南太平洋の島嶼国は重要なパートナー ラグビー以外でもっと知って欲しい

 9月に開催するラグビー・ワールドカップ(W杯)が近づき、その前哨戦として日本代表がトンガ、サモア、フィジーとテストマッチしました。いずれも南太平洋の島嶼国で、ニュージーランド、オーストラリア、日本など世界に優秀なラグビー選手を送り出しています。もともと強靭な肉体を備えた民族ですから、日本の相撲で活躍していた小錦はじめ多くの日本人にも馴染みが深いはずです。

南太平洋の政治・経済も考えるきっかけに

 ただ、ちょっと残念。もっとラグビー以外の話題についても関心が広まって欲しいです。W杯開催がきっかけですから仕方がないのですが、南太平洋と日本の深い政治・経済についても多くの人が触れ、考える場が増えることを祈っています。

島嶼国の産品

 先日、東京のJR御茶ノ水駅に近い太平洋諸島センターに立ち寄りました。日本と島嶼国14か国のパイプ役を果たす国際機関です。事務所があるフロアには、各国の産品を展示するコーナーがあり、以前も訪れたことがあります。大好きなココナッツミルクやココナッツを素材にした石鹸があれば参考に見たいと思い付きで寄ったのですが、展示コーナーは防犯もあって入り口のドアは鍵が締められ、気軽には入れません。事務局のスタッフにお願いしてドアを開けてもらい、コーナーを見て回りましたが、事務局のみなさんには失礼ですがちょっと残念な展示でした。樹皮を素材にしたバッグや木彫などユニークで素晴らしい製品が多くあるにもかかわらず、他の展示品の陰に置かれたりと目につきません。美味しい食品もたくさんありますが、多くの人の目に触れる機会がほとんどありません。「もったいないなあ〜」とため息が出ます。

日本、オーストラリアは経済支援などで協力

 もうだいぶ昔になりますが、オーストラリアのシドニーを拠点に南太平洋を駆け回っていた時がありました。すべての島嶼国は回れませんでしたが、政治経済を中心に取材しました。日本の読者にとってほとんど関心がないため、担当部長やデスクから「そんな国に行って記事になるのか?」と嫌みを言われるのは2度、3度ではありませんでした。

 地球儀を見てください。ユーラシア大陸、アメリカ大陸、オーストラリア大陸、南極などが大きく描かれていますが、太平洋は南も北も水色に染まっています。島があってもゴマ粒みたいにしか見えません。一見、波打つ海原にしかみえない水色の地図部分にも人間が住んでいます。歴史や文化などさまざまな営みがあり、日本人にとっても見逃すことができないニュースがあります。

 最近では地球温暖化による海面上昇でしょうか。キリバスやツバルなどは海面上昇で国土が海面下となり、住環境はじめ大きな影響を受けています。日本でも異常降雨や猛烈な台風などで地球温暖化の影響を身近に感じるようになりましたが、島嶼国は存続の危機につながっています。島嶼国の窮状は明日の日本です。

トンガのがぼちゃ PNGのコーヒー豆、うまい

 農産物でもお世話になっています。トンガのかぼちゃは日本の秋から春にかけて輸出され、ほかほかのおいしい煮付けとなって食卓に賑わいをみせてくれます。パプア・ニューギニア産のコーヒー豆がとてもおいしいのを知っていますか。もう30年以上前から同国産のコーヒー豆を買い、ペーパードリップして飲んでいますが、甘くてコクがある味わいは飽きません。他の有名産地に比べて割安なので、ずっと買い続けています。いまでも途上国支援の一環としてフェアトレードと銘打つ流通企業がありますが、コーヒー豆の実力で十分に勝負できるものです。

 安全保障面でもその重要度は増しています。7月末に米国のオースティン国防長官がパプアニューギニアを訪れ、同国との防衛協定について説明しました。海軍基地や空港、港湾など6カ所を少なくとも15年間、共同利用することで両国が合意しているそうです。中国が南シナ海から南太平洋地域への影響力を拡大しており、パプア・ニューギニアの東にあるソロモン諸島と治安維持協定を結び、深い外交関係を構築しています。赤道近辺の南太平洋の緊張度が増していくのでしょうか。

ソロモン諸島の木彫

安全保障はより補強へ

 日本はオーストラリア、米国とともに島嶼国に対し経済支援などを通じて良好な関係を築いていますが、台湾有事も睨んで太平洋の安全保障戦略を見直し、補強する動きが広がっています。

 もちろん、安保問題は机上の空論で終わって欲しいものです。ソロモン諸島の木彫はすばらしいですよ。パプア・ニューギニア産の美味しいコーヒーを飲みながら、島嶼国で収穫されたココナッツミルクや粉を使ったお菓子を食べ、ワニと蛇が睨み合う木彫を眺めて悦に入っているのが一番の幸せですから。

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