• ZERO management
  • カーボンニュートラルをZEROから考えます。
  • HOME
  • 記事
  • ZERO management
  • 自動車産業が消える⑦ガソリンスタンドは消えるの? 小売り・サービスの新たな進化系へ

自動車産業が消える⑦ガソリンスタンドは消えるの? 小売り・サービスの新たな進化系へ

 電気自動車(EV)が到来すれば、当然ですがエンジン車に燃料を販売してきたガソリンスタンドの将来が不安になります。

ガソリンスタンドはピーク時から半減以下に

 ガソリンスタンドはすでに過当競争を解消するため、件数は減っています。1994年の6万件超をピークに2022年には3万件を切り、5割以上も減少しています。1996年からガソリンの輸入が解禁され、価格競争が激化。ガソリンなどを精製する石油元売り会社が収益を確保するため、ガソリンスタンドの整理淘汰を加速した結果、ここ20年以上は営業停止や廃業が続いているからです。

 EVの本格的な普及は、将来の不安から事業承継がさらに難しくなるのは確実です。ただ、ガソリンスタンドは街や交通の要所にあるため、災害時の拠点としての役割も担っています。生活必需品の運送、集荷などの貢献を考慮すれば、ガソリンスタンドが消えて無くなるデメリットも忘れず、ガソリンスタンドをいかに活用するかを真剣に考える時期を迎えました。

コンビニ、ラーメン店、郵便局など併設

 もちろん、ガソリンスタンドの経営者も事業存続に努力しています。ガソリンや軽油など燃料以外にコンビニエンスストア、ラーメン店などを併設する店舗を何度も見たことがあると思います。誰もが行き来できる立地の良さから郵便局、宅配拠点などを設置する動きも広がっており、ガソリンスタンドの役割は本来の燃料販売を離れ、「地域の便利屋さん」的な使命を帯びてきました。

EVスタンドと道の駅

 EV時代に向けてEV向け給電スタンドの併設も急速に加速しています。ガソリンスタンド以外の道の駅や役所など公共施設でも増えており、給電するEVを見かけた人は多いはずです。

北海道など雪国ではEVへの不安が強い

 ただ、降雪が多い地域ではEVに対する信頼性がまだ定着していません。ガソリン車からEVへ乗り換える動きは鈍ると予測する向きもあります。北海道の札幌市でガソリンスタンド店を運営する店長が説明します。「充電時間が長いうえ、降雪時にバッテリーなど電装関連の部品がどのくらい耐久性があるのかを心配するお客さんが多い。猛烈な吹雪で目の前が全く見えなくなるホワイトアウトの時にバッテリーがゼロとなったら、生命に関わりますから」。

EV購入者の半分は再び購入する調査も

 EVを購入したユーザーを対象にしたある調査によると、半数以上が再び「電気自動車を購入する」と答えていました。継続してEVに乗る人が多いことが分かります。これに対して「次回はガソリンやハイブリッドに買い換えたい」と考える人も40%近い数字です。「充電時間が長い」「給電スタンドが少ない」「価格が高い」などが理由です。北海道や東北など降雪が多い地域はゆっくり普及するでしょうから、ガソリンスタンドの業態転換も地域間で様々なパターンが出来上がっていきそうです。

走行中も充電できるシステムも

 しかし、バッテリー充電の制約が解消される技術も出てきました。EVが道路を走行している間に充電できるシステムの実用化が見えてきたからです。すでにわざわざ車から降りて給電プラグに差し込まなくても、駐車場に止めておくだけで充電できるシステムはできあがっています。

 システムのイメージはこうです。交差点やドライブスルーなどで車が停止したり徐行したりする地点に給電システムを埋め込む。あるいは高速道路に充電できる車線を設定する。EVのドライバーはクルマを運転しているだけで充電できるので、「給電時間が長い」「給電スタンドが足りない」といったEV特有の課題にイライラすることがなくなります。給電頻度や蓄電時間の負担が軽減できれば、バッテリーそのものを小型化、軽量化できます。EVの開発・走行性能を根底から変えるきっかけになるかもしれません。

小売り・サービスの新たな進化系へ

 既存のガソリンスタンドでは太陽光発電を利用して店舗を運営するチェーンも現れています。地球温暖化を招くCO2を排出するガソリンなど化石燃料を販売するイメージをなんとか払拭しようとしています。新たに登場する給電システムも取り込み、ガソリンも電気も販売し、地域・住民が必要とするサービスを提供する。いつものようにクルマが煩雑に出入りする風景は変わりません。小売り・サービス業の新たな進化系が誕生するのでしょう。

関連記事一覧