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ふるさと納税1兆円 一度廃止を、みんなで増税・減税を考える時 名産品は小売業に任せましょう

 ふるさと納税が1兆円の大台に迫ってきました。総務省が8月1日に発表した2022年度の「ふるさと納税」は9654億600万円に達しました。前年度実績に比べて2割も増えています。しかも3年連続で過去最高を更新しました。都道府県でみても、兵庫県を除いて46都道府県で伸びています。過去2年間のコロナ禍によって全国の名産品を自宅に取り寄せて楽しむ「巣ごもり需要」が定着しているのが主因です。

特産品販売の弊害が目立ってきた

 しかし、そろそろ辞め時が近づいています。「ふるさと納税」を巡る自治体同士の激しい争奪戦、過剰な返礼品などの弊害が目立ってきたからです。自分たちが住む地域に税金が有効に使われない、本末転倒ともいえる事例が事態も増えています。さらに私たちの目の前には、社会福祉や防衛装備など右肩上がりで増える財政負担が待ち構えています。昭和の高度経済成長期と違って、税収がどんどん増えている時代はもう昔の話。限られた税金を国や地方自治体と一緒にどう割り振るかを真剣に話し合うのか。今は、これが「ふるさと」を大事にする方法になってきました。

 なりよりも全国の特産品を選び、買って喜ぶ制度は、税金業務を扱う国が背負う仕事ではありません。小売業に任せましょう。

小売業ならツルハやニトリ並み

 1兆円の売上高を計上する小売業をざっと見てみました。身近な業種ではドラッグストアのツルハ、家具販売のニトリがちょうどふるさと納税と同じ1兆円目前です。偶然ですが、ツルハもニトリも北海道から全国へ広がった企業です。ふるさと納税の寄付金額の上位も北海道が並びます。1位が宮崎県都城市の195億9300万円、2位が北海道紋別市の194億3300万円、3位が根室市の176億1300万円と並びます。人気の返礼品は都城市は牛肉や焼酎、紋別市や根室市はほたてやカニなどの水産品がそれぞれ人気ランキングの上位を占めます。

 ちょっと強引ですが、ツルハやニトリ並みの販売力を持つ小売り企業が、都城、紋別、根室などの名産品を商材に抱えるなら1兆円はすぐに突破し、2兆円に手が届くのも時間の問題でしょう。

 1兆円は巨額です。弊害は当然、起こります。本来納められる自治体から他の自治体に移動しているのですから、空いた穴が小さいわけがありません。ふるさと納税により住民税などが控除される、言い換えれば納税額が減った上位グループをみると、横浜市の272億4200万円、名古屋市の159億2600万円、大阪市の148億5300万円と大都市圏が並びます。本来なら納められる税金が100億円単位で移動するのですから、自治体の財政事情のみならず住民サービスに大きな支障をきたします。

 それだけではありません。ふるさと納税を増やすために返礼品や販売方法に費用をかけるため、販売経費が負担になっている自治体も出ています。返礼品の調達費用や送料、仲介サイトに支払う手数料など経費の総額は、寄付額の5割以下とするルールが定められていますが、納税額を増やす本来の狙いを思い返せば、もともとおかしなルール設定です。返礼品の対象となる特産品の販売増をめざすなら、ツルハやニトリなど専門の小売り業に任せれば良いのですから。

大都市と地方の格差是正が狙いのはず

 ふるさと納税は2008年5月にスタートしました。もともとの経緯は大企業の本社が集まる東京都などと比べて過疎が進行する地方の税収入は低迷し続け、この格差を是正する狙いがありました。国の制度として格差を埋める地方交付税がありますが、税金を納める国民の立場から見れば、自分の税金がどこに使われているのかがわからないという不安もありました。

 ふるさと納税が制度として成功した背景には、自分が納める税金が有効に活用されてほしいと思いがあります。大都市圏で暮らす地方出身者にとって実家がある地域に少しでも恩返ししたい、あるいは災害にあった地域に貢献したい。税金を支払う負担感を名産品の購入で軽減できたというお得感も見逃すわけにはいきません。

社会福祉、防衛などの財政負担を議論へ

 しかし、現状はだいぶ変わりました。地方の名産品の特売競争に挑むかのような自治体もあります。もう役割は終えたのではないでしょうか。それよりも、私たちが支払う税金がどう使われるのかをしっかりと見据える時です。ふるさと納税で手に入れたカニを食べて喜んでいる横で、防衛予算に必要だからと税金がどんどん増えていく事態はとても見逃せません。社会福祉、防衛に限らず自身が住む自治体の予算も含めて税金の使い道、納め方をちゃんと議論をしましょう。

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