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NVIDIAの創業者は皿洗いから、星野リゾートは青田買い、伊藤忠は年収競争、過熱する人材争奪で未来の力は育つのか 

  企業による若い世代の争奪戦が過熱しています。少子高齢化が加速し、人口減に歯止めかからないのですから、若い世代の人口も減り続けます。企業の未来を担う人材をいかに確保するのか。必死になのも当然です。知名度を高めるため、目立たなきゃ損!とばかりに企業名を連呼するだけの テレビCMが増えましたし、就活の常識をひっくり返すような採用も登場しました。でも、素朴な疑問が湧いてしまいます。日本の未来を創造する人材が本当に育つのでしょうか?

大学1年から内定

 星野リゾートが大学生1年生でも内定を出す制度を始めました。とても人気が高い企業ですが、誰よりも早く人材確保しなければ間に合わないほど争奪戦が激しいようです。すでに通年で採用活動しているので、ノウハウはあるのでしょう。学生は卒業から12カ月以内に入社すれば良く、入社時期も2月、4月、6月、10月のうちいずれかを自由に選べるそうです。

 大学1年生で入社を決定した場合、学生の間はインターンなどで星野リゾートを体験する研修期間を設け、実際に就職するまでに備える助走路も引きました。2026年の新卒採用は800人を計画していますから、新卒の頭数を揃えるだけでも大変だとわかります。

 もっとも、これは典型的な青田買いの復活です。昭和の高度成長期、大企業が内定を出す時期をどんどん早め、学生が勉強に身が入らないと批判を受け、経団連が自主規制を促して内定を出す時期を何度も模索した過去がありました。すでに自主規制も形骸化しているとはいえ、そんな教訓はすべてご破算になるのでしょうか。

 星野佳路代表は「学生が自分のペースで就職活動を進められるようにしたい。優秀な人にきてほしい」と説明していますが、結局は多くの企業が競って青田買いに走り、大学生は自分の将来を考える余裕もなく就職先をとりあえず決める流れが広がるのは必至です。

伊藤忠は三菱、三井に負けない

 伊藤忠商事は年収競争で気を吐いています。長年、CEOとして経営の実権を握る岡藤正広会長が経営計画が目標通りに達成できれば、社員の平均年収を10%増やすと約束しました。人事の評価が最高を記録すれば、例えば課長なら3620万円の年収になるそうです。宿命のライバル、言い換えれば目の上のタンコブとも言える三菱商事と三井物産を上回る年収を実現し、社員を鼓舞するとともに、商社を狙って就活する大学生を伊藤忠へ引き寄せる狙いです。

 岡藤会長はイタリアの高級ブランドの販売権を次々と取得して祖業が繊維の伊藤忠で出世の階段を駆け上がってきた人物です。経済界の常識に縛られない発言や行動が評判になる面白い経営者ですが、今回も正式決定の前にSNSを使って公表しました。学生の間で話題になるウケ狙いを最優先したわけです。

 商社の平均年収は大企業の中でも群を抜いています。有価証券報告書によると、2023年度の平均年収は三菱商事が2090万円、三井物産が1899万円で、伊藤忠は1753万円。昔から総合商社は就職人気ランキング上位を占めていますが、最近は経営コンサルタントや情報通信大手などに人材が流れ、かつてほど優秀な人材が訪れなくなっているようです。

昭和の成功の方程式をまず捨てる

 就職活動する立場から見れば、内定時期を自由に選べる星野リゾートや高い年収が期待できる伊藤忠などは魅力的です。しかし、就職後すぐに転職しても驚かない時代になっているのも事実です。入社した会社は仮住まい。自分の適性や将来の理想を考え、新たな転職先を選ぶ人材が増えています。

 無理もありません。20歳前後で自分自身の将来を左右する就職を決める人材はどれだけいるのでしょうか。お金というニンジンを目の前にぶら下げても飛びつく人材が果たして伊藤忠の未来を支えるのでしょうか。

 むしろ、若い世代の才能をいかに引き出すことに政府も企業も精進したらどうでしょうか。有名進学高校から東大など難関大学へ進学し、一流企業などへ就職するといった「勝利の方程式」を一度、ご破算するのもアイデアです。昭和から続く成功の道筋が今も形骸化しながら残っていることに世界の時流から取り残された違和感を覚えます。

 人工知能の半導体で世界から注目を集めるエヌビディア創業者のジェンスン・ファンさんは15歳の時にレストランのデニーズで働き、皿洗いやウィエイターを経験しました。「私より多くのコーヒー カップを運べる人間はいません」と自慢します。今では世界有数の富裕層に仲間入りしていますが、自身の才能と未来を信じて働き、今の成功を手に収めています。

 内定の時期や年収で企業を選ぶ人材が未来を担えますか。政府に期待できないだけに、経済界はもっと日本の未来を支える教育、社会の仕組みを提案してほしいです。

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