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アリストテレスは嘘つかない・2000年前に「トランプ」を活写、南ア大統領の学ぶ力に拍手!!

 古代ギリシャの哲学者、アリストテレスは嘘つかない。2000年以上も前に著した「政治学」に現在、話題のリアル・トランプが活写されています。

ラマポーザ大統領、お見事!

 米国のトランプ大統領と南アフリカのシリル・ラマポーザ大統領がワシントンで会談しました。トランプ大統領は根拠のない白人迫害を槍玉にあげる下劣な嫌がらせだけが目立ちましたが、ラマポーザ大統領は戸惑いを見せながらも笑顔を絶やさず、反論する声は穏やかだったそうです。2月末、ウクライナのゼレンスキー大統領は「米国に感謝していない」というヴァンス副大統領の売り言葉にトランプ大統領が加わり、会談は激怒の場に変わり、米国とウクライナの関係が最悪になりました。

 ラマポーザ大統領は前例の教訓をしっかりと学び、コロナ禍での米国の支援について「あなたと米国民に『ありがとう』と言いたい」と感謝の意を表明し、米国大統領の下劣な発言をかわしました。お見事です!

 アリストテレスは、理想主義を貫いプラトンと違い、現実を注視して自然科学、倫理学、政治学など広範囲にわたって分析、最も重視すべきこととして徳を強調しました。マケドニアのアレクサンドロス大王の家庭教師を務めたことでも有名です。現在でも欧米の大学生にとって、哲学、政治学などの基礎的な考え方を学ぶうえで必須の著作となっています。

 著作「政治学」(中央公論新社)で、あたかもトランプ大統領の言動を予見したかのように、僭主制について説明しています。僭主制とは、支配者1人の私的利益のために行う政治形態を指し、王政であれば堕落した結果、民主主義でも大衆を煽動するデマゴーグによって誕生すると指摘しています。

「政治学」で独裁者を説明

 僭主、言い換えれば独裁者は、どのような言動をするのか。ちょっと長いですが、「政治学」から引用します。

(それが劣悪な人間をこのむ体制であるもう一つの理由は)悪い人間は悪事にたいして有用だからである。なぜなら、諺にあるように、「釘は釘によってたたき出される(蛇のみちは蛇)」からである。また、堂々たる人物や自由人の精神をもつ人間を快くおもわないのも僭主独裁者の特徴である。

というのは、僭主独裁者というものは、おのれ一人のみがそうした人間であることを要求するものであるのに、その威容においてかれに比肩する人物や、自由人の気位を起げない人物は、独裁者の地位からその優越性と主人らしさを奪い去るからである。だから、かれらを、あたかも自分の支配をくつがえすものであるかのごとくに憎むのである。

また、食卓の仲間や日常の相手として、自国の市民よりはむしろ外国人を起用することも独裁者の特徴である。それは、自国の同胞は敵であるが、外国人は自分と張り合うことはないと考えるからである。

 2024年に繰り広げられた米大統領選を思い出してください。「MAGA(米国を再び偉大に)」を連呼する熱狂する支持者によって返り咲きを果たしました。第2次政権はヴァンス副大統領ら主要閣僚は「堂々たる人物や自由人の精神をもつ人間」とは縁遠い人物ばかり。、お追従にしか聞こえない意に沿った発言を繰り返すだけ。

 トランプ大統領とラマポーザ大統領の会談を振り返ってみます。読売新聞によると、会談では冒頭「南アの白人は土地を没収され、殺されている」などと繰り返し、南アの急進左派政党の支持者たちが「ボーア人(オランダ系南ア人)を殺せ、農民を殺せ」と歌う様子を収めた動画を流した後、白人が被害に遭った事件を伝える記事の束を「みんな死んだ」と吐き捨てながら、ラマポーザ大統領に手渡したそうです。

読売は白人迫害の事実はない

 読売新聞は白人の迫害について裏付けがないと断定し、南アの警察当局の統計では2024年4月~12月に殺害された1万9696人のうち農場関係者は36人で黒人も含まれると伝えてます。ラマポーザ大統領は治安問題を認めながらも「犯罪で命を落としている人の多くは黒人だ」と反論したそうです。

 もっとも、多くの人はトランプ大統領が白人迫害を批判する前に、アフリカや北米での黒人奴隷、南アでの人種差別政策「アパルトヘイト」などについてどう説明するかを聞いてみたいと思ったのではないでしょうか。

 米ニューヨーク・タイムズは、トンラプ大統領は南ア出身のプロゴルファーの影響を受けたとの見方を伝えており、第2次政権では南アへの援助停止や白人の米国移住を促進する大統領令に署名しています。トランプ大統領を巨額資金で支援した南ア出身のイーロン・マスク氏が南ア政府を繰り返し批判しことも影響しているそうです。

 アリストテレスが「食卓の仲間や日常の相手として、自国の市民よりはむしろ外国人を起用する」と指摘する通り、独裁者は耳を傾ける相手を間違えているにもかかわらず、気づかないのです。ハーバード大学を徹底して非難しているトランプ大統領ですから、今さらアリストテレスと言われても痛くも痒くもないでしょうが・・・。

石破首相、お追従は効きませんよ

 ラマポーザ大統領は、南アの人種差別政策「アパルトヘイト」を廃止したマンデラ大統領の側近として活躍し、マンデラ氏も後継者と考えていた人物です。その後、南アの政治を支配したアフリカ民族会議(ANC)内の権力闘争に敗れながらも、実業家として成功を収めて政界に復帰。2018年に汚職に塗れたズマ大統領の後任として大統領に就任しました。

 お会いしたことはありませんが今回のトランプ大統領との会談を見る限り、アリストテレスが「政治学」で描いた僭主制にお追従する人物ではなく、歴史を学び、自国と国民の自由を守る政治家であることがわかります。

 石破首相も頑張って!トランプ関税はお追従では何も解決しませんよ。

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