ダボス、COP  国際会議は茶番か、問われる「信頼の再構築」

 世界経済フォーラムの年次総会が1月15日に開幕しました。スイス東部のリゾート地・ダボスで開催されるため、ダボス会議の呼び名で知られています。ダボス会議に出席し、講演することは一流の証しと受け止められており、世界各国から政治家や企業トップが集まり、世界の政治・経済を討議します。ところが最近は素朴な疑問が付き纏っています。自身の存在感をアピールする場としての評価は高いものの、会議の中身はどうなのでしょうか。

欧州では茶番の見方も

 欧州ではダボス会議を茶番だと批判する声もあります。世界の知恵を集めて難問に立ち向かうことは大事ですが、長年眺めてきた身からすると、理想が実現するほど現実は甘くないのだと諭されている思いです。地球温暖化の防止策を討議する国連の気候変動会議COPもダボス会議と同じ空気を感じ始めました。ダボスやCOPの討議をどう受け止め、消化すれば良いのか戸惑う時があります。

 「会議は踊る」と囃し立て、戦争が再び始めるのは仕方がないとわかったフリをする気はありません。ダボス会議も自らの賞味期限切れを意識する時を迎えています。

 今年のダボス会議には世界から2800人が集まり、フランスのマクロン大統領、中国の李強首相はじめカタール、韓国、アルゼンチンなどの首脳が参加するほか、財務相、中央銀行総裁ら錚々たるメンバーが揃います。そしてウクライナのゼレンスキー大統領も初めて対面で参加します。同大統領は、ロシア侵攻に関する支援疲れが目立つ欧州などに対し、引き続き支援の継続を求めます。企業経営者は人工知能で話題のオープンAIのサム・アルトマンCEOら1600人が出席します。日本からは河野デジタル相が参加します。デジタル利用が世界に比べて遅れている日本です。ダボス会議で河野さんは何を訴えるのか。

ダボスのテーマは信頼の再構築

 全体テーマは「信頼の再構築」。世界経済フォーラムはテーマの設定について、国、地域で相互の信頼が低下した結果、地政学的な不安を招いており、対話による解決策への道筋を示したいと説明しています。世界の安全保障、気候変動・エネルギー移行、人工知能などが主軸に議論をされるそうですから、アルトマンCEOの論調が再び話題になるのでしょう。

 しかし、素直には受け止められません。信頼の再構築はダボス会議そのものに求めれています。参加者は自国や企業の理念を強調し、世界の政治経済への貢献をアピールするはずです。全然、異論はありません。その通り実行できればの話ですが・・・。過去のダボス会議で中国の習近平主席ら世界のリーダーが出席し、自身の理念を説いています。

 習近平主席は2022年1月、「世界各国は真の多国間主義を堅持し、壁を壊し壁を築かず、開放し隔絶せず、融合し離脱しないことを堅持し、開放型世界経済の構築を推進しなければならない」と強調しました。その通りです。現実の中国の政策はどうでしょうか。目指す理想はそう簡単に実現できません。ただ、現実とあまりにもかけ離れていれば、理想は幻滅に変わります。

理想が幻滅に変わる時も

 気候変動会議COPはどうでしょうか。2023年11月に開催したCOP28はアラブ首長国連邦(UAE)が議長国となって地球温暖化について討議しました。中東の産油国が脱化石燃料についてどのような舞台回しを演出するか注目しましたが、案の定の展開でした。早々と脱化石燃料を掲げたものの、ドイツなどの反発を考慮して軌道修正を始めた欧州を取り込み、カーボンニュートラルの加速を強調するものの、実質的には達成目標が曖昧な宣言をまとめました。賞味期限切れが迫っているCOPを見て、ダボス会議を主催する世界経済フォーラムもそろそろ自身のブランドが色褪せてきたことを自覚しているに違いありません。

 どう信頼回復への道を描くか。せっかく世界の叡智が集まるのです。ダボス会議では、国際会議が引き続き有効だと自信を持って宣言できる成果を期待したい。

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