浪江町に戻った輝き、日本の「地方」を照らすか(その2)
町の空気を知ることはとても難しいことです。かつて住んでいた金沢市でも何度も高くて硬い地元の壁に跳ね返された経験があります。日本の地方は外の人を警戒します。田舎育ちの私にはわかります。浪江町でも浪江駅で偶然お会いした方が話していました。浪江町出身でその後お仕事で東京近辺に移り住んでいたそうです。東日本大震災以後、故郷の浪江町の支援・復興に尽力していましたが、「やはり地元に戻って住まなければ、成果が上がらないです」と強調していました。とても納得します。私は外の人、旅の人です。誰でも「トン、トン」と壁を叩くことから始まります。私にとって居酒屋が浪江町の玄関ドアのようなものです。
さて、どのお店に行こうか。浪江町には現在、1600人程度が住んでいるそうです。住民登録が16400人。仕事で一時的に住んでいる人も含めて考えると10%程度に相当します。この需要で居酒屋を開くのは、かなりの勇気が必要です。選ぶお店は限られます。その中で「こんどこそ」という店名の居酒屋がありました。特定の名前を出すのは嫌ですが、店主の思いを強く感じられます。ホテルから駅前に近付いてから見つけるまで30分間程度かかりました。ただ目が慣れたせいか、2回目の国道6号線の歩道は優しかったです。「こんどこそ」は2回目以降に挑む時に使う言葉です。自分自身にとっても夜の浪江町を歩く時、1回目と2回目は違うとよくわかりました。
お店のドアを開くと、カウンター席はほぼ一杯。店奥には個室があるようで、そこから多くの声が聞こえてきます。テーブル席もいくつか埋まっています。「思ったよりも賑わっている。よかったあ」との印象です。料理を食べて、賑わう理由がわかりました。美味しいのです。料理がていねいです。お酒は「獺祭」「十四代」など有名なお酒を並べていましたが、地元の「磐城壽」など福島のお酒を別メニューで紹介しています。もちろん、最初は「磐城壽」から。お燗です。2本目以降はせっかくの機会なので、他の福島のお酒を選びます。それぞれ違いがあってどんどん進むのですが、なんとなく帰りの道のことが心配なので、適当な本数で打ち止めに。
「金は持っているぞ」とポケットを叩きます。
もう一軒、焼酎がおいしそうなお店を目指しました。そのお店のドアを開けたら、お客さんはまだ誰もいないので、カウンター席に座りました。目の前に「侍士の門」がありました。鹿児島県の芋焼酎です。個人的に大好きな銘柄ですが、置いているお店はなかなかありません。「侍士の門をください」と注文します。「ロックですか、お水ですか」と聞かれ、悩みに悩んで「そのままストレート」で頼みました。そうしたら、普通のグラスに7分目まで入れて出してくれました。「ひゃあ、ありがたい」と心の声が喜びます。料理は「一番人気の鳥の唐揚げ」。料理も美味しい。ここで酔っぱらうかなと思っていたら、まだ酔っていないせいか浪江駅前の「スマートモビリティ」が浮かび、タクシーで帰れるならもっと飲めると考えてしました。マスターに「タクシーは呼べますか?」と聞いたら、「ああ、この時間帯はもう無理。コミュニティーバスが巡回しているけれど、もう間に合わない」。