気仙沼BRT 自動運転へ 人口減や過疎化に直面する地方交通の苦境を解決する切り札に
宮城県気仙沼市のBRT(バス高速輸送システム)が自動運転に向かって走り始めます。JR東日本は自動運転による試運転を公開し、12月5日から開始すると発表しました。JRに限らず第三セクターの鉄道会社、バスなど地方の交通体型を支える経営は厳しさを増しています。人口減や過疎化の加速は止まらないうえ、乗客減のみならず運転手など運営に必要な人材確保にも四苦八苦。地方交通の将来はとても危うい状況です。BRTが自動運転に移行できれば、地方の足を守る切り札として期待できます。
地方交通は人口減や過疎化で厳しい経営に
BRTは、かつて鉄道用線路が設置されていた敷地を道路に舗装し直して、専用バスを走らせる仕組み。JR気仙沼線は東日本大震災による津波で線路が流され、2012年8月から鉄道の代行輸送としてバスが運行を開始、BRTに必要な経験と技術を蓄積していました。その後、JR東日本は鉄路復旧に伴う資金の負担が過大になると判断し、復旧を断念。気仙沼線と大船渡線は日本で初めてBRTとして運行しています。
自動運転の対象はJR気仙沼線のうち柳津―陸前横山駅間(宮城県登米市)の4・8キロ・メートル。最高速度は時速60キロ・メートルで、1日あたり上下2本ずつ計4便が運行。専用道に磁気を出す専用機材が埋め込まれ、バスのセンサーが読み取って自動運転を可能にしました。安全運転を徹底するため、運転手が同乗しており、天候事情などで必要な事態になれば手動運転に切り替える体制を加えています。
とても快適で安心感がある
BRTの乗車した経験があります。気仙沼駅から陸前階上駅までです。気仙沼駅を抜けると、鉄路のホームとは違った空間にバス停が立っています。バスの進入路として鉄道駅では見かけないロータリーのような設けられ、始発の気仙沼駅から進行方向にはきれいに舗装された道路が延びているのが見えます。専用道路は自動車が並行して走る一般道とは区別され、ほとんど交差することがありません。交差する場合も信号などで交通の流れは制御されており、とても安心して、しかも快適に乗ることができました。まだ積雪などもなく気候が良い時期だったこともありますが、タイヤで走る電車感覚でした。
BRTは止むを得ない選択の一つと捉えていました。JRグループの中でも経営状況が非常に厳しい北海道で復旧できない路線をみていただけに、運行にかかる投資や経費を抑制できるバスの延長線上にある交通機関と考えていました。
BRTには新鮮な驚きと可能性
しかし、BRTの運行は新鮮な驚きがいくもありました。専用道路が線路と同じように機能しており、一般の自動車による渋滞などの巻き込まれる心配がないことです。専用道路が設定されている安心感もあります。走行速度が安定していることもあって、電車に慣れている乗客の感覚がバス、BRTに馴染めば電車とバスの違和感は消えるのではないかと思います。電車に比べて運行に関するメンテナンスも楽のように思えました。整備や点検面の設備や人材で身軽になり、コスト面でも優位に働きそうです。
自動運転も大きな将来性を秘めています。電気自動車の開発でもよく指摘されますが、自動運転技術の進歩はインターネットや人工知能(AI)の活用で加速度を増しています。自動車産業では完全無人で運転できる技術が開発されており、実用化の道筋は明確に見えてきました。その成果はBRTでかならず活用できます。
日常生活を支えるパワーに
地方交通は地方の生活にとって無くてはならいものです。スーパーや病院など毎日欠かせない移動に加え、時刻通りに移動している交通機関が身近にある安心感は何事にも変えられないものです。
BRTの自動運転が実用化されれば、その成果をバス、タクシーなど地方の足となっている交通機関にどんどん反映してほしいです。日本の地方の生活の常識を変えるきっかけとパワーが十分にあります。