94年「平成の米騒動」再来?日本の食生活を再設計するチャンス到来
「平成の米騒動」が再来するのでしょうか。冷夏で凶作となった1993年に生産された米の価格は供給不足の心配から買い占めが広がり、翌年の1994年に価格が急騰。スーパーなど小売りの棚から米が消え、政府が急遽、タイや米国、オーストラリアなどから米を輸入するなど大騒ぎとなりました。今回は2023年の猛暑による品質低下などで供給量が落ち込み、価格が30年ぶりの高水準に上昇しているそうです。日本の食生活は当時と比べ大きく変わり、米は主食の座から降りようとしていますが、もし「令和の米騒動」が起こるなら、消費せずに無駄に捨てている食生活を再設計するチャンスと考えませんか?
コシヒカリは2倍に
日本経済新聞によると、人気の高い新潟産コシヒカリは1俵(60キロ)当たり2万8050円と昨年に比べ2倍にまで上昇しました。秋田産あきたこまちも8割も高い2万7650円となっています。原因は昨夏の猛暑の影響で供給量が不足したため、米の卸売り会社などが早めに確保し、品薄状態に陥っているようです。品揃えができないスーパーなどは購入する数量に上限を設定するところも出ており、今年秋以降に新米が出回るまで窮屈な売買が続くかもしれません。
日本の米の消費量は低下し続けています。1人当たりの消費量は、1962年度の年間118・3キロをピークにどんどん目減りしており、2022年度には50・9キロと半減以下に落ち込んでいます。2023年の猛暑の影響で供給不足になっても大きな影響が出るのかと呑気に考えていましたが、最近の外国人観光客の急増で外食による米の消費量が増えており、日本人の米消費の低下分を補っているのだそうです。かなり予想外な状況です。
2024年も猛暑や大雨などの影響で農作物が大きな打撃を受けており、米の生産量も見通しが不明です。考えたくありませんが、米の需給逼迫による価格高騰は来年も起こる可能性があります。
来年も高騰する可能性
30年前、「平成の米騒動」を伝えるニュースをオーストラリアの稲作農家と一緒に見ていたことがあります。オーストラリアは日本人が好む米の生産に力を入れており、同国東南部の稲作地帯を取材中でした。ニュースで最も驚いたのは日本人の米に対するこだわりの強さでした。食べる米がないと大騒ぎしているにもかかわらず、スーパーの店頭で「タイ産の米は食べたくない」と話す日本人がとても多いのです。
日本の米は確かに甘くて美味しいです。粒が長いタイ産の食味とは違います。日本向けを生産するオーストラリアの米もかないません。しかし、「食べる米がない」と嘆きながらも、目の前のタイ産の米を買わない日本人の姿を映し出すテレビニュースをオーストラリアの稲作農家と一緒に見ながら、思わず顔を見合わせました。「日本人はお腹を空かしても、高くても日本産を選ぶぐらいお金持ちなんだ」と農家さんは苦笑していました。
当時の日本は世界第2位の経済大国でした。海外から食料をどんどん購入する力がありました。残念ながら、現在は経済力は落ち込み、円安も手伝って農水産物の買い占め競争で日本は負ける側にあります。米をはじめ食料を海外から調達しようとしても、思うようにできないのが現実です。
経済力の低下で輸入する力も低下
日本にできることは、無駄を排した食生活の再設計です。食べずにゴミとして捨ててしまう食料を極力減らすことです。FAO(国際連合食糧農業機関)の報告書によると、世界で生産する食料の3分の1に当たる約13億トンが1年間に捨てられています。日本は1年間に約612万トンで、1人当たりで換算すると茶碗1杯分のごはんを毎日捨てている計算だそうです。
白飯1杯を捨てずに食べれば、目の前の米不足が一気に解消するのではないでしょうか。割高な米を買うこともなくなりますし、家計は楽になります。ついでに野菜や肉類の消費も見直しましょう。野菜も肉も輸入に頼っている食材です。円安で値段はどんどん上がっています。日本の経済力は今後、インドやインドネシアに抜かれ、経済大国に戻るどころか小国へ向かう流れにあります。
「令和の米騒動」は再来してほしくありませんが、食生活に対する気構えだけは早めに整えておくのが将来の日本にとって賢明ではないでしょうか。