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丸の内

日野自動車会長が辞任する理由は? 不正事件の責任の取り方を考える

 日野自動車の下義生会長が退任することになりました。2022年6月の株主総会で決定します。退任の理由は取締役任期満了。3月に発覚した排ガス試験のデータ改ざんに伴う引責辞任ではないと説明します。だから会長は辞任しても、小木曽聡社長は続投するのでしょう。データ改ざんについては現在、弁護士など第三者が参加する調査委員会が作業を開始しており、結論はまだの段階。会長の任期は何年でも良いのですが、下さんは前年に社長から会長に就任しています。前任者は4年間、会長を務めていますから期間一年で退任するのはちょっと早いかも。辞任する理由はなんですか?

経営責任はまず社長が背負うはず

 そもそも日野自動車の排ガスのデータ不正が始まったのは2016年ごろだそうですが、当時の下さんはトヨタの常務役員です。不正に直接関わる可能性はゼロではないですが、経営の指揮系統からみれば直接責務を負う立場ではない。問われるのは当時の社長、あるいは会長です。

 下さんは2017年6月に日野自動車に復帰して社長に就任するので、そのために業績回復や新型エンジンの拡充に向けて日野自動車が組織として不正に手を汚したとの見方がありますが、開発現場が独断できるわけがありません。データを改ざんするためには当時の経営トップから指令がなければ現場は動きません。

 2013年から2017年までの社長はトヨタ自動車出身の市橋保彦氏です。トヨタで技術畑を歩み、トヨタ専務、関東自動車副社長を経て日野自動車のトップの座についています。開発や生産の現場には精通しています。その人物の目を逃れてエンジンの排ガス試験のデータを改ざんするにはかなりの組織的なごまかしが必要です。

 会長退任を発表した2022年4月18日現在では不正が行われた詳細が明らかになっていません。うかつな推測はするべきではないのは承知しています。これを前提に考えても、下会長が独り退任する理由が不明です。下会長は不正が発覚した3月4日に「経営としての責任は重いと受け止めている」と発言しています。読売新聞によると、日野自動車は不正が判明したのは2018年で下社長在任中だったそうです。それから隠し通していたということの責任でしょうか。たとえそうだとしても、調査委員会の結論を経て退任を決めるのが筋です。それがなければ調査委員会はあっても無くても同じです。

 不正によりエンジンの型式指定の取り消しや生産停止などで2022年3月期が150億円の黒字見通しから540億円の赤字へ転落するらしいですが、経営責任を問われるのは社長です。下会長自身が自分が大きな責務を負うと自覚しているとしても、明確な経営責任が判明するまでは独り背負うものではありません。会社経営は感情論で通りませんから。

下会長が退任するのは日野の生え抜きだから?

 下さんが辞めざるをえない理由を考えると、16年ぶりに誕生した日野自動車生え抜きの社長だから?ということでしょうか。2001年にトヨタが子会社化した結果、以来蛇川忠暉社長らトヨタ出身者の社長が続いていました。2017年に16年ぶりの生え抜きとして就任したのが下社長です。不正の原因が判明する前に辞任するのは日野自動車社員から見れば、トヨタの子会社である日野自動車が不正の責任をすべて負うべきだといわれていると受け止めてもおかしくはないです。

 ここからあくまでも推測です。現在の小木曽社長はハイブリッド車「プリウス」の会社主査を務めた内山田竹志会長とともにハイブリッド車の開発に取り組んでいた功労者です。トヨタとしては大きな業績を挙げた人材を日野自動車の社長として送り込んだわけです。2021年6月の就任からわずか1年間で辞任させるわけにはいかなかったといしたら、経営責任の公平性、透明性で首を傾げてしまいます。

 日野自動車以外でも直近でスバルで主力の人気車種「フォレスター」「レヴォーグ」「アウトバック」に搭載するエンジンの不具合が見つかり、2ヶ月半程度生産を止めるとのニュースが流れています。スバルはトヨタと共同開発した電気自動車「ソルテラ」を米国に続き、日本でも発売すると発表したばかりです。ところが、スバルのホームページではソルテラの説明があってもエ ンジンの不具合に伴う生産停止の説明は残念ながら見つけることができませんでした。スバルも日野同様、トヨタの資本参加を受けている会社です。

トヨタグループとしての経営の透明性、情報公開が改めて問われる

 トヨタは今や、日本の自動車メーカーをほぼ傘下に収めるほどのリーダーです。最近、トヨタの強さばかりが目立つのが気になります。日野自動車の経営責任のあり方、トヨタグループと連携するスバルなども含めた経営の情報公開などでもリーダーシップを発揮して欲しいです。

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