自動運転レベル4 EV加速が地方に人工知能とスタートアップを吹き込む

 自動運転のレベル4が2023年4月からスタートします。警察庁は特定の条件下で緊急時もシステムが運転する「レベル4」を認める方針を明らかにしました。当面は、すでに実証実験を進めている無人運転のコミュニティバスなどが主役です。日本の交通体系にはもちろん、過疎と新産業育成に悩む地方にとっても目の前の閉塞感を打破する大きなチャンスになります。自動運転と共に地方へ移植される人工知能などの最先端技術、優秀な人材が刺激剤となって、地方創生をもたらすパワーも生み出すからです。

テスラ、グーグル、アップルなどが先陣を切る

 自動運転は米国が先陣を切って世界で普及しています。電気自動車(EV)のテスラ、グーグルやアップルなど人工知能や情報通信のトップ企業が疾走、日本やドイツが追う構図です。テスラはレベル5実現寸前にまでこぎつけており、ドイツ・アウディやホンダなど主要自動車メーカーはレベル3に手が届いています。

 警察庁は現在、渋滞する高速道路などで機能する自動運転「レベル3」まで認めており、レベル3を達成した新車が販売されています。来年の2023年4月から認めるレベル4の自動運転は、交通手段が不便な地方の過疎地域で運行サービスなどを想定しています。実証試験はすでに福井県永平寺町で始まっており、レベル4に向けてデータを集める計画で、2025年までに全国40ヶ所程度で展開するそうです。

自動運転のレベル

5;完全な自動運転

4;一定の条件の下で緊急時も含めて完全に自動運転できる

3;一定の条件の下で自動運転し、緊急時は人が操作して危険を回避する

2;高速道路で周囲の車の走行を判断して自動運転で追い抜くなど運転を支援する

1;自動ブレーキや車線維持などで運転を支援する

 電気自動車は最先端技術のかたまり

 電気自動車は最先端技術のかたまりです。地球温暖化を招くCO2の排出を抑えるため、欧米や中国などを中心に急速に普及していますが、周囲の状況を判断する人工知能や多くのセンサーを搭載、インターネットを駆使してエンターテインメントやオフィス代わりに使うなど従来の自動車の枠を大きく超えます。レベル4の自動運転が始まれば電気自動車の技術開発が一段と加速し、完全自動運転のレベル5に向けた新たな情報通信技術のブレイクスルーを呼び起こすわけです。

 電気自動車だけではありません。レベル4の自動運転では、遠隔操作で商品を届ける「自動配送ロボット」なども実用化に向けて動き出します。

交通が不便で人材不足の地方にとって朗報

 地方、とりわけ人口が減少し、高齢者の比率が高い地域にとって朗報に違いありません。過疎化が進み、限界集落と呼ばれる地域は、バスやタクシーなど交通インフラが劣化、郵便や宅配便など物流面でも大きなハンデを負っています。電気自動車を使った巡回バス、配送ロボットなどを活用して、地域の住民が求めるサービスや移動インフラを整えるチャンスです。無人の自動運転なら、整備のネックといわれた運転手や配達員など人材不足も補えます。

 チャンスはもっとあります。自動運転のデータを集め、より高度なシステムに進化するため、新たな実証実験や技術開発を進める拠点として地方が活用されます。住宅密集地などを気にせず、電気自動車、ドローン、ロボットなど様々移動体を組み合わせたプロジェクトを展開でき、研究開発の拠点として利用する例が期待できます。

より高度な実証実験や優秀な人材の移住も期待

 コロナ禍もあってリモートワークが当たり前になった結果、東京などを離れて事業を立ち上げたり研究開発に取り組む移住組も期待できます。過疎地から新しい事業をスタートアップする例も生まれるでしょう。レベル4の自動運転解禁は、ようやく本物の「地方創生」のとびらを開くのです。

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