神宮外苑・築地再開発で三井不動産が始める「シン東京物語」人々の幸せな生活を忘れないで!
予想通りの結果でした。東京・築地市場跡地の再開発は、三井不動産などが主導する企業連合が取り組むことになりました。約19ヘクタールの跡地に5万人収容可能な多目的スタジオを目玉に商業施設、ホテル、オフィスが入居するビル群が建設されます。築地は東京駅や銀座などに近い好立地です。東京都や首都圏の新たな国際的な拠点となるそうです。
不動産から産業デベロッパーへ
三井不動産は2030年を目標とする経営方針で不動産の枠を超えて「産業デベロッパー」を掲げています。土地の再開発事業に囚われず、エンターテイメント、イノベーションなど世界から注目を集める拠点を集めるオーガナイザーとして事業領域を広げる狙いです。築地市場跡地の再開発構想は同社が描く未来の一例です。とても華やかエリアが誕生するのでしょう。盛り沢山の話題に見逃しそうになりましたが、地域に住む人と生活はどう位置付けているのでしょうか。新しい価値創造をもたらしたとしても、暮らす人々の幸せを忘れないで欲しいです。
東京都の発表によると、築地市場跡地の再開発事業者は三井不動産や読売新聞グループ本社など11社で構成する企業グループを選ばれました。事業に参加する読売新聞が発表内容を伝える紙面からその意気込みがわかります。1面、3面、社会面を使い、事業構想を説明します。多目的スタジアムは、野球やサッカー、バスケットボールなどの用途だけでなく、コンサートのアリーナ、劇場、展示場などに変えられるよう座席やフィールドは可変式を採用します。
築地市場跡地の構想は盛り沢山
商業施設のテーマは数えきれないほど。健康長寿社会に向けたライフサイエンス、スポーツ、食を融合したイノベーションなどの拠点となります。ホテル、オフィス、シアターホール、国際会議や展示会が開けるMICE施設など合計9棟が立ち並びます。環境へも配慮し、敷地の約4割は緑化するそうです。総事業費は約9000億円。一部施設を2029年度にオープンし、2030年代前半までに完成を目指しています。
国内外から多くの人が集まるので、新しい東京の玄関口として交通網も拡充します。築地市場跡地は銀座に近く交通の便は良いですが、近くの隅田川沿いに水上バスなどの停留所、地下鉄新駅や自動車道の首都高の出口も追加するそうです。
築地市場跡地の再開発は東京都が22年11月、事業者の公募しました。三井不動産の企業連合の他にアニメやゲーム中心の開発を掲げた事業グループが応募したそうです。当初から三井不動産の企業連合が有力視されていました。企業連合には老朽化した東京ドームに代わる新球場建設を検討する読売新聞グループ本社が参加していましたが、三井不動産は読売の意図を受けたかのように東京ドームを子会社化し、再開発の図面はしっかりと描き切っていました。
当初から最有力視
しかも、三井不動産は東京五輪やラグビーなどを主導する森喜朗元首相と近い小池都知事と密接な関係を構築しており、それが神宮外苑前の再開発事業の推進力になっています。築地市場跡地の再開発は小池都知事の重要な政治課題です。企業連合に三井不動産、読売新聞と並べば、結論は見えていました。
三井不動産は、東京都内で持ち上がる再開発のビッグプロジェクトを一手に収める勢いです。三井不動産の本社がある日本橋では、「日本橋の空を取り戻す」を合言葉に政府などに長年働きかけ、ついに首都高速道の高架橋を撤去して、代わりにを地下を走る自動車道の建設計画が始まっています。
街の必須条件は人々の生活
日本橋、神宮外苑前、築地市場跡地、東京駅前八重洲口・・・。東京都内の有力な再開発事業に三井不動産は参加しており、まるで「シン東京物語」がこれから始まりそうな勢いです。ただ、忘れないで欲しいのは、街は施設で賑わいが生まれるわけではありません。そこに暮らす人々が幸せに生活することが最も重要な必須条件です。人通りが多いものの、誰も生活してない街は鉄とコンクリートのかたまりに過ぎません。高層ビルが立ち並び、1日何十万人の人流が実現したとしても、街が生きていなければどんなに構想が立派でもゴーストタウンが出現するだけですから。