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兆円利益はいつまで続く? 未来が見えない絶好調企業と日本経済 未来投資が急務

 三菱商事、三井物産、トヨタ自動車、ソニー。2023年3月期決算の発表が始まり、1兆円を超える利益(営業利益を含む)を計上する絶好調企業が続出しています。理由はさまざまですが正直、実力なのか幸運なのか。利益は企業の稼ぐ力を示しているわけですが、万が一幸運に左右されるなら企業経営の良し悪しを測る目安として良いのか。沈滞から抜け出せないでいる日本経済の背中を押してくれるパワーを持ち合わせていれば頼もしいのですが、どうもそこまで期待はできそうもありません。

商社は初めて1兆円超え

 やはり筆頭は商社でしょう。三菱商事、三井物産は初めて純利益で1兆円を超えました。大手の総合商社7社のうち6社が過去最高益を達成したというのですから、凄いの一言です。背景には資源価格の上昇や円安が大きな要因として控えています。資源高はもともと値上がり傾向にありましたが、ロシアによるウクライナ侵攻が引き金となって一気に噴出しました。

 円安は日本と欧米の金利差が主因です。ともに食料輸出国であるロシアやウクライナが戦争状態に入ったため、世界的な食料不足の懸念が高まり、世界的なインフレが現実化。欧米各国はインフレを抑えるため、中央銀行が金利を引き上げ続けます。これに対して日本銀行は10年以上も続ける金融緩和策を修正しないため、日米欧の金利差が拡大、一時150円台にまで円が売られる事態を招きました。

資源高と円安に依存

 三菱商事も三井物産も事業の主力はエネルギーや食料など。世界経済が資源高となり、しかも輸入する際の為替相場が円安に思い切り振れたら、利益はどんと上がります。三菱商事の純利益は前年度比25・9%増の1兆1806億円、三井物産は23・6%増の1兆1306億円。大幅な増加率を記録しており、資源高と円安の威力の凄さがわかると思います。

 兆円単位を継続するトヨタ自動車はどうでしょうか。営業利益は9・0%減の2兆7250億円。世界経済の情勢や半導体不足など諸情勢を考慮すれば、さすがの決算内容です。それよりも今期2024年3月期は日本企業の未体験ゾーンである営業利益3兆円が目標です。ソニーも前期の2022年3月期で営業利益が初めて1兆円を突破、23年3月期は2%減ながらも1兆1800億円を確保し、トヨタ同様に兆円単位の常連組に入るのでしょう。

ホンダも今期、1兆円へ

 今期見通しでいえば、ホンダは初めて2024年3月期で営業利益1兆円を達成する見通しを明らかにしました。前年度比19・1%増です。コロナ禍の終息に半導体不足の解消、原材料高騰による価格引き上げなどで利益は押し上がると予測しています。

 兆円単位の利益を計上する超優良企業が続出するのは心強い。企業がしっかり稼がなければ、従業員の給与も取引先の支払いも増えません。これが日本経済の底力となって次の成長力を呼び覚まし、経済成長も年収もここ数十年ゼロ、つまり横ばいで足踏みを続ける日本を元気にしてくれます。

主導権は欧米、中国に

 ただ、商社や自動車、電機など日本経済の基幹産業の活力が再び上向きになった表れと手放しで喜べるわけではありません。商社の三菱、三井もみても、資源の主導権は欧米に握りられたまま。事実上三菱、三井が主導して事業化したロシア・サハリン産天然ガスの輸入問題が炙り出したように、世界情勢の変化で風前の灯火となる恐れがわかりました。

 自動車も同じです。トヨタは13年ぶりの新社長誕生を契機に電気自動車(EV)の出遅れを取り戻すべく、積極的にEVを投入することを明らかにしています。ホンダも2040年をターゲットに新車すべてをEVに切り替える方針を明らかにしています。

 しかし、EV市場は政府の支援を背に受ける中国メーカーが疾走しているほか、米テスラや欧州の自動車メーカーが先行しています。日本の自動車メーカーはこれから追いかける立場。目論見通り進んだとしても、これまで通り稼げるかどうか危うい。

 電機はすでに主導権は失っています。インターネットなどの情報技術のインフラはグーグルやアップルなど米国企業に握られ、半導体の未来は英国アームの手中にあります。日本の電機メーカーは欧米の掌の上でビジネスする運命にあるのが現況です。

どんどん未来に投資して

 何事も楽観的に考えるタイプの人間ですが、日本企業の収益力の予想に関しては悲観的な見方に傾いてしまいます。1丁、2丁とお豆腐を買う時のように1兆円、2兆円と数字が並んでいるのをいつまで楽しめるでしょうか。

 三菱商事、三井物産は今期を1兆円割れと予想しています。まさかですが、両社の経営陣は経済状況が変われば仕方がないと考え、束の間のおいしいお酒だと割り切って楽しんでいないでしょうね。兆円単位で計上した利益を未来に向けてどんどん投資して欲しいです。

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