1ドル130円

1㌦130円とインフレ 無口な黒田さん、饒舌な白川さん、棒立ちする財務省

白川さん、自らの書籍の英語・中国版の発表で久しぶりに登場

 黒田さんとは対照的に余計な口数がないと思われた白川さんは最近、饒舌です。3年ほど前の2018年10月、自身の経歴と日銀総裁時の経験を詳細に書いた「中央銀行」(東洋経済新報社)を出版しました。昨年から英語版と中国版が相次いで発表されたのを機に再び登場し始めています。

 「中央銀行」は金融政策や日銀に対する持論を語るとともに、世界に広まっている日銀政策の誤解を解きたいとの思いから執筆したそうです。、英語・中国版が発表されるのも、白川さん自身の強い意向を反映しているようです。新聞などで久しぶりに登場して自らの考えを説明するのをみていると、自著「中央銀行」で指摘する日銀のミッションをようやく実践しているのかと受け止めています。

日銀は社会から共感を得る努力が不可欠

 なぜなら「中央銀行」では総裁の役割として「社会からの共感を得ること」と強調しています。日銀総裁時で残念と思ったこととして「多額の不良債権問題の持つ意味について早い段階で理解が得られなかったことである」を挙げ、その反省として中央銀行は行内で培ったリサーチや見識を広く政策提言する努力をすべきだと強調します。

 「日銀の金融政策」の同義語は普通の人には「わけわからない」という意味になります。白川さんは「普通の人」にもわかってほしいと考えていたのだと知り、ちょっと驚きました。もっとも、日銀総裁を退任した後に「社会との共感を得ること」が日銀総裁のミッションと説かれても、正直拍子抜けしますが・・・。

 もうひとつの日本の財政・経済政策を主導する主役である財務省はどうか?もう棒立ちしているとしか思えません。前任の麻生太郎財務相は愛読書が「ゴルゴ13」というだけあっって、鋭い目つきに切れ味の良い口調はおもしろいのですが、財務大臣の見識と説明力が不足してしました。今の財務大臣は、え〜と誰だっけ?

 私たちの目の前には日本経済に打撃を与える多くの不安材料が待ち構えています。1ドル=130円になるかどうかよりも、世界的なインフレと円安が二重になって襲いかかり、不況と物価上昇が同時に起こるスタグフレーションの可能性もあります。無口な日銀、棒立ちする財務省のままでは国民はどう対処して良いのか困ってしまいます。

沈黙はノー、饒舌こそゴールド

 黒田さんは2023年4月で任期満了を迎え、総裁10年間を終えます。あと1年間、何を語ってくれるのでしょうか。前任の白川さんのように総裁退任後、自身の10年間を振り返って金融史に多くの教訓を残すのも見識の一つですが、世界史、日本史に残る2022年、日本の国民に向かっていつもの黒田節で饒舌に語ってほしいです。

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