バイオネストが語りかけてきます。「毎日、野菜を大事に食べていますか」

  歩道に植えられた木々が赤い実をつけていると思ったら、名前の知らない草の花がとても美しい白い色で咲いています。足元には落とし物と思われる小さな人形や手袋が歩道の脇に置かれていました。かわいい。

 毎日散歩していると、いつも見逃している驚きを発見します。会社勤めしている頃なら、視界にも入りません。会社を辞めると毎日が休みと考えていましたが、実は毎日が平日。自分でやりたいと決めたことは毎日、実践できます。仕事なら「1日ぐらい休んでも良いじゃない」といった弁解もできますが、仕事じゃありません。自分自身が実行したいと決めたことです。休む理由が見当たりません。散歩もそのひとつです。

道端の落とし物

公園の木を囲む大きなリースを発見

 直近の驚きはバイオネスト 。ほぼ毎日通う公園の林の中で見かけました。秋に入ると、紅葉した赤色や黄色の葉が絨毯のように敷き詰められる地面にクリスマスのリースのような大きなリングがありました。林の中でも大きめ木の周囲に配置され、どうも見ても人の手で編み込まれたものです。初めてみました。

 「なんだろう?」と驚き、見渡すと立て看板がありました。まるで心に浮かんだ疑問に答えるように。「これはバイオネストです。『巨大な鳥の巣のアート』のように見えますが、〇〇公園の自然素材でできた手作りコンポストです 」。続けて「2022年10月に〇〇小学3年生の児童たちが4つのバイオネスト を編み上げました。一年以上かけて、中の落ち葉が土中の微生物によって分解され、腐葉土(堆肥)に変わっていきます。ゆっくりと続く自然の変化を、子供たちと一緒に見守ってください」とあります。

 「バイオネスト ってあるんだ」。素朴な驚きです。自宅に帰ってネット検索すると、バイオネスト が続々と出てきます。自宅の庭を手入れしている過程で、刈り取った枝や草、落ち葉などを溜めて肥料として使うとあります。12月のクリスマスが迫っていたこともあって、公園で見かけたバイオネスト は林に溶け込む大きなリースが飾られているよう。それが飾りとしての役割だけでなく土壌の栄養となることを知り、とても癒される風景に映ります。

 用途を考えれば、堆肥置き場かもしれません。でも、秋に入って木々から折れた枝などを編み上げ、自然がより強くなるよう手入れする人間の役割が映し出され、毎日のように目にしてきた公園が新鮮な風景に変わりました。

畑には野菜の残さのヤマ

 そんなバイオネストに感動した後、全く不埒な風景を思い出してしまいました。山積みされた野菜の残滓です。

 この8年ほど小さな畑を借りて野菜を栽培しており、今が秋冬野菜の収穫期のピークです。採りたての野菜は畑でそのまま食べてもおいしいのですが、今シーズンは天候に恵まれたせいか、甘さとコクが例年以上にあります。

 素人が栽培するのですから、ほとんどは見た目がよくありません。小松菜は育ちすぎて葉が捩れ、ほうれん草は四方八方にばらけて花のように開いている時も。ブロッコリーは本来なら濃緑色に輝くはずが、収穫する前に一部が黄色に染まってしまいます。ニンジンも土から掘り出すと、八百屋さんの店頭に並ぶような綺麗な円錐形と違って二股、三股に分かれ不格好なものもあります。でも、ブロッコリーもニンジンもその場で食べても、うま味が濃いのでお腹が空いた時はおやつ代わりに食べています。

家庭菜園を楽しむ人でも、見た目が悪いと食べない

 ところが、畑の近くには残念な風景が時々、現れます(注;個人的な感想です)。一部が黄色になったブロッコリーや二股・三股のニンジンが捨てられ、大根の大きな葉は青首の上からバッサリ。切るシーンを思い浮かべると、ちょっと怖い。小松菜やほうれん草も黄色や葉が汚れていると、ゴミ箱へ。「ニンジンのひげは体に悪いんだよね」と言って捨てようとする人も。

 あまりにも、もったいないので捨てた人が姿を消したら持参しようとしたのですが、なかなか去ってもらえず何度か断念したこともあります。 

 畑を管理している農家さんは、捨てられた野菜や葉などは地中に埋めたりして堆肥にするのでしょうか。野菜は食べる人間を健康にするのか、それとも食べられずにそのまま肥料になるか、経過は違いますがどちらにしても役に立つのですから不満はないのでしょうが、せっかく種から芽を出して土の栄養分と太陽光と雨をエネルギーにおいしい野菜に育ちます。食べてあげないともったいない。

「食品ロスのご協力に感謝」のラベル

 SDGsの広がりで食品ロスを解消しようという呼びかけをみかけます。スーパーでも、期限が迫った生鮮品を値引きする動きが広がっています。「食品ロスのご協力に感謝します」といったラベルが貼られているのを見ると、やはり山積みされた野菜の残渣を思い出します。

 日頃、当たり前のように食物を購入し、消費している生活の中で、実は知らない間に多くのものを投げ捨てているのでしょう。「食べ物を大事に扱っていますか」。バイオネストにこう質問されたら、なんと答えれば良いのか。 

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