映画グリーンブックとカトマンズの少年たち 「現金を見せるな!」
映画「グリーンブック」を見ていたら、ネパールの首都カトマンズで出会った少年を思い出してしまいました。米国とネパールは社会構造が大きく違いますが、根底にある貧困が同じセリフを生み出すんでしょうか。「人前で現金を見せちゃダメだ」。そんなの日本でも当たり前。まして海外旅行の場合はなおさらと思う人が多いですよね。でも、1ドル札を財布から抜き出した途端、他人の視線を感じることはあまりないと思うのですが・・・。
グリーンブックは主人公の黒人ピアニストが人種差別が色濃く残る米国南部をコンサートツアーで回り、イタリア系白人の運転手と人種差別を超えた深い友情を築く物語です。映画後半、主人公のピアニストと運転手はコンサート会場でもある高級レストランが黒人の食事を認めないためコンサートをキャンセルした後、黒人が利用する郊外のレストランに向かい食事します。カウンター席から食事を注文する際、いつも通り束ねたドル札を数枚抜いて支払います。
白人優位の米国の上流社会でも富と栄誉を獲得した主人公ならではの仕草として描かれます。しかし、カウンターの向こうに座る黒人数人は札束を見逃しません。運転手の白人も気付きます。食事と即興のピアノ演奏を楽しんだ主人公は運転手と共にレストランを出て車に向かいますが、用心棒役でもある白人運転手は拳銃を夜空に向けて放ち、車の陰に潜んでいた黒人グループを追い払います。
「酒場で現金を見せるな」と自分のボスである黒人ピアニストを叱ります。引用が長くなりました。現金を見せびらかすかのような言動は犯罪を呼び込む。海外旅行の時は特に注意しなければいけない鉄則の一つですよね。
カトマンズで同じようなセリフを言ったのは見た目12、3歳の少年でした。もう30年ぐらい前、2回目のネパール訪問の時でした(毎度、昔話で申し訳ない)。ほぼ10年ぶりのカトマンズ市内を歩き回っていると旧王宮の前で少年が声をかけてきました。
「観光案内してあげる。1ドルで良いよ」。初めてじゃないからいらないよと断ったのですが、彼も小遣い稼ぎをしなきゃいけないだろうし、英会話の感覚を取り戻す相手になるかと考え直してOKしました。少年は予想以上に知識が豊富なうえ、大人ぶっています。