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英紙がイーロン・マスクを「Disrupter-in-chief」「破壊王」って 日本にも欲しい

「Disrupter-in-chief」 英エコノミスト紙はイーロン・マスク氏をこう名付けました。「editor-in-cheif」を編集長と訳しますから、直訳なら破壊長。わかりやすいイメージに意訳すれば、目の前の敵を次々と撃ち倒す「破壊王」!?。社会やビジネスの常識に囚われず、新しい常識を作り上げる独裁者と呼べば良いのでしょうか。

 まるでゲームソフトに登場するラスボス。来年1月にトランプ大統領が就任した後、世界にとってもラスボスになるかもしれません。でも、次代の成長モデルを創案できず、あがいている日本経済に今こそ欲しいラスボスです。

行政のスリム化に大ナタ

 イーロン・マスクはもう説明不要でしょう。EVのテスラ、航空宇宙のスペースX、SNSの旧ツイッター・X、人工知能のx AIなどなど。いずれも世界のビジネス常識を覆すディスラプター(破壊者)の創業者として世界を席巻しています。

 米大統領選ではトランプ氏の返り咲きを巨額の選挙資金提供などで支援。その貢献度から行政の無駄を省き、歳出削減を図る新組織「政府効率化省」のトップに就任する予定です。肥大化した行政を徹底的にスリム化して政府歳出で年間5000億ドル(約78兆円)以上の削減をめざすそうです。政府のスリム化は最高裁判決を参考に見直しや撤廃できそうな規制をリスト化し、議会の手続きを経ていない「違法な規制」を解消。個人や企業の活動範囲は広がり、米経済は活性化できるという筋書きですが、米政府がどんな細身になるのか、全く想像できません。

エコノミスト紙は真の破壊者と評価

「Disrupter-in-chief」と名付けた英エコノミスト紙は「企業が複数の産業を変革した真の破壊者」とマスク氏を評価しています。政府の浪費と無策については改正すべきだと「政府効率化省」の役割を理解します。ただ、イーロン・マスクが進める改革が全て正しいとは思いません。同紙は政府の規制撤廃などを通じて、独裁的な権限を持つ可能性を指摘するとともに、多くの事業を経営するマスク氏に利益誘導する恐れがあり、ライバルに阻害を与える施策の実施も無視できないとしています。

 企業倫理で首を傾げる事案が次々と現れるかもしれません。政府の政策に深く関わる立場にありながら、利害が発生する事業経営に携わることは利益相反だとの意見が広がっているのも、当然です。相反もあるでしょう。

 破壊王として賛辞する考えは毛頭ありません。世界最大の経済大国であり、安全保障のカギを握る米国をトランプ大統領とマスク氏が世界が混迷の道に導く怖さも覚えます。トランプ、マスク両氏の信頼関係がいつまで続くのが疑問視する声もあります。なにしろ7年前の2017年、マスク氏はドナルド・トランプを「詐欺師」「世界最高のデタラメな人間の1人」と呼んだほどです。

103万円の壁より所得税改革の議論は?

 翻って日本でマスク氏が提案する行政の効率化は、誰もが無理と判断するはずです。例えば「103万円の壁」。総選挙で少数与党の命運を握った国民民主党の公約実行で自民党と公明党は国民民主党と壁を取り払うことに合意しました。とはいえ、壁撤廃に伴う所得税の減収などを補う財源に目処はたっておらず、このまま実施したら地方財政を大きく圧迫します。

 政府の試算によると、「103万円の壁」を国民民主党が主張している178万円までき上げると税収は7兆6000億円以上も減るそうです。国民民主党の玉木雄一郎代表は税収の上振れ分で賄えると主張していますが、果たしてどうか?目算通りに税収を確保できなければ、国や地方の財政は大きく揺らぎます。仮に個人の所得が増えても、行政サービスが低下すれば、実質的に所得がマイナスになりかねません。立憲民主党は年収が増えると社会保険料の負担が増える「130万円の壁」を指摘しています。撤廃を盛り込んだ法案を提出しており、少数与党の衆院で野党が一致すれば可決するかもしれません。

破壊する知性と勇気を

 税制は繊細な寄木細工のように組み立てられています。どこかのピースを抜き取れば辻褄が合わなくなり、国や地方の財政制度が毀損し、結局は国民や自治体の住民が損を被ります。103万円など所得税が内包する「壁」を取り払うなら、一度ぶち壊す議論から始めたらどうでしょうか。パートなど非正規雇用、男女の給与格差など所得税制を全体の枠から議論しなければ、あちこちの穴を埋めきれず手の施しようなくなるのは火を見るよりも明らかです。小細工を弄した見せかけの改革は昭和の発想です。破壊を唱える政治家、経営者は登場しないのでしょうか。そんな愚かな発想では日本は経済も政治も動かない。こう笑う人がほとんどでしょう。

 だからこそ、イーロン・マスクの破壊王が欲しいのです。(注;もちろん、ちゃんとした見識と実績を持ち合わせた人物が必須です)

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