
BYDがEV世界一に 中国政府の強力支援の果てにアリババ、恒大の末路が
中国の電気自動車(EV)最大手のBYDが2025年のEV新車販売で米テスラを抜き去り、世界一に躍り出ました。販売台数は前年比28%増の225万6714台。1年間で50万台以上も増えました。とても自動車メーカーが1社で成し遂げる数字とは思えません。テスラが自ら販売を減らすオウンゴールがあったとはいえ、中国政府の強力な支援策無くして驚異的な急成長は達成できなかったでしょう。
1年間で50万台増やす
果たして、BYDは今後も世界市場を席巻できるのでしょうか。どうしてもネット販売世界と躍進したアリババ、巨大不動産会社の恒大集団が経験した波乱の運命と重なって映ります。業績が絶好調を迎えた時、中国政府の匙加減で奈落に落ちてしまう末路です。
BYDの躍進を支える中国政府の強力な支援は凄まじいレベルです。まず同社の財務諸表から。2024年の売上高は7771億元、純利益は402億元。4年前の2020年に比べ売上高は5倍、純利益は10倍も増えています。信じられません。
政府の補助金が千億円単位で注入
驚異的な財務指標を達成できたのも、政府の補助金があったから。財務諸表によると、補助金は2024年は37・8億元。1元を20円で換算しても、756億円。2020年は16・7億元ですから、4年間で2倍以上増加しています。2020年の決算では純利益の40%は政府の補助金。2024年は10%近くまで低下していますが、それでもかなりの水準です。4年間の補助金を合計すると、日本円で2320億円以上。
もっとも、これは公式的な数字。ある調査では、BYDは2018年から2022年までに6000億円近い補助金を支給されており、2022年だけで3300億円も注入されているとの数字があります。
政府の支援策はまだあります。国内市場でEVを購入すれば、ユーザーは補助金や免税措置を得られます。日本車やドイツ車が市場から駆逐する支援策だけに、BYDなど中国勢が躍進するのは当たり前。BYDは全固体電池など新エネルギー開発の研究開発支援企業にも選ばれ、新技術の研究開発が急務のEVメーカーにとって資金繰りの改善に直結します。
そもそも中国の財務諸表をどこまで信用して良いのかという素朴な疑問がありますが、それを横においてもBYDへの直接的な補助金、研究開発支援、免税などを合計すれば、収益をかなり底上げしているというか、財務諸表の数字よりも突き抜けているのではないか。言い換えれば本当は赤字でも黒字と見せかけてしまうマジックを施していると勘違いしそうな脅威的な支援です。
ただ、中国政府の協力支援は終わりの時期が到来したのかもしれません。地球温暖化の対応策として世界が取り組むEVで中国は凄まじい躍進を遂げ、太陽光パネル、ドローンと同様に欧米や日本などを蹴散らすことに成功したました。政府はEVで突出した存在になったBYDを見切ろうとする意図を感じます。
中国の自動車産業はEVメーカーの乱立によって値下げ競争が過熱化、破綻が相次ぐなど経営危機に直面するメーカーが増え、中国経済への悪影響が懸念される事態になりました。BYDの直近の決算をみても、2025年第3四半期はEV販売台数は伸びているものの、売上高、粗利益それぞれ低下し始めています。
「すでに自動車業界の恒大集団が現れている。ただ、爆雷(破綻)していないだけだ」。2025年5月、長城汽車会長の発言が話題となっています。名指しはしていないものの、第2の恒大集団とはBYDと受け止めています。
中国政府は時代の寵児が嫌い?
どうも中国政府は突出した存在が好きではないようです。ネット通販で米アマゾンと肩並べるアリババを思い出してください。絶好調を極めた時期に創業者のジャック・マーが突然、姿を消した”事件”がありました。2020年10月、中国政府の金融規制が技術革新の足かせとなり、改革が必要だと指摘したことがきっかけといわれています。中国政府はその後、アリババなどネット通販を締め付ける規制強化に入りました。
不動産バブルに乗って急成長した恒大集団は中国経済の象徴でした。しかし、過熱した不動産バブルは深刻な不況に突入、「チャイナリスク」の象徴に変わり、規制強化された2020年以降、恒大は50兆円近い負債を抱え、破綻寸前です。
アリババも恒大も時代の寵児でした。BYDは今、EV時代の寵児です。不吉な予感が当たらないことを願うだけです。

