日本に警鐘を鳴らすジム・ロジャーズ氏、最近まで北朝鮮とロシアの投資を推奨
世界的な投資家として知られるジム・ロジャーズさんが日本の未来について警鐘を鳴らし続けています。新著を発売したこともあって、メディアに相次いで登場して沈滞し続ける日本経済を憂い、その未来を透視します。少子高齢化による人口減少、先進国で頭抜けた財政赤字、急速な円安などを指摘し、沈滞から沈没へ向かう日本の未来を予言します。実はつい最近までは北朝鮮とロシアを有力な投資先として推奨していました。今のロシアに投資するのは相当な勇気が必要です。状況判断を素早くできるのが腕利き投資家の底力。ここに来て再び鳴らし続ける日本への警鐘を素直に聞いてよいのか、あるいは逆説的に激励されていると理解して良いのか。迷います。
親日家で隅々まで実情を詳しく知っている人です
ジム・ロジャーズさんはもともと大変な親日家です。スキーが好きなので、ふだん生活するシンガポールから家族とたびたび日本へ来ています。私が勤務していた経済ニュースを放送するテレビ会社でも来日した際には番組に出演していただくなどとてもお世話になりました。
多くの方はご存知だと思いますが、投資家としての評価はずば抜けています。ジョージ・ソロスさんと一緒に「クォンタム・ファンド」を設立して、ヘッジファンドによる大胆な運用モデルの先駆けとなりました。もちろん、巨額な資産を手にしています。すでにヘッジファンドから手を引いており、世界中を回りながら多くの著作を発表していますが、世界経済の行方や今後の投資に対する慧眼は相変わらずで、ロジャーズさんの注目度の高さは他を圧倒します。
親日家として日本を暖かい目で見ているのですが、日本の政府の政策や企業を見つめる目は厳しいまま。バブル経済崩壊後、泥沼に足を取られ、改革に動こうとしない状況を悲しみ、最近は諦めているようです。10年以上も前から出演したテレビ番組でも、日本経済に投資する気持ちはないことを明らかにしており、最も魅力を感じる投資先として北朝鮮とロシアをあげていました。
韓国と北朝鮮の間で続く緊張関係は変わり、統合の道が開かれるはずと読んでいました。北朝鮮は豊かな資源がありますから、観光も含めて半島に注がれる投資は膨らむと説明します。現在より良くなる可能性ばかりと見ていました。ロシアも石油や天然ガスの資源国としての将来性をにらんで債権や株式も買い入れており、番組の視聴者に対しても購入した方が良いと勧めていました。視聴者の一人だった私は、ロシアの株式や北朝鮮の不動産などはどうやって購入するのか、あるいはできるのかを頭の中が???になったのを覚えています。
投資判断は自分の目で確認して頭で決めるもの
もっとも、ロジャーズさんの発想は、投資とは低く評価されているものに注目して、その成長性を判断することにあるようです。北朝鮮やロシアと並んでアフリカや南米の国名をあげて投資先としての魅力を語っているぐらいですから。言わんとすることは、投資の常識に囚われるなということでしょうか。自分自身の目で確認し、頭で判断する。納得したら投資する、納得できない場合は何もしない。個人投資家の姿勢は、自分の判断で考え、他人に左右されるな。この信念に尽きると理解しています。
ところが日本経済への警鐘はもう10年以上も鳴らし続けています。最新の著書はじめ発言をみていると、日本の問題点はすべてわかっているのに解決に向けての努力を怠っていると考えているようです。その通りです。すでに投資先としての魅力を感じていないと話し続けており、その姿勢は変わっていません。
しかし、改めて直近の発言を考え直してみました。10年以上も日本経済がダメと言っているのですから、日本を買うどころか日本売りを推奨してきました。2022年に入って急加速しているドル円相場が如実に表しています。24年ぶりの1ドル140円台は通過点かもしれません。
日本売りは日本買いかも
果たしてそうか。多くの人が「日本売り」と考えている時こそ「日本買い」のチャンスなのかもしれません。投資の基本である安値買いです。底値を拾えば、これから先は上がるだけ。言い換えれば儲かるだけ。世界中から東京や北海道の不動産を購入する資金が集まっています。札幌のマンション価格は10年前を考えると、驚くばかりです。発表されたばかりの地価調査でも住宅地の上昇率トップテンは北海道が占め、その上位は北広島市が名を連ね、30%近くも上昇しています。北海道日本ハムファイターズの新球場が来年オープンするのが要因といわれていますが、北海道資本の力で土地を取得しているわけではありません。
鳴らし続けた警鐘は今、実は朗報?
ポンド危機でイングランド銀行を負かしたといわれたジョージ・ソロスさんと並ぶジム・ロジャーズさんです。10年以上も鳴らし続けた日本経済の警鐘は今、実は朗報と受け取った方が良いのかもしれません。そんな気がしないでもないです。