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損害保険はゼネコン並み?それとも以下? 金融は経済の血流、信用は命、それを失ったら・・

 談合といえば、ゼネコン。ステレオタイプですが、誰も思い付くはずです。ゼネコンはゼネラルコンスラクターの略称で、設計・施工まで建設に関連する業務を総合的にすべてこなす会社を指します。企業名でいえば、鹿島建設や大林組、大成建設、竹中建設など大手建設会社をイメージすれば良いでしょう。誤解しないようにお願いしますが、ゼネコンがすべて談合していることを意味しているわけではありません。過去の談合事件でたびたびゼネコンが登場することを例に取り上げただけです。談合はゼネコン以外でも多発しており、公正取引委員会が摘発していることからわかると思います。

談合は必要悪か

 中国地方で談合の仕切り役を果たしていた人物の話を聞いたことがあります。彼の論理は明快でした。「大きな案件になると、政治家が介入してくる。発注者、建設会社含め誰もが利益を奪われ、損害を受ける。談合は、政治家の介入を跳ね返してみんなが正当な利益を手にするために行うのだ」。「ハイ、そうですか」と納得するつもりはありませんでしたが、談合を事実上認め、正当化する姿勢には感心しました。大手建設会社でも、談合で名を馳せて人物が社長就任した事例がいくつもあると聞いたことがあります。本来なら隠し通すのが当たり前ですが、談合について打ち明ける建設業界の人々には、みんな知っていることだし、むしろ多くの人にも「必要悪」と認めてほしい。そんなニュアンスを感じたものです。

 談合のイメージがゼネコンで出来上がっていたこともあって、損害保険の”談合”には驚きました。金融は日本経済の血流を支える重要な業務です。自ら口が酸っぱくなるくらい、今の流行り言葉いえばESG・SDGsを強調し、公平性や透明性を強調してきました。そりゃそうです。銀行口座にお金を預けてさまざまな取引を行うのは、金融機関を信用しているからです。1円でもピンハネされたら、信用は一瞬で消えるものです。

金融庁は損保大手に報告徴求命令

 銀行と並んで金融を支える損害保険大手4社が金融庁から報告徴求命令を受けました。東京海上日動火災保険、損害保険ジャパン、三井住友会場火災保険、あいおいニッセイ同和損害保険は企業向け保険の入札で事前に価格調整したと疑われる事例が多発していることが判明。価格調整した保険契約の相手はJR東日本、東急、京成電鉄、西武系ホテルなど多岐にわたっています。金融庁は価格調整が過去から続いていた可能性が高いと判断し、全容を明らかにすることにしました。

 ちょうどビッグモーターによる自動車保険の不正請求が社会問題化しているタイミングと符号することもあって、損害保険会社の業務に対する信用は大きく失墜し、拍車がかかる格好です。ビッグモーターの不正請求はかなり悪質ですが、現在明らかになっている事実を見る限り損害保険会社にも落ち度あったといわざるを得ません。

損保ジャパンはビッグモーターとの関係も

 例えば損保ジャパン。ビッグモーターと深い取引関係を構築していた損保ジャパンは不正請求を確認した後、一時期ビジネスを再開したそうです。多くの出向者を送り込んでいた経緯を考えると、損保ジャパンがビッグモーターの不正請求を全く知らなかったのかという素朴な疑問は消えません。出向者が修理工場の現場を見ず書類にしか目を通していない。出向者は「取引先から来たお客さん」じゃありませんし、損保ジャパンはそんな脇の甘い会社じゃありません。出向者は本社の担当部署からかなりの叱責を受けます。

 ビッグモーターと損保ジャパンは車両修理を通じて顧客の拡大に努めていました。不正請求に対する支払いの詳細はわかりませんが、新たな紹介客の開拓などもあって両社は十分にメリットを感じていたはずです。不正請求で損したのは修理した車両を保有する保険者。余計な支払いが増え、保険の等級数でも低い評価を受けるので、翌年の保険支払い料は増えたはずです。

バレるとは思わなかった?

 万が一にも保険契約者を忘れて価格調整、不正請求の意識的な見逃しなどが事実として行われていたなら、金融機関の信用はどこまで落ちるのでしょうか。ゼネコンと損害保険を比較するのが適切かどうか疑問ですが、中国地方の談合仕切り役のように”必要悪”を強調するのでしょうか。それとも「バレるとは思わなかった」と悔しがるのでしょうか。思わず「ゼネコンより悪質」という言葉が浮かびます。

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