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ホンダが消える41 ソニーとのEV開発、試される想像力と創造力

 ホンダとソニーが共同開発するEV「AFEELA(アフィーラ)」はまだ輝いているのでしょうか。2021年4月、ホンダの三部敏弘社長は2040年までにEVと燃料電池車へ全面転換すると宣言。1年後の2022年3月にはソニーとEVを共同開発することをは発表し、産業の枠を超えて自動車メーカーとしての脱炭素を目指す覚悟を示しました。しかし、最近はアフィーラの話題はさっぱり。世界のEV販売にブレーキがかかり、脱炭素の夢には大きな影が差し始めているかのようです。このまま泡のように飛び散ってしまうか。ホンダとソニーが今、試されているのはEVの開発力よりも想像力と創造力ではないでしょうか。

EVが足踏みしている今こそ

 ホンダとソニーのEV開発が立ち往生しているわけではありません。2023年10月末に開催したジャパン・モビリティショーにはプロトタイプモデルが公表され、多くの観客を集めました。4ドアのクーペスタイルをベースに作り込み、2025年に先行受注を始め、年内に発売する見通しも明らかなっています。ホンダの北米工場で生産し、2026年から北米から引き渡しが始まり、そして日本と続く予定です。

 ホンダもソニーも「らしさ」を大事にする会社です。運転は人工知能などによる自動操作に任せ、車内はリビングルームでオーディオや映像を楽しむ空間に仕上げる基本構想です。ホンダ、ソニーそれぞれが得意技術をてんこ盛りに注入するせいか、アフィーラの価格は日本円で1000万円程度。EVは駆動系、バッテリーなどにお金がかかるため、価格は量産効果が出ているエンジン車に比べ割高ですが、高級車の部類に入る水準です。

チューインでネット配信は縦横無尽

 ホンダ・ソニーモビリティのホームページを見ると、直近の開発動向を公開しています。2024年8月8日の発表では、車内のエンターテインメントに活用する技術として米国の「TuneIn(チューイン)」を導入することを明らかにしました。スポーツ、音楽、ポッドキャストなどネット配信のプラットフォームとして高い人気を集めているアプリで、欧米、日本などのラジオ8万局、ポッドキャスト200万件をスマホ、タブレット、パソコンなどに対応できるそうです。目的地に移動しながら、車内はライブコンサートやスポーツ中継を楽しむ空間に様変わりするわけです。

 将来の顧客層の開拓も始めています。世界的に人気を集める音楽グループ「Perfume(パフューム)」が結成25周年を迎えたのを機に開催するイベントにアフィーラを展示し、最先端のファッション、エンターテイメントとコラボ。大谷翔平選手の大活躍で注目度が一気に高まったロサンゼルス・ドジャーズでは日本のヒップポップグループ「Creepy Nuts」と共に登場、若い世代へアピールしました。

 技術面のハード、ソフト、そして車のイメージ形成に努力しているのはわかります。ただ、肝心の車の概要がなかなか具体化しません。新車開発は長い年月を重ねてようやく形になるのものですから、ホンダが基本設計に責任を負っているとはいえ、アフィーラ計画発表から2年足らずで完成車に近いモデルが出来上がることに期待しているわけではありません。ただ、ホンダとソニーが開発するEVがオーディオや映像のエンターテインメントがメインコンテンツというだけではあまりにも寂しい。

ホンダとソニーを超える破壊力を期待したい

 直近のEVの先行きが怪しくなった今こそ、アフィーラがもたらす衝撃に期待したい。ベンツ、ボルボ、VW、フォードなど欧米メーカーはEV戦略を後退させています。今こそチャンス。自動車の概念を超えたモビリティをどう創造するのか。そしてホンダとソニーだからとステレオタイプのように描いてしまうイメージを捨て去り、新たなブランド創出に繋げるのか。EV、ホンダ、ソニーを注視する人々でさえ、想像できない衝撃を感じたい。米テスラや中国BYDを蹴散らすEVが走り回る日を早く見たいものです。

 答えは目の前にあります。「多様な知で革新を追求し、人を動かす」。ホンダ・ソニーモビリティのホームページで自ら語っているじゃありませんか。このミッションを実現するだけです。きっとアフィーラはEVの新たなデファクトスタンダードの輪を担うはずです。

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