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絶好調のマツダ ぶれない視線 信念と陶酔は紙一重 唯一無二のメガ・カロッツェリア

 マツダが絶好調です。2024年3月中間期(2023年4ー9月)をみると、際立った数字が並びます。売上高は前年同期比41%増の2兆31733億円、営業利益は135%増の1296億円、経常利益は62%増の1792億円、当期純利益は26%増の1081億円。マツダの経営規模で売上高が4割も増えるなんて驚きです。当然、上期実績としてすべての利益は過去最高を記録しました。

利益は過去最高

 世界販売が大幅に伸びています。20%増の61万6000台。マツダの収益源である米国市場で40%も増えたのが大きく寄与しました。大型SUVが高い人気を集める米国市場向けに「CXー90」を投入し、ラインナップを充実させています。為替レートもプラス要因です。前年に比べて米国ドルで7円安い141円、ユーロで15円も安い153円となったことも増収増益を押し上げています。

 過去最高益の最大の原動力はマツダの尖ったクルマ創りでしょう。ボディデザインから無駄を徹底して削ぎ落とし、疾風が吹き抜けるような流麗さに磨き上げ、全ての車種を遠くから見てもマツダ車と一眼でわかるキャラクターで統一しています。どれも同じに見えると感じる人もいるかもしれませんが、マツダ車を運転している誇りを感じるオーナーの心をガッチリと握ることに成功しています。

マツダの新たなアイコン

 クルマ創りの魂はロータリーエンジンに

 改めてマツダのクルマ創りの哲学を説明する必要ないと思います。その魂はロータリーエンジンに宿っています。失敗を重ね、ようやく成功したと思ったのも束の間、石油危機に襲われてその命運はついたかに見えました。しかし、魂を捨てるわけがありません。

 ロータリーエンジンを搭載したスポーツカーは「RX-8」を最後に2013年4月に販売終了しましたが、10年後の2023年9月に「MX-30」として復活を果たします。かつてのロータリーエンジンから少し姿を変えて発電用のエンジンとして蘇り、プラグインハイブリッドシステムの心臓として息を吹き返しました。きっと近い将来、エンジン車としても復活するのでしょう。

 10月末に開催したジャパン・モビリティショーでマツダは、新たなアイコンとしてロータリーエンジンを搭載したスペシャリティカーをを発表しました。ドアは空に向かって開くガルウイング。ボディは流麗に磨かれ、空力抵抗という言葉がどこかへ失せてしまいそうです。まるでイタリアの自動車工房、カロッツェリアの作品。マツダの開発担当者は明言します。「フロントボディを低く設計できるのは、ロータリーエンジンだから。それができるのは唯一、マツダだけ」。

 創業から貫かれているのは、マツダでしか創れないクルマにこだわる信念です。一つ間違えれば自己陶酔。ロータリーエンジンを巡るマツダの経営史を振り返ればすぐにわかります。成功と経営危機を行ったり来たりと言えば聞こえは良いですが、大半は経営危機。住友銀行に助けられ、フォード傘下ではじっと臥薪嘗胆。今は名目上トヨタ自動車グループの一員ですが、心ここに在らずの雰囲気です。40年間近くマツダを眺めてきましたが、きっと今が最も精彩を放っているのではないでしょうか。

EVにも冷めた視線

 欧米や中国の自動車メーカーが注力する電気自動車(EV)にも冷めた視線を注いでいます。マツダの「サスティナビリティリポート2023」で自動車の地球温暖化に対する取り組み方について次のように説明します。

 地域、 車両特性、燃料特性などのさまざまな側面を考慮した「複数の 選択肢(マルチソリューション)」を準備しておく必要があると考 えています。

 EVは確実に普及するものの、高額な車両価格、充電設備、一度の充電で可能な走行距離といった難問が解消されない限り、乗り回せる国・地域も限られます。EVのほかにハイブリッド車、水素などCO2を排出しない車など多種多様な動力源が求められているとみられています。

 マツダは世界的なEVの潮流を横目で眺めながら、世界的に高燃費エンジンとして評価が高い「スカイアクティブ」を主軸に置いてEVシフトも進めながらも、ロータリーエンジンを自らの勲章として掲げ続けるつもりです。EVはラインナップの一つとして加えますが、基本は内燃機関エンジンをこれまでも、これからも着実に進化させ、エンジンメーカーとして生き残る戦略を選択しました。その自信の裏付けは、自らの技術力にありますが、過信、あるいは自己陶酔の結果だとしたら、過去の経営不安が再現するかもしれません。

マツダのアイコン、ロードスター

エンジンメーカーとして「Be Driver」

 でも、マツダはその覚悟はできているのでしょう。モビリティショーでは他の自動車メーカーが多様な目的で使えるEVを展示していましたが、マツダはほぼスポーツカーオンリー。「われわれは、自動車で走るのが大好きな人々のためにクルマを創るのだ」と宣言し、「Be Driver」として独自の道を突っ走っています。

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