• HOME
  • 記事
  • Net-ZERO economy
  • 憧れのニセコがホワイトアウト? 外国人スキー・スノボー客離れが始まり、旭川へ滑走

憧れのニセコがホワイトアウト? 外国人スキー・スノボー客離れが始まり、旭川へ滑走

  「ここ数年、外国人の乗客が増えていますね。ニセコから流れているみたいな印象です」。旭川空港の休憩ラウンジのスタッフと雑談をしていたら、ちょっと首を傾げながら教えてくれました。ニセコは今や、世界のスノーリゾートとしての地位を確立しています。日本のスキーリゾートといえば、ニセコが筆頭に。にもかかわらず、スキーやスノーボードを楽しむ外国人観光客はニセコを通り過ぎて旭川空港をめざす流れが広がっているようです。あのニセコからなぜ旭川へ?不思議に思うのも当然です。

外国人スキーヤーが旭川空港で増え始める

 毎冬、東京から北海道のスキー場に行くたびにスキー・スノボー客のニセコ離れを体感します。富良野のスキー場は以前から欧米・アジアのお客さんが増え始めていますが、旭川市から80キロほど北に位置する名寄市のピヤシリスキー場でも2年前からオーストラリア人のスキー客を見かけ、年々増えています。スキー場中腹のログハウスでレストランを運営するご主人は、「お客さんの半分は外国人って感じですね」と話します。

 今冬はアルバイトの若者を採用しましたが、バイト君は日本語ができず英語しか話せません。ご主人は夏、石狩湾に面した町でサーファーを対象にした民宿を経営しています。これまでの経験から、名寄市にも冬はオーストラリア人ら欧米のスキーヤー・スノーボーダーが増えると直感したようです。

 旭川空港から手軽に雪質が良いスキー場に行けるのは事実です。バスで1時間乗れば、富良野のスキー場に着きます。旭川市周辺にもカムイスキー場などいくつもあります。観光施設も豊富です。旭川市内にホテルは多く、おいしい北海道の農水産物を楽しめる飲食店もたくさんあります。なによりも新千歳空港に比べて距離が近い。

 その旭川市から北に向かって80キロ離れた名寄市のピヤシリスキー場は「雪質日本一」を大きな看板に掲げるほど雪質の良さは知られています。旭川市からJRで1時間半かかりますが、南半球から日本の雪に憧れて飛び立つオーストラリア人からみたら、富良野もピヤシリもわずかな誤差に過ぎません。

ニセコは50年前から憧れ

 本州のスキーヤーにとってニセコは憧れ。私がニセコを初めて訪れたのはもう50年ぐらい前。冬、北海道を周遊した時に倶知安のユースホステルに宿泊しました。小さい頃から「冬はスキー」という生活を過ごしていましたから、あのニセコに立ち寄りたかったのです。同室のお兄さんはスキー場から帰ってきたばかりでしたが、「やっぱりニセコで滑っているスキーヤーは上手。本州でスキーを覚えた自分には、あの中で滑るにはちょっと勇気がいる」と率直な感想を話していたのを覚えています。

 その後もニセコに通いましたが、2000年代に入ってオーストラリア人を中心に外国人のスキーヤー、スノーボーダーが増え始めます。オーストラリアからの誘致に力を入れたロス・フィンドレーさんに何度も会い、お話を聞きましたが、「団体で旅行する日本やアジアと違い、オーストアリアや欧米は個人で旅行する。ニセコは新千歳空港から遠いけれど、素晴らしい雪を求めて世界から飛んでくる」と確信していました。

 その通りになりました。ニセコのひらふスキー場のレストハウスは当時でも外国人客でいっぱい。空いている椅子に座って良いかを英語で確認するのが当たり前になっていました。その隣に座ったご夫婦の会話が凄かった。「欧州や南米のリゾートを経験しているが、ニセコはちょっと違う。とても良いね〜」とベタ褒め。

潮目の変化は2010年代

 潮目が変わったのは2010年代に入ってから。アジア系のスキー客が増え始めると、ニセコの雰囲気が変わり始めました。ニセコは積雪量と雪質の素晴らしさを求めて世界中のが訪れますが、訪れるスキーヤーやスノーボーダーは、巧みに滑る自らの姿をイメージして滑走するのがパターン。つまり、自分の技量に惚れ込むスキーヤー・スノボーダーの典型です。

 ところが、アジア系のスキー客は初心者がほとんど。ゲレンデ内のマナーなどで顔をしかめるスキーヤーやスーボーダーが目立ち始めます。世界から高く評価された結果、スキーやスノボーに関心はないけれど、ニセコを訪れたいという観光客も増えます。ホテルなどが不動産の優良投資案件として注目を浴びたこともあって、高級ホテルやコンドミニアムが相次いで建設されます。当然の結果ですが、宿泊費用は高騰します。これまでのニセコファンは弾き出されてしまいます。

高級リゾートから弾き出される

 ニセコはスキーやスノボーを楽しむリゾートというよりも、高級リゾートの雰囲気を味わうエリアに変容し始めているようです。その変容を敏感に気づいた外国人のスキーヤー、スノーボーダーが旭川空港へ向かい始めている。これが現況なのでしょう。きっと加速するのでしょうね。

 ニセコが心配です。あれだけ素晴らしいスノーリゾートからスキーヤーやスノーボーダーが離れていくなんて信じられないですし、もったいない。

関連記事一覧

PAGE TOP