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ハイブリッド絶好調は「最後の恩返し」EV開発の資金と時間を稼ぐ

 世界でハイブリッド車の販売が絶好調です。ハイブリッド車の先駆であるトヨタ自動車は、2024年3月期見通しを上方修正。営業利益はなんと4兆9000億円。5兆円にもう少しで手が届きます。

トヨタの営業利益は5兆円近く

 なにしろ、ハイブリッド車の人気は予想を超えています。トヨタの世界販売で占めるハイブリッド車の比率は3割を切っていましたが、2023年は3割を超え、販売台数は340万台を超えました。前年から100万台近く増加です。トヨタの新車販売の3台に1台がハイブリッド車となる計算です。

 しかも、EVの普及を国策として掲げた欧米や中国も含め世界の主要地域でハイブリッド車は売れています。脱炭素の切り札として電気自動車(E V)が新たな主役の座につくと言われていただけに、世界的なハイブリッド車人気でEVの時代は遠のいたとの見方も広がっています。

 果たして、そうでしょうか。EV後退というよりは、カーボンニュートラルの移行に向けてクルマの潮流が大きく変わり始めた象徴のように思えます。購入者の中でCO2排出を極力抑えたライフスタイルに徹する意識が着実に広がっている表れではないでしょうか。

ハイブリッド人気はEVへの期待と不安の裏返し

 ハイブリッド人気の背景には、EVに対する期待の大きさと不安が見え隠れします。クルマを購入する場合、以下のイメージで自問自答するドライバーが多いはずです。

 地球温暖化対策としてEVの重要性は理解できるが、価格はまだ高く、充電やバッテリー性能にも不安がある。今は、とりあえずガソリン車よりCO2排出が少ないハイブリッド車を購入しよう。もう少し我慢すれば、EVは手が届く価格になり、充電などのインフラも充実して使い勝手も改善する。

 日本車メーカーにとって、ハイブリッド車人気はEV時代に向けて大きなアドバンテージをもたらしています。EVの開発・生産などで欧米に比べて出遅れていた日本は、欧米をキャッチアップして追い抜くチャンスが目の前に広がっているのです。

日本車には大きなアドバンテージ

 まずEV開発期間に余裕が生まれました。欧米が普及を急いだEVは足踏みし始め、予想以上にエンジン車からEVへ移行する期間が延びました。すべての新車をEVに切り替える目標とした2035年は先延ばしになっています。

 技術開発にも大きなプラスです。ハイブリッド車の人気でトヨタが5兆円近い営業利益を手にするように日本車各社の業績は好調です。EVは欧米や中国を中心に販売が伸びましたが、普及に伴いバッテリーや充電、自動運転など中核となる技術の課題も表面化しています。具体的なテーマに焦点を合わせ、一つ一つ各個撃破するためにも、計画以上の開発資金が必要になっています。ハイブリッド車の好調な販売は、予想を上回る開発投資を賄う原資を生み出します。

 もっとも、ハイブリッド車が好調に快走するなら、EV開発が出遅れてもハンディキャップにならないと考えるかもしれません。そう信じたら、大きな潮目の変化を見誤ってしまいます。EVは確実に普及するからです。

先進国のCO2はEVで削減

 IEA(国際エネルギー機関)によると、2023年の世界のCO2排出量は干ばつなどで水力発電が不足したため、前年比で1・1%増加していますが、先進国の排出量は減少しており、50年前の水準にまで低下しました。欧米を中心に自然エネルギーの普及、石炭から天然ガスへの転換などが進んだほか、EVの普及も大きな排出抑制に貢献しています。2023年に世界で販売された新車のうち5台に1台はEVだそうです。

 EVの価格で大きなシェアを占めるバッテリーの価格も低下しています。2024年のバッテリー価格は2023年初めに比べて半減すると予測しています。走行距離を左右するバッテリーの充電能力、充電施設の開発も加速しており、エンジン車との比較で大きなハンディキャップとなっていた性能やインフラ面はあと数年で改善するのは確実です。

EVに邁進して

 日本車メーカーはハイブリッド車人気がもたらす恩恵を存分に活かして、エンジン車同様、EVでも世界の頂点に立ち続けて欲しいです。ハイブリッド車人気が続くあと数年間。「最後の恩返し」と信じ、EV開発に邁進して欲しい。

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