切る行為が続きます。過去を振り返っても、新日本監査法人が東芝の不正経理を見逃し、金融庁から業務会税命令と課徴金処分を受けています。カネボウの粉飾を容認した中央青山監査法人は消滅しました。米国でもPwCと並ぶアーサー・アンダーセンは米エネルギー大手のエンロンの不正によって解散に追い込まれました。
なぜ不正を見破れないのか
過去に多くの前例があるにもかかわらず、PwCジャパンはなぜ不正を見破ることができなかったのか。もちろん、会計事務所は全権を保持する万能の持ち主と勘違いしていません。不祥事の責務はニデック、プルデンシャル生命が問われるのは当然としても、会計事務所が株主や投資家、利用する客らから期待される役割を発揮できなければ、その存在価値を問われます。
例えば、ニデックは海外子会社の不適切会計。巨額の損益隠しが発覚し、東証を代表する優良企業の座から転げ落ちました。PwCジャパンは2025年3月期、同年9月中間期決算の2度にわたって監査意見を「意見不表明」としました。2度も続くのは異例中の異例です。2025年9月中間期は速報値と確定値で営業利益と純利益が大幅に下方修正され、損失引当金が876億円も計上される異常事態でした。
ニデックの不適切会計が突然、始まったとは思えません。もっと以前の決算監査の最中にニデックの経理担当者らが辻褄合わせした経営指標に嘘を感じ、過大に利益を増やした手法を見破る可能性はあった気がします。
ニデックもプルデンシャルも評価は高かった
プルデンシャル生命保険も同じです。ニデックと違い、不適切会計ではないので、監査法人の監査能力を疑うのはお門違いと思いますか。プルデンシャル生命が公表した調査結果によると、1991年以降でみても498人の顧客に暗号資産(仮想通貨)などへの投資やもうけ話を持ちかけ、顧客から受け取った金銭を着服したり、借りても返さない事例がわかりました。詐取した金額は31億円超。
30年以上も続いた不正行為を監査法人は見抜けないのか。不正行為は100人を超える社員が働いていたのですから、社内的には周知の事実でしょう。その状況が監査法人に全く伝わらないとしたら、監査法人は何を監査していたのでしょうか。
プルデンシャル生命の2024年度決算をもとにした報告書をみると、当然ですが、会計監査法人が顧客から31億円を詐取した疑いを臭わす経営指標は見当たりません。契約数、収益などの経営指標が続きます。S&Pの「A+」、格付け投資情報センターの「AA」という高い評価、健全な財務内容が誇示され、会計監査法人の項目ではPwCジャパンがしっかり明記されています。公表されたデータを見る限り、優良保険会社です。不祥事に対する対策についても、経営側の「体制を整えてまいります」の文言をそのまま鵜呑みにしたのでしょうか。
しかし、実態は違いました。プルデンシャル生命の「現状」は虚偽だったのです。
会計事務所が金の亡者になったらおしまい
会計監査法人は監査する企業から手数料を受け取るのが主なビジネスモデルです。会計事務所の激しい競争もあって会計監査法人の言い値で通るわけがありません。契約継続を前提に値上げを見送って欲しいなど丁々発止の交渉が毎年、繰り返されます。逆に「これだけ高い手数料を支払っているのだから、このぐらい見逃して欲しい」と要求する企業もあります。
会計事務所のお墨付きが虚偽や不正行為を隠すために利用されているとしたら、本末転倒どころか企業、株主の信頼関係、さらに企業の社会的な存在そのものが問われます。今や下火になってしまいましたが、ESG、SDGsの根底となる企業倫理がますます雲散していまいます。
PwCジャパンがすべての会計事務所を代表しているわけではありません。ただ、会計事務所に求められる資質は守って欲しい。会計事務所は高額報酬や次のキャリアアップに繋げる腰掛けとして人気が高まっていますが、会計事務所自らが金の亡者になってしまい、会計監査の信頼が虚像となってしまったら困ります。

