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フェンシングが勝ち、水泳が負けた訳 選手と共に挑戦する経営に徹し、組織に拘る愚行を捨てる

 日本のフェンシングの活躍に目を見張ります。パリ五輪で個人、団体合わせて金銀銅のメダル5個を獲得しました。日本のフェンシング人口はわずか6400人。体型でもハンディキャップがあります。それでもフェンシングが国技のフランスなど欧州各国を打ち破っています。明暗を分けたのが水泳。愛好者は3000万人を超え、競技人口も20万人といわれます。輝かしい歴史を継承してきましたが、パリ五輪は惨敗。勝負の分かれ目は?。選手ら現場と思いを共有して挑戦する組織経営を実現したかどうか。「経営の基本」の重要さを改めて教えられます。

フェンシングの競技人口は6400人

 日本のフェンシングが脚光を浴びたのは、2008年の北京五輪で太田雄貴さんがフルーレ個人で銀メダルを獲得した時でしょうか。欧州で紳士の競技の代名詞と言われ、1896年の第1回から採用されています。日本の剣道に相当する競技でアジアの国が欧州各国、カナダに互角、あるいは勝ち抜くなんて想像できませんでした。ましてフルーレより競技人口が多いエペで日本人が金メダルを取る日が訪れるとは夢にも思いませんでした。それを東京五輪で男子団体が、そして個人はパリ五輪でそれぞれエペで見事に実現します。パリ五輪では女子がサーブルで銅メダル、男子はフルーレでも金メダルを獲得し、もう素晴らしいの言葉しかありません。 

 太田さんは、これだけの成果を挙げた背景として前の世代から積み上げてきた経験に国やJOCなどのサポート体制の充実があったと説明しています。フェンシングはスポーツ庁が支援するスポーツの最上位のSランクとして柔道やレスリング、体操などと共に選ばれ、日本フェンシング協会が得た補助金総額はスポーツ庁を含め3億円を軽く超えています。東京都内のナショナルトーレニングセンターには専用練習場があり、フランスなど外国のコーチを招聘し、相手国との力の差を前提にあらゆる対策を練り上げたからだと思います。 

支援強化よりも選手らの一体感が最強に

 支援体制の拡充もありますが、なによりもアスリートの活力を欧州の強豪国に勝つという挑戦に結集してきたのが最大の原動力ではないでしょうか。こちらの知識不足は承知していますが、東京でもパリでも五輪開催前からテレビに出演する代表選手の表情が明るく、躍動していたのがとても印象的でした。毎日、厳しいトレーニングを積み重ねながら、日本でマイナースポーツのフェンシングを盛り上げるため勝利にすべてを注ぐ覚悟がダイレクトに伝わってきました。テレビや新聞などメディアで知る限り、支援する協会など組織、コーチ、選手が共有するベクトルもズレを感じませんでした。

 対照的だったのが水泳です。パリ五輪のメダル数は銀メダル1個だけ。予兆はありました。1年前の2023年7月に福岡市で開催した世界選手権で日本は銅メダル2個だけ。自己ベストを更新した選手も少なく、開催国である日本の活躍を期待した向きはかなりの驚きでした。

 直後、不協和音が湧き上がりました、選手から日本水泳連盟などの強化策に批判の声が出て、どんどん広がります。五輪5大会連続出場の入江陵介さんも「体制を変えるなど何かをガラッと変えないといけない時期。顔を合わせて話し合う機会が必要だと思う」と公言。翌月の8月には選手や水連などを交えて緊急ミーティングが開催される事態に。

水泳は1年前に不協和音が

 びっくりしたのは北島康介や大橋悠衣ら金メダリストを育てた平井伯昌コーチが代表コーチ辞任を申し出たことです。平井さんはメディアで水連の取り組み姿勢がおかしいと指摘し、代表チームとしての一体感を失ってしまったことを憂いてました。20年間にわたって世界の水泳界と闘い、実績を上げてきたコーチだけに、水泳界の内部分裂の深刻さに呆然としたものです。

 選手らは何があろうと厳しいトレーニングを積み、パリ五輪に対峙したはずです。努力と結果がいつも直結するわけではありません。ただ、パリ五輪の水泳の惨敗は、1年前の選手、コーチ、水連の分裂で十分に予想され、残念ながらその通りの結果となりました。トレーニングに必要な予算などが不足しているとの指摘があるようですが、フェンシングの成功が予算の増加だけで説明できるものでしょうか。

 水泳代表選手に選ばれる顔ぶれは常連が多く、新しいエネルギーを体現した世代交代の勢いが見当たりませんでした。世界に勝利するために従来の常識に囚われずに挑戦する厳しさを選手やコーチが求めていたにも関わらず、水泳は組織としての求心力、メンツに拘ってしまったのが敗因に繋がった印象です。

一丸となる覚悟と勇気が必須

 組織運営は新しいことになんでも挑戦することが正しいと考えているわけではありません。しかし、まずは目標とする成果を手に入れるため、選手はじめ関係者が一丸となって挑む覚悟と勇気が必須です。組織を経営する基本中の「キホン」です。フェンシングが放った成功への一突きはかなり企業経営にとっても刺さるものでした。

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