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コストコ 公取委が勧告 魔法が解けたら下請けいじめの安売りスーパー

 正直、驚きはありません。「こんなに割安で使い勝手がある」をテレビ番組などで繰り返しアピールし、視聴者や消費者にお得感満載のイメージを植え付けてしまう。まるで魔法に掛けるかのようなマーケティングに感心していました。ただ、「そろそろ無理を重ねて帳尻を合わす”つじつま”に狂いが生じるのでは?」と心配していました。コストコです。 

代金支払いを一方的に引き下げ

 公正取引委員会は3月12日、会員制スーパー「コストコ」に対し食品メーカーに支払う代金を一方的に引き下げるなど下請法に違反したとして再発防止を求める勧告を伝えました。

 コストコホールセールジャパン(千葉県木更津市)が全国に33店舗を展開するコストコは、創業した米国で成功した「大量仕入れ・大量販売方式」を日本へ持ち込み、独特の会員制で人気を集めています。小売り業態は大型倉庫をコンセプトにした店舗にパレットなどで運ばれた商品をそのまま並べて販売すること。商品管理や陳列の手間などを省き、その浮いたコストで低価格を実現し、大量販売するものです。

 下請法違反の対象になったのは、コストコのプライベートブランド(PB)の惣菜やお菓子などを生産、供給するメーカーとの取引。期間は2021年11月ー23年12月の2年間。納入する23社に対し、商品の特売セールや新店舗の開店セールへの協賛金名目に合計約3350万円を支払代金から差し引きました。差し引いた減額分は値引きの原資などになったそうです。

返品や試供品の費用負担も

 読売新聞によると、納入時に品質検査していないのに、変色や異物混入などを理由に約200万円分の商品を返品した例もあります。新規開店の際に試食品を提供する費用を納入する企業に負担させた例もあります。一方的な支払代金の減額や返品は、納入企業に大きな打撃となりますが、大量取引の打ち切りを恐れ、抗しきれなかったそうです。

 米国流の小売り業態で日本に進出したにもかかわらず、コストコの「低価格」を実現する手法が日本の流通産業で長年慣行となっている値引きの強要でした。新規開店の諸経費、セールのキャンペーンなどを理由に原資の負担を食品メーカーや食品問屋に求めるのは、日本の流通では極めてよくあるパターンです。米国流の価格破壊のチャンピオンとして日本の消費者を魅了した「魔法」は実は、とても日本的な”禁じ手”でした。なんともがっかり。コストコがただのスーパーに映ります。

公取委はトヨタ系や日産にも是正・勧告

 公取委はここ数年、下請法違反の監視を強めており、2022年12月にはデンソーや豊田自動織機などトヨタ系企業、ドン・キホーテなど13社・団体に対し下請け企業との価格交渉に応じていないとして是正を求めています。1年後の2024年3月には日産自動車に部品メーカーへの支払い代金を一方的に引き下げたとして勧告しています。

 今回は米国系のコストコを加え、公取委が幅広く監視し、きめ細かく勧告する姿勢を強調した格好です。3月は春闘の賃上げ回答が相次ぐ時期です。中堅・中小企業が占める下請け企業に大手企業が強引な値引き圧力をかけないよう警鐘を鳴らす狙いもあったはずです。 

 農水産物や生活用品は、円安の加速もあって輸入コストは上昇しています。価格破壊のチャンピオンを自負してきたドン・キホーテ、ニトリなども最近は、安さよりもPB拡充や付加価値の高い製品を増やし、実質的に値引き競争から離脱しています。

値引き強要は日本の慣行、コストコは氷山の一角

 企業は利益が出なければ、存続できません。スーパーなど小売り業はいくら安売りをアピールしても、その舞台裏では商品構成や価格設定で利益が上がるようコントロールするのがそのスーパーならではの経営ノウハウです。コストコは十分にわかっていたのでしょうが、自ら創り上げた強さがいつのまにか虚像になってしまっても、テレビなどで盛んにアピールする「お得感」を死守するために値引きを強要するしかなかったのでしょう。

 もっとも、日本経済では、一方的な値引きは日常茶飯事です。長年の慣行です。公取委はコストコの勧告で本気度を知らしめ、経済界に取引の見直しを求めたのです。日本経済にとってデンソー、豊田自動織機、日産、コストコは氷山の一角に過ぎないのですから。

 

コストコは公取委の勧告についてホームページで掲載しています。

公正取引委員会からの下請代金支払遅延等防止法に関する勧告について

2024年3月12日

関係各位

本日、公正取引委員会は、23社の弊社の下請事業者に対する各種取引実務に関する調査(以下「本件調査」という。)を完了しました。

本件調査は、弊社が下請代金支払遅延等防止法(以下「下請法」という。)を遵守しているかどうかを確認することを目的とするものであり、弊社は、本件調査に全面的に協力してまいりました。

公正取引委員会は、本件調査の結果、弊社に対し、上記下請事業者との取引条件及び取引実務を一部改善すること等を勧告しました。

弊社は、その倫理綱領において、「法律の遵守」を最優先事項としております。そのため、弊社は、この度の勧告を真摯に受け止め、下請法の要件を完全に遵守するため、公正取引委員会の勧告に従い業務の改善に努めてまいります。

コストコホールセールジャパン株式会社

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