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ホンダが消える43 「金がない」窮状だけが浮き彫り 日産との統合は無理筋じゃない?

  ホンダが日産自動車と経営統合へ向けた協議を始めます。2024年3月にEVの開発で協業を進めると発表し、8月には日産と資本提携する三菱自動車が加わることも明らかになりました。次世代のクルマの主役はEV。ホンダも日産もエンジン車からの切り替えに全力を注ぐのは当然ですが、経営統合まで発展するのは不思議です。日産はもう利益を捻出できない窮状に立っています。ホンダは苦戦していた四輪車事業が息を吹き返したところ。日産を救済する余力はありません。仮に経営統合したとしても成功する公算はあるのか。弱者連合に勝利はありません。ホンダが日産や三菱自と手を組まざるをえないほど経営が瀬戸際に追い込まれているのか心配になります。

ホンダに日産を救済する余力はない

 経営統合は持ち株会社を設立し、その傘下にホンダと日産、そして三菱自がぶら下がる格好になるはずです。持ち株会社の出資比率など細部を積める問題が多く、乱高下する日産株の評価も含めて難航するでしょう。また、主導権はどちらが握るのでしょうか。もともと肌合いが異なる両社です。机上の計算と現実が食い違い、経営統合自体が途中で破談する可能性もあります。

 実現すれば世界の販売台数が800万台を超える世界第3位のグループとなりますが、経営規模と実力は違います。トヨタ自動車と世界一の座を争う独VWが工場閉鎖に追い込まれている惨状を思い出してください。「100年に一度の変革期」はもう聞き飽きたフレーズですが、EVへの移行期は世界一位だろうが、3位だろうが全然関係なし。米テスラ、BYDなど中国のEVメーカーが躍進ぶりはエンジン車時代に積み上げた資産を無にするほどのインパクトを証明しているのです。

 ホンダも日産も十分に理解しているはず。それでも経営統合に進もうとする理由は「時間」が待ってくれないからです。EV駆動系やバッテリーなど基幹部品を単独で開発しては間に合わない。EVへの準備に時間が取られれば取られるほど先行メーカーとの差が開いていきます。ホンダ、日産、三菱自で協業化し、時空を飛び越えるワープに挑むしかありません。

テスラや中国の差を縮めるしかない

 しかし、ホンダがあえて日産、三菱自と統合する必要があったのか。日産は2025年中間期で事実上、利益ゼロに。世界生産と雇用を大幅に削減するリストラを実施する瀬戸際に立っています。いくら次世代車への投資、技術開発に負担がかかるとはいえ、日産の手持ちキャッシュローは知れています。ホンダがお金や技術目当てで統合する相手としては不適です。

 日産の内田誠社長はリストラ計画を発表した後、新たな経営陣を決めましたが、自身は留任を選びました。ホンダとの経営統合を実現する腹を固めていたのでしょう。ホンダの現状を考えれば、日産と組まざるを得ない。その足元を見極めたのです。

 ホンダの四輪車事業はようやく息を吹き返した段階です。2018年以降を振り返ると、何度も赤字に転落しています。2022年度は通期でも赤字を計上、売上高が下回る二輪車事業の利益で救われたほどです。2024年3月期は黒字に復帰しましたが、まだ青息吐息。

 EV開発に向けた資金を捻出するだけの体力が予想以上に衰えていたのかも知れません。ここからは推察ですが、日産の経営破綻を回避するため、経産省や銀行などがホンダを説得したのではないでしょうか。主力銀行はもちろん、三菱自の筆頭株主である三菱商事などが日産と三菱自をセットで救済しようと考えても不思議ではありません。経産省もルノーと手を切った日産と新たに資本提携するメーカーを見つけるのは無理。残る相手はホンダだけと見切ったのでしょう。

銀行などが後押ししたのでは?

 ホンダは三菱UFJ銀行など三菱グループと長年の関係があります。三菱グループが総力を上げて日産・三菱自との協業を後押ししたかもしれません。日産との協業を発表した時の記者会見で見せたホンダの三部敏宏社長の表情が忘れられません。新たな挑戦に挑む意欲は微塵も見当たらず、仕方がなく演壇の前に立った印象です。

 そんな経営統合が成功するのでしょうか。どうみても、世界の自動車ーメーカーが次世代の生き残りを目指す提携劇とは思えません。無理筋です。仮に経営統合に合意したら、成功を祈りたいです。現時点はまさに祈るしかありません。でも、協議がまとまるのでしょうか。疑問がどんどん湧きます。

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