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トヨタ社長交代、豊田会長の長男・大輔就任まで社長不在が続く

  「えげつない!」。この一言ですね。トヨタ自動車の社長交代です。

 4月1日付で近健太執行役員・CFO(最高財務責任者)が社長に昇格します。佐藤恒治社長は副会長に就き、新設するチーフ・インダストリー・オフィサー(CIO)の肩書きに。6月開催の定時株主総会で取締役も退任します。トヨタを離れ、自動車産業の競争力強化に尽力するためと説明しますが、体の良い左遷、というか用済み人事。

体の良い左遷

 代わりに就任する近氏は豊田章男会長の最側近と言われる人物。豊田社長時代に社長秘書として8年間務め、その後は経理部部長、常務役員とトントン拍子にスピード出世。これほどかわいがる理由は「経理部」がキーワード。

 豊田会長はトヨタ入社直後、経理部に配属され、当時上司だった小林耕士氏を師と仰ぎ、デンソー副会長、トヨタ副社長などに起用。今も「番頭」として重用しています。

 最も信頼できる経理部出身者を社長に置き、創業家・豊田がトヨタグループの実権を握り続ける盤石な布陣を敷いたのです。見据える先で待ち構えるのは豊田会長の長男である大輔氏の社長就任。トヨタは当分、事実上社長不在となり、豊田会長が好き勝手にハンドルを振り回る時代が続くと宣言したも同然です。

「もう豊田会長を誰も止められない」。社内から不穏な噂は聞いていました。佐藤社長の言動がすっかり消え、再び豊田章男会長のパフォーマンスが目立っていましたから「やっぱり!」と思っていましたが、まさか取締役を外して放り出すとは予想しませんでした。

業績は絶好調なのに、3年で交代

 さすがに無念だったのでしょう。佐藤社長は記者会見で「これからトヨタが向き合う経営課題に全力で向き合うためのフォーメーションチェンジだ」と社長交代の理由を説明しながらも、2023年4月に社長就任してからわずか3年間の在任期間について「正直短いと思うが、まだ3年だけど、もう3年でもある」と自らを説得するかのように話していました。

 なにしろ、トヨタの業績は絶好調。3年で社長職を引き摺り下ろされる理由は見当たりません。トランプ関税という逆風を受けながらも、北米はハイブリッド車が好調に売れ、円安ドル高の為替差益が追い風となって、業績は売上高が過去最高となる50兆円の大台に達し、純利益も3兆5700億円を確保する見通しです。

 社長交代の理由もかなり無理があります。自動車産業を取り巻く経営環境に対する体制一新と説明します。確かに、BYDなど中国メーカーが電気自動車(EV)や自動運転分野で台頭しているうえ、テスラやグーグルなどが自動車の先進技術でリードしています。世界一の販売台数を誇るトヨタも新たな危機感を持たなければいけないと強調します。

 だから、佐藤社長はトヨタCIOとして自動車産業の事業改革に腕を振うという理屈です。1年前の2025年5月に経団連副会長、2026年1月に日本自動車工業会会長に就任しており、実力、役職としても期待できる人物ですが、経団連の求心力はかなり衰え、日本の製造業の頂点に立つトヨタといえども日本経済を背負うことは過剰積載です。

 もっといえば、経営環境の急速な変化が佐藤社長に就任する2023年以前から始まっている潮流の変化です。いまさら警鐘を鳴らされても、納得できません。

近次期社長は豊田会長の最側近

 近社長を決めた理由も納得できません。トヨタがより「稼ぐ力」を強化するために相応しい人材と説明しますが、花井正八、辻源太郎両氏らトヨタ銀行と呼ばれるほどの財務内容を創り上げた経理担当役員は副会長に就任しています。わざわざ経理の専門家を社長に就けなくても、トヨタ社内には「徹底して無駄を排する」思想は浸透しています。

 そんな表の理由はともかく、やはり豊田会長と近氏の「近さ」に注目したい。佐藤社長はトップ人事について豊田会長は「意思決定に関わっていない」としているが、誰も信じていません。

 近氏は直近、豊田会長の肝煎プロジェクトであるウーブンシティで社長を務めるなど総指揮する立場。ウーブンシティにはシニア・バイス・プレジデントとして豊田会長の長男、大輔氏が就いています。誰もが見ても、社長修行の第一歩であり、大輔氏のお守り役を任命されているのは近氏。明白です。

大輔社長への橋渡し

 豊田会長は2009年の社長就任以来、社長、会長を務めた奥田碩氏らを排することにエネルギーを注ぎ、創業家の復権に力を入れていました。創業家の祖業である豊田自動織機の非公開化を急ぐのも、国内外の投資ファンドなどからの介入を阻止すためです。

 豊田会長の父親である豊田章一郎氏は、奥田会長時代に「自分の目が黒い間に章男を社長にしてくれ」と懇願したそうです。今度は章男氏が長男の大輔氏を社長就任に向けた道筋をつける番と考えているのでしょう。

 もっとも、トヨタ社内にはこんな憶測が流れています。「大輔さんは父親の章男さんとうまくいっていない。大丈夫かな?」。

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