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製造業の未来 日本はワンチームになってトランスフォーマーへ 

 映画「トラスフォーマー ビースト覚醒」を見てきました。いつものパターン通り、主役を務めるロボットたちが宇宙征服を狙う悪役に仕えるロボットらと戦い、地球を守ろうとする人間と協力して立ち向かう物語です。地球制覇を狙うロボットはめちゃくちゃ強いので、敗北寸前に追い込まれますが、最後は勝利を信じるロボットと人間が一緒になって叩きのめします。典型的な勧善懲悪型、まるで日本の講談を映画に仕立てた感じですね。

変幻自在に変身するロボット

 映画の主役を務めるロボットたちはトランスフォーマーと呼ばれる変幻自在のロボット。トラックやスポーツカー、ゴリラ、はやぶさなどの姿からガンダムのような戦闘タイプの巨大ロボットに「変身!」。トラックからロボットへ変身する際、タイヤやボディなどのメカがルービックキューブのようにカタカタと動き、ロボットの姿になるのが最大の醍醐味です。

 映画は2007年、マイケル・ベイ監督、スティーブン・スピルバーグ製作総指揮で第1作が公開され、世界的大ヒットしたシリーズ第7作目ですが、元々は日本が発祥の地。

 1980年代に玩具大手のタカラ(現在のタカラトミー)が販売した「ダイアクロン」「ミクロチェンジ」などの変身ロボットを米国玩具大手のハズブロが注目して、新たなアイデアを盛り込んで世界商品「トランスフォーマー」に仕上げました。同じ頃、まだタカラとの合併前のトミーが動物の変身ロボット「ゾイド」を販売していました。

アイデアは日本、米国と提携して世界商品に

 いずれも子供たちが好きなクルマや動物を主人公にしたテレビアニメを放送する一方、精密な部品を組み合わせた変身ロボットを製品化し、ヒットさせています。私が知ったのは子供が興味を持った1990年代。トランスフォーマーのビーストシリーズとゾイド。物語の展開が大人でも楽しめるうえ、変身ロボットの精密な部品に驚きました。ゾイドシリーズなどは接着剤を使わなくても組み立てられる精緻な部品で構成されていました。

 驚いたのは、その精緻な部品を成型する生産技術です。プラスチック素材を寸分違わずに成型する金型の製造技術に「さすが日本の製造業」とひそかに拍手を送っていました。

弱い部分はどんどん他の才能に頼るべき

 以来、トランスフォーマーは日本の製造業が目指すべき方向性を体現していると考えています。アイデアは日本で生まれても米国の大手と提携して世界商品に育て上げる。玩具など基本の製品は、日本の誇る精密で微細加工の技術で生産する。部品一つひとつが精緻だけでは面白くありません。その部品を組み合わせれば、クルマがガンダムのようなロボットへ変身しています。その変身するプロセスをどう楽しめるように設計するのかも、玩具の世界を広げる過程です。

 幅広く製品を告知するため、映画やテレビアニメに仕立てる時は米国のプロフェッショナルの力を利用する。トランスフォーマーが世界的な映画として上映されるのもスティーブン・スピルバーグが製作総指揮を担ったからです。「ジョーズ」「ジェラシックパーク」「インディ・ジョーンズ」など世界的ヒットをかっ飛ばすセンスと力量は、日本がもっとも不得意とする分野です。

 そして最も真似したいのは、クルマがロボットへ変身するアイデアです。日本の製造業は、自動車、電機、機械などの分野で世界トップクラスの技術を誇っていました。それぞれの分野で精緻で故障しない素晴らしい製品を世に送り出してきました。しかし、それは1990年代で終焉しています。

 世界の製造業はテスラがその方向性を示しています。製造業の素人と揶揄されながら、NASAを上回る民間ロケット事業、トヨタやベンツが必死で追いかける電気自動車など大成功を収めています。一つひとつの技術はまだ100%じゃ無いかもしれないけれど、技術の集合力によって新たな価値を創造する胆力には脱帽せざるを得ません。

映画は日本が目指す方向性を示す

 映画「トランスフォーマー・ビースト覚醒」はロボットと人間の一体化で勝利を手にします。そのキーワードは「ワンチーム」。思わず2019年のラグビーW杯の日本代表が口にしていたキャッチフレーズかと突っ込みたくなりましたが、日本の製造業も自動車、電機、機械など過去の誇りが埃となってしまった枠組みを捨て去り、「ワンチーム」になる勇気を持つ時です。加速できずアイドリングばかりしている日本の電気自動車の開発を見ていると、情けなくなります。

 国内外から優秀な人材とアイデアを集めてド〜ンと飲み込み、「私たちはワンチームで再び巻き返す」との覚悟を示す必要がある。そうしなければ、日本の製造業は思わぬ悪役に制覇されてしまうかも。映画のエンディングを見ながら、再確認しました。

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