島根原発 、松江市で再稼働できるなら 東京でも原発建設できるんじゃない?
中国電力が12月7日、島根原子力発電所2号機を再稼働しました。所在地は松江市の日本海側。もともと八束郡鹿島町でしたが、2005年に松江市と合併したため、以後は日本で初めて県庁在地にある原発となりました。原発立地のほとんどは福島県や福井県など大都市圏から離れた地域でしたが、島根原発が安全対策の強化で再稼働できるなら電力を大量消費する東京など大都市圏でも建設可能ではないか。むしろ、建設すべきではないか。原子力政策の発想を転換する時です。
島根原発は関西電力の美浜、東京電力の第1福島に続き、全国で3番目に稼働した原発です。1号機は1974年、2号機は89年に稼働しました。2号機は東日本大震災の福島第1原発事故後、安全審査を受けるため、翌年の2012年1月に停止しており、運転開始は13年ぶり。1号機は2015年に廃炉決定しています。
電源確保やベントなど安全対策は強化
原発は松江市の中心部から距離はわずか8キロ余り。避難計画の対象となる30キロ圏内に45万人が住んでいます。それでも、再稼働を認められたのは万全な安全対策。工事は12回も延期を繰り返し、10月に終了。地震や津波などの災害を想定した緊急時の電源確保、冷却設備など64項目を強化しました。耐震設計で想定される揺れ(基準地震動)は820ガル(加速度の単位)に引き上げ、津波の被害を抑える防波壁のかさ上げ、さらに配管の耐震性能、電源ケーブルの耐火性能を高めたほか、外部電源が使えない非常時に備え、ガスタービン発電機を高台に設置しています。万が一、格納容器に放射性物質が充満しても拡散を抑えるフィルター付きベントも採用しました。
災害時などに備えたハード面が安全基準をクリアしたからといって、原発運転ができるわけではありません。運転管理する中国電力そのものに対する信頼が必須です。2年前、松江市内を歩いていたら、「島根原発 ここより8・5キロ」という看板を掲げた住宅を見つけました。原発のすぐ近くで多くの市民が住む不安を象徴しているようでした。
中国電力でもう20年以上も広報活動の現場に立っている人物を知っています。長年、原発の町に住み、電力会社への不信、不満を払拭する努力を続けています。その努力を目撃しているだけに、島根原発2号機が再稼働にたどり着いた事実には正直、感慨深いものがあります。
「大量消費の東京で原発」は以前から
ふと浮かびました。松江市で安全に運転できるなら、東京でも原発建設が可能になるのではないか。東日本大震災から10年以上もかけて政府、原子力規制委員会、原発の地元自治体などが安全管理を根底から議論し、再稼働への道筋を探ってきました。福島原発と同じ沸騰水型軽水炉の再稼働は東北電力の女川原発2号機が11月に起動しており、島根原発2号機が続くことで再稼働に対する信頼は回復したと見て良いはずです。
かつて「原発が政府の言う通り安全なら、東京で建設したらどうか」という意見がありました。福島など東北地方の原発で発電した電気は首都圏に送電され、消費するからです。不安が拭えない原発を人口が少なく、地域経済が弱い東北や北陸の足元を見て原発を建設していると考えたからです。
電力会社の反論は明快です。東京に建設しない理由として「用地取得代が桁外れに高額になる」「原発関連施設を建設する広大な用地を確保できない」などを挙げていました。もちろん、1000万人の大都市圏、さらに地質・地盤などを考慮する必要がありますが、万が一の事故があった場合、甚大な被害が広がるのは素人でもわかります。
しかし、県庁所在地で原発を再稼働できるなら、東京など大都市圏でも可能じゃないのか。無謀な問題提起とは思えません。原子力規制委員会が築き上げた安全基準は、周辺自治体の避難計画なども含んでいます。経済の安全保障を掲げて半導体産業の復活に向けて兆円単位の資金を投入している日本政府です。カーボンニュートラル、エネルギーの大半を輸入に依存する資源小国として思い切った原発政策の転換があってもおかしくありません。原発が必要なら、兆円の資金投入に躊躇することはありません。
小型モジュール炉など発展途上だけれども
すでに小型で安全な原発が開発が進んでいます。「小型モジュール炉(SMR)」と呼ばれ、出力が30万キロワットと従来の3分の1程度に抑えられています。部品として組み合わせるモジュールの発想で生産し、建設地で組み立てるわけです。一戸建て住宅で使われている工法と同じです。安全対策も規模が縮小するだけあって、管理が容易になるといわれています。まだ発展途上の技術ですが、ビル・ゲイツ氏も後押ししています。そう悪い選択ではないでしょう。
なによりも、電気を大量消費する地域で原発が運転する意味がとても大きい。東京都は太陽光発電を戸建て住宅に義務付けする政策を開始しましたが、カーボンニュートラルを実現するためには東京都民が消費する電気は自ら発電する考えを選んだからです。日本にとって原発もその重要なカードです。
ぜひ東京でも原発を!?再び議論する価値は十分にあります。