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生成AI 追いつき追い越せ、自動車、電機で経験した昭和に逆戻りする日本

 「追いつけ、追い越せ」。久しぶりに昭和の空気を思い出しました。

昭和の空気が蘇る

 生成AI(人工知能)を巡る開発は政府も民間も過熱しており、5月に日本で開催したG7首脳会議でも大きな議題になりました。岸田首相が日本が生成AIで世界でリードすると表明した時、「日本の実力はどうのくらい?」と首を傾げましたが、政治家だから仕方がないとスルーしました。しかし、熊本市で開催した人工知能学会でも日本が世界をリードする体制作りが強調されたのには心底、驚きました。心意気は良しです! でも、実力が伴わなければ単なる大言壮語。日本、大丈夫? それこそAIが描き出した根拠のないシナリオに振り回され、足元が空回りしているのではないか、心配です。

 人工知能学会では、急速に活用が広がる生成AIをテーマに多くの議論を交わしています。討議内容のうち、今話題の「Chat GPT」など生成AIに関連する内容は10%程度も占めているそうです。話題が集中する人工知能です。NHKによると、人工知能学会の副会長を務める慶應義塾大学の栗原聡教授は生成AIの分野で日本が世界でリードしていくための環境整備の必要性を強調したそうです。

人工知能学会も世界をリードと強調

 気持ちはわかります。功罪が世界中で議論されていますが、日本が取り残されるわけには行きません。しかし、日本が世界をリードする実力はあるのでしょうか。第一人者といわれる東京大学大学院工学系研究科 教授の松尾豊教授は、米中が世界の先端を走り、その次に英国、カナダ、ドイツ、シンガポールと続き、日本の姿はまだ後ろと説明しています。日本のAIに関しては、企業、教育などで世界に遅れを取っているようです。

 関連するデータをみると、納得。AIの研究に関する機関のランキングでは、日本の理化学研究所は30番台。企業別で見ても、NECが18位とトップ10から漏れています。大学はどうでしょうか。上位は米国の大学が占め、英国、スイス、中国、シンガポールと続き、日本の大学はなかなか登場しません。

しかし、日本の実力は???

 日本政府は2023年度予算で積極的にAI関連予算を増額すると表明しています。残念ながらこれまでの施策や予算が乏しく、成果も寂しい限り。世界との距離を縮めるまでにはまだまだ努力が足りません。しかも、研究成果はカネだけでは世界のトップに立てません。人材、経験の広い裾野があって成果が生まれます。

 半導体が良い例です。中国政府は国家プロジェクトして米国や日本を追い抜く政策に注力しています。特許取得数が急増し、研究開発も急進しているようですが、なかなか欧米に追いつき、追い抜くことができません。たとえ多くの研究成果が蓄積されたといっても、実際に半導体を生産するうえで欠かせない半導体製造装置は日本はじめ欧米の力量は頭抜けており、中国がキャッチアップするにはまだ高い壁が待っています。

 日本は戦後、自動車、電機を基幹産業に経済発展するため、欧米から積極的に技術導入してきました。製品をバラバラにして再現する過程を繰り返して、隠された技術革新のアイデアを体得して世界のトップへ躍り出てきました。文字通り、追いつけ追い越せを実践し、成功した歴史を持ちます。

 人工知能は早くから研究に取り組んでいます。ただ、常識に捉われがちな日本人の発想力では欧米に追いつけなかったのでしょうか。「iモード」「写メ」などで携帯サービスで先行した日本勢が結局は、フェイスブックやツイッターなどネット上のインフラを米国に主導され、後塵を拝することになった過去と重ね合わせてしまいます。

 緻密な作業が得意な日本は、部品の精度を高め、安く組み立てれば成功の道が見える製造業で抜群の力を発揮しました。しかし、人工知能は違いました。産学官で「世界をリードしよう。頑張ろう」と連呼しても、昭和の「追いつけ、追い越せ」が再び成功するのでしょうか。かつての労働組合を彷彿します。日本の製造業の衰退を考えれば、世界と日本の間に広がる競争条件の格差が大きく変わり、むしろ日本の実力を根底から問い直す時期を迎えているのではないでしょうか。

自動車も電機も追いつけ追い越せだったけれど

 1980年代、世界のトップに立った半導体は2000年代に凋落。今、欧米や台湾の協力を得ながら復活の狼煙を上げています。自動車は内燃機関エンジン車で欧米に追いつき追い抜いたかにみえましたが、地球温暖化の対応で急速に広がる電気自動車の流れに出遅れ、世界トップレベルの産業力も怪しくなりました。ソニーや松下電器、シャープなどが躍り出た電機はもうソニー以外は目を覆うばかりです。日本が追いつけ、追い抜けと頑張らなければいけないのは人工知能だけではなさそうです。

 日本、頑張ろう!!

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