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ハイブリッド車好調「先見の明」か「捨てられぬ成功体験」か 最高益は日本頼み

 ハイブリッド車が好調です。ここ数年、カーボンニュートラルの実現に向けてエンジン車から電気自動車(EV)への移行が大きな話題になっていました。ところが、実際の自動車販売はEVが足踏みする一方、ハイブリッド車が快走しています。ハイブリッド車の生みの親であるトヨタ自動車は過去最高の好業績となり、過剰なEVシフトを批判していた豊田章男会長を「先見の明」があると礼賛する記事が増えました。正直、「あれっ」という感じです。ハイブリッド車の未来を数字だけで見誤ってしましたら、大きな痛手を被るのではないでしょうか

トヨタ礼賛の見方が増えていますが・・・

 改めてハイブリッド車、EVを巡る販売動向を2023年で見てみます。ハイブリッド車の増加率はトヨタが32・2%増、ホンダが23・5%増と大幅に伸びています。エンジンと電気モーターを併用するため、EVに比べ使い勝手が良いのが好調の主因です。日本だけでなく北米や中国を除くアジアでも伸びています。

 これに対しEVはなかなかアクセルを踏めないでいます。中国市場はBYDなど地元メーカーががっちり握っていますから、日本メーカーは太刀打ちできませんし、そもそも品揃えが十分でないので期待以上の数字が現れるわけがありません。世界のEVメーカーもBYD以外は苦戦していると伝わってきます。

 ハイブリッド車を主力とするトヨタの業績は絶好調です。2024年3月期の予想は売上高を43兆5000億円、営業利益を4兆9000億円に上方修正。収益力が高いハイブリッド車の寄与もあって営業利益率は11・3%を見込んでいます。トヨタの新車販売のうち3台に1台がハイブリッド車だそうです。

過去最高益の内情は日本頼み

 もっとも、手放しで喜べる内情ではなさそうです。2024年3月期の第3四半期までの営業利益の構造を見ると、利益の源泉は日本に偏っているのがわかります。第3四半期までの9ヶ月間の営業利益は4兆2402億円。この内訳を地域別でみると、日本は全体の61%も占め、米国は12%弱、欧州は7%。販売台数は日本が163万台、米国が261万台、欧州が88万台ですから、日本の1台あたりの利益率が米国などに比べ相当高いことがわかります。欧米は価格引き上げ効果もあって利益水準が回復していることも考慮すれば、トヨタの過去最高益はトヨタが誇る日本最強の販売網に大きく依存していることがわかります。

 トヨタのハイブリッド車は大きな利益源となっているのは、長年の開発・生産実績のおかげです。1997年に世界で初めて発売されたハイブリッド車「プリウス」は、1980年代から1990年代までのトヨタを率いた豊田英二、奥田碩らによる英断で誕生しました。「排ガスを撒き散らす車」から「環境にやさしい車」へイメージを大きく転換させた歴史的なクルマです。以来、部品開発、生産効率の向上などで車両の利益率は高まっています。直近の過去最高益も、先人の英断がもたらした「プリウス」の成功体験を継承したものなのです。

ハイブリッド車はEVへの「つなぎ」

 ただ、当時からハイブリッド車はEV、水素を利用する燃料電池車への「つなぎ」と位置付けられてました。温暖化防止など地球環境に配慮しなければいけない自動車の未来を考えたら、EVや燃料電池車が理想。目の前の現実を直視すれば技術開発やインフラなどの不足を考えれば一気に移行することは不可能と判断していたからです。

 現在のハイブリッド車の活況は、あくまでEVへの「つなぎ」と割り切るべきです。ハイブリッド車がもたらすトヨタの過去最高益は、EVや燃料電池車へ加速するよう背中を押す元気力と考えたらどうでしょうか。

先人の英断におんぶに抱っこ?

 それをEVへのシフトを時期尚早と理解し、ハイブリッド車の絶好調ぶりを「先見の明」とアピールするのはあまりにも近視眼的です。ハイブリッド車に酔っていたら、豊田英二、奥田碩ら先人の名経営者におんぶ抱っこしているだけ。過去の成功体験に酩酊する経営に過ぎません。トヨタを応援して40年が過ぎましたが、応援の仕方を勘違いしている人もいるようです。酔っ払い運転は絶対に禁止ですから。

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