情報に混乱があったことについて北陸電力は、社内で適切な情報連携がとれていなかったことが原因だったとしています。原子力規制委員会の山中伸介委員長は1月10日の会見で「緊急時の情報発信は難しいところがあるが、情報共有のあり方は福島第一原発事故の大きな教訓だ。今回の対応には不十分な部分もあり、まだまだ努力してほしい」と北陸電力に改善を求めています。
地震直後の混乱は避けられません。訂正が繰り返されたことは残念ですが、状況を正確に把握して対応することが最も重要なことです。ただ、情報はその後に訂正されたとしても、当初の情報が独り歩きして拡散することが多いですし、それに伴い尾鰭がつき、誤解を招く情報に変容してしまうこともあります。幸いにも大きな被害に至らなかったのは良かったですが、改めて情報発信に対する反省と教訓が炙り出されました。
安全神話は崩れた今、信頼回復へより積極的に
電事連のサイトを見ると依然、過去の原発に関する情報発信の発想が踏襲されているように感じます。それは「原発は安全だ」という一点を強調することです。政府や電力会社が1970年代から繰り返し謳っていた「安全神話」は東日本大震災の東京電力の福島第一原発事故によって脆くも崩れました。日本のみならず、世界の人たちも原発の安全性を再び問い始めています。ドイツなどは、「日本でさえ安全管理できないのだから」と従来の原発推進政策を転換、原発ゼロへ政策を進めています。
今回の反省と教訓は、原発の安全性を繰り返し説明しても国民の目は不安と疑問のまま。原発の仕組み自体が理解し難いこともあって、漠然とした不安は消えません。こうした多くの国民の視線を改めて感じて積極的に原発の安全性を訴える努力が必要です。それは今後、予想し難い事態に直面しても、「安全性は担保できるのだ」という最悪に備えて安全対策を次々と更新し、確実性を高めていることを説明することです。
例えば、志賀原発は直下型地震に見舞われていませんが、あれだけ震源地と原発が近いと、直下型を想定するのは非現実だと一蹴することはできません。元々、原発は直下型地震の可能性がある地域に建設しないが前提です。電力会社から見れば、国の定める基準を全て認証されて建設した原発ですから、ありえないことを前提に説明しろというのは不合理と思うでしょう。しかし、志賀原発は、ありえないことがありえるかもしれないという事実を見せつけました。
「不安がない」と強調するだけでは
サイトに掲載された電事連の一問一答を見ていると、質問に対する疑問について、結論は「不安はありません」を繰り返すだけの印象を受けます。下記はサイトから質疑応答の項目を引用したものです。現時点で不安を払拭することが最優先と考えるのも理解できます。
繰り返しになりますが、原発の信頼性を取り戻すことは「原発に不安はない」と説明することではありません。「もし、不安や不備があれば、こう解決する」という具体的な説明と姿勢を明確に示すことです。東日本大震災後、テロ対策などセキュリティーにも厳しい管理責任が問われていますが、東京電力でその信頼を裏切る不正行為が続きました。台湾有事など国際情勢の緊迫から原発の安全管理は一段と厳しい視線にさられています。100%の安全性を保証するのは不可能でしょう。
しかし、万が一の事態に遭遇しても、危険性や事故を最低限に留める対策と努力を明示することが今、最も求められています。電力業界は理解が不足しているから説明するのだという認識を捨ててください。批判や不安に対して受け身にならず、もっと積極的に、能動的に、そしてわかりやすく情報発信したらどうでしょうか。かつて東京電力の副社長は「さまざまな批判が原発の安全性を高める」と断言しました。今でも、その通りと考えています。電力業界は原発の安全性に取り組む姿勢と同様に、あらゆる批判に答え、改善する姿勢をわかりやすく提示して欲しいです。