ホンダが消える 16 ソニーとトヨタが並んだ日 埋没するホンダ
ソニーはテスラと同じ、自動車産業を背負っておらずEV進出が身軽
ソニーはテスラ同様、自動車産業を背負っていません。しかも、自動運転の要となるセンサーなど半導体技術では世界トップレベルです。ホンダもめざしている人間と車の共生社会についてみても、家電製品やエンターテインメントの事業を通じてソニーの方がはるかに技術、コンテンツ、経験を豊富に持っています。
ただ、足りないのは自動車生産と実車走行の経験です。ソニーは実証試験を繰り返して不足を埋めているでしょうが、テスラの歴史とリコールから分かるのはやはり自動車生産は長年積み重ねた経験と試行錯誤、失敗が必要だということです。そう簡単に「時間」を技術力と資本力で買うことはできません。
しかもソニーは技術志向の会社ですし、自身のブランドに多大なる誇りを持っています。目を見張るソニーの経営再建を主導してきた吉田社長はソニーの強さには資金を投入し、弱いものはばっさりと切り捨てる決断を下した経営者です。ソニー単独の自動車開発と生産の限界をすでにわかっているはずです。
ホンダはソニーが欲しい技術と経験を持っている
ホンダは「20世紀の自動車産業」のトップであるトヨタから引き離され、「21世紀の自動車産業」のテスラや近未来のソニーに追い抜かれる立ち位置にあります。このままでは埋没します。ホンダの開発現場から見たら不本意かもしれませんが、モビリティの可能性を考えたらソニーとの提携は必然です。
ソニーの吉田社長は「人の移動空間をエンターテインメントにしたい」と明言しています。新会社の名称は「ソニーモビリティー」です。ホンダが目指す次代のモビリティーとぴたりと重なります。ソニーはホンダが持っている技術と経験をエイリアンの女王のように喉から手が出てくるほど欲しいのです。
以前に「ホンダが消える」で、かなり乱暴な切り口だと承知のうえでホンダがソニーやアップルと提携する仮想電気自動車構想を書いてみました。しかし、ホンダの選択はソニー・アップルを取り込む経営戦略しかないと確信しています。