復活「音威子府そば」を食べる そば湯は焼酎を注ぎ、飲み干し 麺とそば湯に酩酊
「音威子府そば」を久しぶりに食べました。麺は黒く、噛み締めるとしっかりと応えてくれます。「そば!」と突きつけられるような香りも元のまま。期待通り。そば湯をそのまま飲んでもおいしいのですが、音威子府そばはなぜかお酒に合うのです。日本酒、焼酎どちらもお好み次第。今回はそば湯に焼酎を注ぎ、飲みました。「うまい!!」。通常のそば湯割りはまろやかな味わいになりますが、音威子府そばのお湯わりはそばと焼酎の味それぞれを強く引き出す感じ。いやあ満喫したせいか、飲み過ぎてしまい、酩酊しました。
名寄の道の駅で購入
音威子府そばを購入したのは、北海道名寄市の道の駅「もち米の里☆なよろ」。毎年、ピヤシリスキー場へ通っているのですが、時々立ち寄ります。名寄市は「もち米」の生産量日本一、そしてピヤシリの雪質日本一を謳っていますが、こちらも期待を裏切りません。人気商品として売り出し中の「ソフト大福」を購入しようとお店に入ったら、「復活・音威子府そば」のポップが目に入りました。当然のようにコーナーに向かい、3袋をわしづかみしました。
レジカウンターで店員さんに「音威子府そばが入荷するんですね」と訊ねたら、「今朝、届いたばかりですよ」と教えてくれました。運が良かったみたいです。
音威子府そばは、北海道北部の音威子府村で誕生した特産品でした。あえて過去形を採用します。村の人口は668人(2024年1月末現在)。北海道でも一番小さい村ですが、鉄道ファンやそば好きの間ではとても有名。幌加内など周辺地域は全国トップのそば生産量を誇りますが、音威子府そばは本州のそばとは違う個性の強さが知られていました。
とりわけ、JR宗谷本線の音威子府駅構内の「常盤軒」は鉄道ファンのみならず全国からそば好きが集まってきました。しかし、常盤軒の店主が亡くなり2021年に閉店。1926年創業の「音威子府そば』を製造する畠山製麺も2022年8月末で100年近い歴史を閉じました。製麺法は事実上一子相伝で、そばの製麺方法を継承する方が高齢を理由に「他人には再現できない」と考え、2022年夏に廃業。黒いそばは消えてしまいました。
音威子府村の農家が復活
購入した「おといねっぷ蕎麦」の製造者は「(株)寿須藤製麺工場」とあります。販売者は合同会社「タチカワ商販」とあり、住所は音威子府村字物満内58とあります。北海道新聞の2023年8月4日付け記事によると、音威子府村の農家、立川貴紹さんが「おといねっぷ蕎麦」を開発したと伝えています。今回の「おといねっぷ蕎麦」は立川さんが復活したものでした。
実は、音威子府そばの復活は以前に書いたことがあります。朝日新聞2023年6月12日付記事によると、千葉県茂原市で「音威子府食堂」を開いている佐藤博さんが茂原市の製麺所とともに、試作を重ねて成功しました。佐藤さんの実家は音威子府村のそば農家。高校卒業後、千葉県で開店し、子供の頃から親しんでいた音威子府そばを看板メニューに据え、音威子府村の製麺所から仕入れて提供していました。畠山製麺の廃業を受けて、東京で蕎麦店「音威子府TOKYO」を開いていた鈴木章一郎さんも協力し2023年に入って再現に成功し、東京の店などで提供しています。
音威子府村の魅力も広まって
音威子府そばは一時、姿を消し、寂しい思いをしました。あの強烈な個性が忘れらずに復活に挑み、新たな「音威子府そば」が誕生しています。とてもうれしいです。そして個性あふれる音威子府そばの魅力は多くの人に知ってほしい。音威子府村の存在も感じてほしい。黒い蕎麦から北海道の北の大自然を感じ、北海道の魅力を改めて味わってほしい。「おといねっぷ蕎麦」を食べながら、反芻しています。