北海道・ふるさとを創る1サンピラーは突然現れ消えてしまう 至宝は目の前に
ロシアによるウクライナ侵攻のニュースは悲惨な戦争の現実とともに、私たちに「ふるさと」の大切さを改めて教えてくれます。「どこに住んでいようが、あの地に戻れば心が休まる」。父親の転勤や自らの仕事で何回も住所を変更してきました。生まれてからずっと同じ地域に住む人を羨ましいと思うとともに、その幸運を守り続けていることに敬意を覚えます。ウクライナなど世界の各地域で故郷が破壊され、家族や親しい人と離れ離れになってしまう悲劇が繰り返されています。とても遠い彼方の話題と受け止めることはできません。
「ふるさと」の大切さを改めて痛感
最近は北海道を旅行するたびに「ふるさと創造」という言葉が湧き出てきます。札幌や旭川以外の市町村はこのままでは消滅してしまいかねないとの危機感が漂っています。小さい頃に育った北海道を50年以上も前に離れた後も、毎年のように訪れ、道内の各地を回っています。2022年1月は旭川、名寄、オホーツク沿岸、富良野とバスと電車を乗り継いで訪れました。沈滞していた旭川がなんとなく力が戻っている印象を受ける一方、オホーツク沿岸の市や町が懸命に観光と移住に力を入れる姿勢に改めて驚きました。
なにしろ道内の3分の1は65歳以上が住民の過半を超える限界集落です。北海道の人口減のスピードは全国最速といわれ、190万都市の札幌市にヒトが集中しています。札幌市は確かに住みやすい街です。市内にスキーやスノーボードが楽しめるゲレンデがありますし、買い物やレストランは東京に出かけなくても十分に楽しめます。
時折、ヒグマが街中を歩き回ります。北海道大学の先生は「人口100万を超える大都市でヒグマなど野生動物と共生している街はありません」と説明しますが、住民にとって良いことなのか災いなのか。こればかりは判断しかねます。
北海道は札幌市に人口が集中し、残る3分の1は限界集落に
繁栄する札幌を裏返した状況が他の市町村に直撃します。稚内市に近い枝幸町や浜頓別町の路線バスに乗っていると、「これから札幌市の病院に行く」との会話が聞こえてきます。大雪でJRがストップしている日でしたら、これから路線バスを乗り継いで半日かけて札幌へ向かうのです。定期的に通院しているようですから、体への負担のみならず交通費の負担もかなりです。路線バスの窓から閉校した校舎を見かけることもあります。