• ZERO management
  • カーボンニュートラルをZEROから考えます。
  • HOME
  • 記事
  • ZERO management
  • 日野自動車が”トヨタ”に復帰 勘当を解く?親が子を見放すグループ経営の将来に不安

日野自動車が”トヨタ”に復帰 勘当を解く?親が子を見放すグループ経営の将来に不安

 なんとも奇妙な発表でした。日野自動車がトヨタ自動車グループの会社に復帰することを業界団体の記者会見で公表したのですから。世界一の自動車メーカーであるトヨタとはいえ、1企業グループの話題を業界団体の公式の場で明らかにする論法がよくわかりません。

自工会会見で公表する不可思議

 日本自動車工業会の豊田章男会長(トヨタ自動車会長)は9月21日、オンラインの記者会見でトヨタやいすゞ自動車などが共同出資する商用車の企画会社「コマーシャル・ジャパン・パートナーシップ・テクノロジーズ(CJPT)」に日野自動車が復帰することを明らかにしました。日野は2022年8月、同年3月に発覚したエンジン認証不正問題を理由にCJPTから除名処分を受けていました。

 豊田会長は除名を解く理由として、日野が信頼回復に真摯に取り組んでいる姿勢、カーボンニュートラルや物流課題の解決に向けて日野の力が必要と判断したそうです。「自工会の決議事項ではないが、同日開いた理事会で全員の賛同を得た」と話しています。自工会の会見の場で日野の除名問題を説明したので、もしや自工会も除名されたのかと思い、確認しましたら、会員名簿には日野自動車が載っていました。勘違いでした。

怒りが収まれば、除名解除とは

 なぜ自工会の理事会で共有する必要があるのかがわかりません。CJPTは日野自動車とトヨタグループの問題。エンジン認証不正問題は、確かに自動車業界として許されるべき問題ではありませんが、自工会として何か処分しているのでしょうか。国土交通省は行政処分していますが、監督官庁と業界団体は当然ですが、別の話です。公私混同ならぬ、「業界・企業」混同に映ります。

 そもそもCJPTの除名自体が外野席から見れば不可解です。日野自動車は不正問題が発覚した2022年3月時点でトヨタの子会社です。トヨタの豊田社長(当時)は「信頼に足る企業として生まれ変われるのか注視し、見守って参りたい」とのコメントを発表しただけ。8月24日にはトヨタが日野やいすゞ自動車などと次代のクルマ開発を目指して設立した「CJPT」から「お客様や社会の皆様からの理解が得られない」との理由で日野を除名すると発表しました。

 親会社の子会社に対する管理責任の議論はどこにも見当たりません。連結決算に影響を与える事項ですから、責任の所在を明らかにするのが最優先事項です。子会社とはいえ日野自動車は世界レベルのトラック・バスメーカーだから、親会社が一々尻拭いする必要はないと判断するのもわかりますが、トヨタと日野です。自動車産業、日本経済での存在感の大きさを考えたら、トヨタグループがもっと深く関わっても理不尽ではないでしょう。

日野はベンツ・三菱へ

 そんな感想を持っていたら、2023年5月には日野自動車と三菱ふそうトラック・バスが2024年末までに経営統合すると発表しました。それぞれの親会社、トヨタと独ダイムラートラックが折半出資して新会社を設立し、その傘下に日野と三菱ふそうが子会社として入ります。経営統合の建て付けは、電動化や自動運転など次世代技術の開発に対応できる体制への移行です。日野とトヨタグループの距離感はこれまでと違い、かなり遠い存在になりました。トヨタの佐藤恒治社長は記者会見で「商用ビジネスについて、我々が日野を支えることの限界もある。我々にない強みをダイムラーに借りながら、みんなで未来への取り組みを進めて参りたい」と事実上トヨタグループから手放した理由を説明しました。

 親会社のトヨタが子会社日野を手放すメッセージを他のトヨタグループ企業はどう受け止めたのでしょうか。2009年の社長就任以降、創業家の威光をを背にトヨタを率いる豊田章男会長の逆鱗に触れたら、どうなるのか。トラック最大手でその技術力の高さで知られた日野でさえ、親会社は手を差しのべてくれない。

 しかし、除名から一年程度過ぎれば世間も収まり、復帰できる。この1年間は反省の期間?でも、ベンツとの資本関係もあって、すでに日野はトヨタに反省することもないです。もっとも、CJPTに復帰を認めるという表現が良いのか甚だ疑問ですが、ベンツから見ればトヨタの電動技術などの情報が手に入るのですから異論はないのでしょう。

グループの結束は求心力か遠心力、どちらに

 日野は10月をめどにCJPTが再び参加する見通しです。 CJPTは物流効率化や電動化など商用車の未来に関わる問題に取り組む会社です。日野を巡るゴタゴタを見ていると、電動化の未来よりもトヨタグループの未来そのものに不安を覚えます。ダイハツ工業は日野と同様に認証申請の不正が発覚しており、品質保証管理の体制を改革しています。ダイハツはCJPTから除名されていません。日野はアウトでも、ダイハツはセーフ。不正の度合いでしょうか。不正にも許されない不正と酷くない不正があるのですね。

 完全無欠は理想ですが、時には不正行為が起こるのも現実です。トヨタグループで不正が再発したら、日野を手放したように再びトヨタグループから”除名”される事態があるのか。今、グループ内で求心力が働いているのか、遠心力が強まっているのか。EV時代の到来で既存の産業構造が崩れ、自動車グループは大きく揺らぎます。今後、トヨタグループがどうなっていくのか注目したいです。

関連記事一覧