バルミューダ 今度は小型風力発電 電力の地産地消へ挑戦 頑張って
まずは、へこたれない挑戦心に脱帽します。
その挑戦心に脱帽
家電メーカーのバルミューダが小型風力発電機に進出します。2021年にアップルやサムスンなどが支配するスマートフォンに進出しましたが、わずか1年半後の5月に撤退を表明。それから3ヶ月後に今度は風力発電に挑みます。今回の風力発電はバルミューダの経営から見て、スマホよりずっと筋が良いと考えています。自社の技術の延長線上にあるうえ、小型風力発電はスマホと違ってこれから新しく創造する市場です。成功するチャンスは十分にあります。しかも、地方で発電した電気を消費地の大都市圏へ送る日本の需給構造を改め、消費地で発電する「電力の地産地消」への転換にも貢献します。とても期待したいプロジェクトです。
バルミューダの発表によると、大ヒットした扇風機「Green Fan」の設計思想を活用します。二重構造の羽根を採用した結果、従来品の約1割のエネルギーで自然に近い風を再現することに成功しました。2010年に発売した扇風機は4万円近い価格であるにもかかわらず、高い人気を集めています。同社は少ないエネルギーで風を起こせるなら、逆に小さな風でも発電に必要な大きなエネルギーを引き出せると考えたそうです。
扇風機の設計思想を風力発電に
バルミューダは数百種類の発電用の羽根(タービン)を作っては改良し続け、2023年秋に実証実験に移ることにしました。実証実験が成功して扇風機並みの小型で高効率、静音性と安全性に優れた風力発電機が実用化できれば、設置場所の範囲は一気に広がり、身近な発電機として利用できます。バルミューダは「さまざまな生活家電を作ってきましたが、今回『電力を使う』だけでなく『作る』領域へ、挑戦の幅を広げていきます」とHPで強調しています。
現在、日本の風力発電は大きな壁に直面しています。高効率の発電能力を引き出すため、羽根の大型化と高速化を進めた結果、大型の羽根が高速に回転することで、耳障りのする騒音を引き起こすほか、鷲や鷹など大型な鳥も傷つける例が増え、住環境や自然環境の破壊を招くとして批判を浴びています。設置する候補地も洋上、海岸、丘などに限定されてきました。
太陽光のように設置場所が広がる
目論見通り、風力発電の小型化と低騒音化に成功すれば、現在の太陽光発電パネルのようにビルや住宅などでも設置が可能になります。太陽光発電は悪天候の場合、発電できませんが、風力なら悪天候でも問題ありませんし、むしろ効率が上昇するかもしれません。太陽光発電と風力の併用が可能になれば、天候に左右されがちな自然エネルギーを使った発電はかなり使い勝手が良くなります。
電気の大量消費地、大都市圏が必要な電気を地元地域で賄う「地産地消」が現実になるかもしれません。1970年代から小規模な発電所を分散設置して、消費地域で需給調整するソフトエネルギー・パスという考え方が唱えられています。発電所といえば原子力や火力など大型の施設を思い浮かべるはずです。立地や事業コストなどを考慮すれば、どうしても大都市圏から離れた地方が最適地として建設されてきました。東日本大震災による東京電力の福島第一原発事故を思い浮かべれば、すぐに理解できるはずです。
原発などに頼らず小規模で分散する発想
しかし、原発など大型の発電所を新たに建設するのはもう現実的ではありません。生活や企業活動に欠かせない電気をいかに確保するか。従来の発想を転換する時です。東京都が戸建てに太陽光発電の設置を義務化し、批判を浴びていますが、この施策がよいかどうかは横に置いて自分たちが消費する電気を遠い地方から持ってくるのではなく、消費する地域で発電する発想が大事です。バルミューダの風力発電の研究開発は、地産地消の流れを支えるはずです。